【水戸】私のミッション・ビジョン・バリュー2021年第15回 伊藤涼太郎選手「楽しむ!」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2021年第15回は伊藤涼太郎選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.加入してからMVV作成のための面談はどのぐらい行いましたか?
「1回45分ぐらいの面談を3〜4回行いました。あらためて自分の思っていることや自分が目標にしていること、自分が大切にしていることを知ることができたいい機会になったと思っています」

Q.前回在籍した時はMVVの作成はなかった?
「Make Value Projectはありましたけど、MVVはありませんでした」

Q.話をしてみて、新たな発見はありましたか?
「再確認できたという感じでした。あと、自分が思っているけど、言葉にできていないことがたくさんありました。それを言葉にすることができたのは選手としての強みになると思っています。目標を明確にすることによって、サッカー選手は変わっていくと思います。それを再確認できてよかったと思います」

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Q.まず、MISSIONについて聞かせてください。2つありますね。1つ目は「周囲からの印象を覆し、結果を出すことで、周囲からの期待を超えること」とあります。
「プロの世界に入る前、多くの人が自分はプロになれないと思っていました。でも、僕はずっとプロになりたくて頑張ってきましたし、僕がプロになれないと思っている人たちを見返そうという思いが自分の力になっていました。なので、そういった見返すことができたり、常識を覆すことができたりした時はすごく気持ちがいいんです。なので、自分の過去を振り返った時、この言葉がまず浮かんできました」

Q.高校時代から注目されていたと思いますし、年代別の日本代表に選出された経験もありますし、エリート街道を通ってきたようなイメージもありますが。
「そんなことはないです。むしろ、真逆です。セレッソ大阪ジュニアユースに在籍していましたが、ユースに上がることができませんでした。その経験は僕にとって大きな挫折です。ずっとセレッソ大阪のトップチームになりたいと思っていただけにすごく悔しかったのですが、プロになるためにはもっと頑張るしかないと思い、岡山県の作陽高校に行きました。高校のチームメイトの中でも僕が一番『プロになりたい』という思いが強かったと思います」

Q.高校卒業後、浦和に加入することができました。どういったところが評価されたと思いますか?
「ボールを持った時のクオリティーや判断のところは高校時代から自信があったので、そこを評価してもらったと思います。浦和からオファーをもらった時、すぐにOKの返答をしました」

Q.伊藤選手のプレーを見ていると、他の選手とは異なる、自分の長所を最大限に発揮しようという気概を感じます。
「誰にでも苦手なプレーはあると思いますし、苦手なプレーを克服することはすごく大切なことだと思います。でも、プロになって上のステージに行くためにはストロングポイントを磨くことがもっと大切なことだと思っています。苦手なことを克服したとしても、人並みのレベルにしかならないと思うんです。それよりも、誰にも負けないことを持つことができれば、間違いなく目立つと思いますし、それだけで評価されると思うんです。僕の場合、ボールを持った時のパスやドリブルを得意としている反面、守備が苦手です。守備も最低限やるべきことをやらないといけないのですが、それ以上に自分の持ち味を磨くことがプロで活躍するカギになると考えています」

Q.実際、プロになってからも悔しい思いをすることが多かったのでは?
「浦和でなかなか試合に出られませんでしたし、大分でも出場機会を多く得ることができませんでした。なので、自分を使わなかった人たちを見返してやろうという気持ちを強く持っています。そのために自分が何をやらないといけないのかは明確になっています。今、水戸でしっかり取り組みたいと思っています」

Q.「期待に応える」ではなく、「期待を超える」という表現に伊藤選手らしさを感じます。
「自分のプレーや水戸ホーリーホックのサッカーを楽しみに試合を見に来た人にとって、期待通りのプレーでは物足りなさを感じると思うんですよ。それはサッカーに限ったことではなく、どの職業でも同じだと思います。ご飯を食べに行って、期待通りの味より、期待を超える味だった時、『またそのお店に行きたい』という気持ちになると思うんですよ。自分はそういうプレーをしたいと思っています。周りの選手とは違うプレーを意識しています」

Q.前回在籍した時と比べて、「J1で活躍するため」に必要なことを明確に把握してプレーしているのではないでしょうか?
「前回水戸にいた時、J1にチャレンジするためのプレーはできたと思いますが、J1で通用するプレーはできていなかったんだと思います。前回も決してすごい活躍をできたわけではないと思っていますが、ある程度爪痕を残せたとは思っています。それでJ1の大分トリニータからオファーをいただいたのですが、活躍することができませんでした。J2だろうと、J1に行く権利を得るためではなく、J1で活躍できるぐらいのプレーをしないと通用しないんだなとあらためて感じました。もちろん、通用するプレーもあったと思いますし、なぜ自分を使ってくれないんだという気持ちもすごくありました。でも、そこは結果でしか変えることはできない。誰もが伊藤涼太郎を使わないといけないと思わせるぐらいの目に見える結果を残さないと、J1では通用しないんです。そのために今回水戸に来ました」

Q.もう一つのMISSIONを聞かせてください。「自分がサッカーを楽しむことで、周りの人を喜ばせること」。この言葉に込めた思いは?
「まず、サッカーをするにおいて、楽しいことが大前提。サッカーが楽しくなくなった時が辞める時だと思っています。自分が楽しんだ上で周りの人に喜んでもらいたい。プレーしていて楽しいし、見ていて楽しい。そういうプレーを意識するようにしています」

Q.その中で一番「楽しい」と感じるところは?
「点を取ったり、ドリブルで抜いたり、試合に勝ったり。そういった時にサッカーの素晴らしさを感じますね。なので、あまり仕事という感覚はないんです」

Q.当たり前のプレーをせず、伊藤選手しかできないプレーを見せようという意識を感じます。
「そこは意識しています。でも、今シーズンは自分のプレーを出せた試合は少なかった。もっとそういうプレーを見せないと、J1では活躍できないと思っています」

Q.そのためにもハードワークをしないといけないし、ボールを奪わないといけない。その上で自分のプレーを発揮しようとしているのですね。
「さっき言った通り、苦手なことを克服することは大事だと思っています。僕のポジションは最低限の守備をしないと試合には出られません。ただ、僕みたいな攻撃の選手がしっかり守備をすることによって、周りの選手は楽になると思います。僕がしっかり守備ができるようになれば、印象が変わると思うんですよ。なので、一時期守備をかなり意識していた時がありました」

Q.今はだいぶ意識が身につきましたか?
「そうですね。なので、うまくさぼれるようにもなってきました。そこも大切なことだと思っています」

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Q.次はVISIONについて聞かせてください。「日本の人たちが自分の仕事に楽しいという感情を持っていること」。この言葉を選んだ理由は?
「僕がサッカーをする上で大切にしているのは楽しむこと。『楽しい』という感情よりも『つらい』とか『しんどい』といった感情を持って仕事している人は少なくないと思うんです。でも、そういう気持ちだとうまくいかない時の方が多いと思うんですよ。たとえば、楽しい時間は早いですけど、つらい時間は長く感じる。楽しいという感情を持っていた方がやりがいを感じると思いますし、そこに費やす努力やアイデアが出てくると思うんです。なので、日本中の人たちが自分の仕事に対して『楽しい』という感情を持つことによって、さらにいろんなことが生み出されると思うんです。サッカーもそうですけど、『楽しい』と要求されたこと以上のことができるようになる。僕はそう思って取り組んでいます」

Q.今までのサッカー人生でサッカーが楽しくなくなったことはありますか?
「楽しくなったというより、うまくいかない時はなかなか楽しいとは思えないですよね。でも、それもサッカーの一部だと思っているので、自分の中で前向きに受け止めています。なので、サッカーをしてきて、楽しくないと思ったことはないです」

Q.「楽しむ」裏で練習以外にも水泳に行くなどいろんな取り組みをしていますね。
「以前水戸に在籍していた時から水泳をするようになって、今も続けています。その他にもサッカー以外のことでもいろんな取り組みをしていて、自分に費やす時間は増えていますね。やっぱり『楽しい』と自分に必要なことを考えて取り組むことができるようになるんだと思います」

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Q.次はVALUEについて聞かせてください。1つ目は「常に全力を出す」。
「自分の中で心がけていることです。簡単なような感じがするんですが、すごく難しいんです。試合では誰もが全力を出すと思うのですが、普段の練習は体の重い日がありますし、練習の負荷によってしんどい時もあります。誰しも『これぐらいでいいや』という感情を持ってしまう時がある。でも、その中でも全力で取り組むことで得られるものが違ってくる。普段全力で取り組んでいる人は試合で負けたとしても、悔しいとは思いますが、後悔は少ないと思うんです。ベクトルが自分に向いている。そういう選手になりたいと思っています。全力を出すって普通の言葉だとは思いますが、実際にできている人は少ないと思うので、そこを心がけたいと思っています」

Q.そういう点で今まで出会った選手で印象に残った選手はいますか?
「槙野智章選手。ロッカールームではふざけたり、騒いだりしているのですが、練習場に入ったら目の色を変えてトレーニングに打ち込む。サッカーに取り組む姿勢は本当にすごい。プロに入った時、『こういう人が日本を代表する選手なんだ』と思いました。オンとオフの切り替えがすごかったですね」

Q.2つ目は「もう一度、自分のプレーをみたいと思ってもらえるプレーをする」
「これはMISSIONでも言った通りですね。言葉の通り、サポーターの方を含め試合に来ていただくお客さんはお金を払って僕らのプレーを見ている。そういう方たちに『面白くない』と思わせたくない。『もう一度、伊藤涼太郎のプレーを見たい』『もう一度、水戸ホーリーホックの試合を見たい』と思われることによって、ファン・サポーターは増えていくと思います。選手1人1人がそういうことを意識することが大切だと思っています」

Q.3つ目は「サッカーを楽しむ」。これまで何度も話をされていることですね。
「はい。なので、この言葉は外せませんでした。一番自分が意識していることであり、大切にしていることです」

Q.他の選手も「楽しむ」気持ちを持っているのでは?
「そういう気持ちを持っている選手は意外と少ないような気がします。『仕事』と捉えている選手もいますね。ただ、僕は『楽しむ』気持ちを大切にしようと思っています。逆に『仕事』という感覚がない。それはいいことでもあり、悪いことでもあるかもしれません。ただ、もっと磨けることもあると思っていますし、『楽しい』だけがサッカーではないとも思っています。それでも『楽しむ』ことを大切にしています」

Q.水戸の若い選手たちが楽しそうにサッカーしている時はすごくチームとして力を発揮できているような印象があります。
「水戸の若い選手たちは思い切ってプレーできている。前回在籍していた時も、今回加入してからも、それはすごく感じます。でも、その空気を作り出しているのはベテランの選手たち。そして、秋葉監督はじめコーチングスタッフのみなさんもそういう環境を作ってくれている。それが水戸のよさだと感じています」

Q.最後は「壁を感じている人に少しでも勇気を与えるプレー、言動を心がける」。
「自分はずっとエリートではありませんでしたし、つらい思いばかりをして、何度も壁にぶち当たってきた人間です。なので、サッカーだけでなく、どんなことでも、自分と同じ感情を持っている人たちに自分のプレーを見てもらって、少しでも勇気や感動を与えられるようになりたいと思っています。サッカーを好きな人だけでなく、サッカーを知らない人が自分のプレーを見て『面白い』と思ってくれるようになることが自分にとって最高のこと。なので、この言葉を選びました」

Q.今まで壁に直面した時、どのように乗り越えてきましたか?
「壁にぶつかると、『悔しい』とか『どうしよう』といった感情が出てくると思います。でも、その壁をどうやって乗り越えようか考えている時って、意外と選手として充実した時間なんだと思っています。選手として成長している瞬間でもあります。秋葉監督がよく言う言葉で、僕はすごく大好きな言葉があるんです。『努力をしたからといって必ず報われるわけではないけど、努力した人間は必ず成長する』。その言葉が自分の中ですごく響きました。努力をし続けた選手は必ず成長していますし、上のステージで戦っている選手は絶対に努力をしてきた選手たちなんです。なので、その言葉を日々忘れずに取り組んでいます」

Q.伊藤選手は努力の先に成功があると信じることができているような気がします。
「自分の中で自分を信じているところはあります。ただ、自分の中で努力はちょっとつらいものでもあるんです。でも、それを努力と思わずに、成長の過程を楽しめるようになりたい。まだ、その境地には至っていませんが、努力を努力と感じない、努力を楽しめる人間になりたいと思っています」

Q.「言動を心がける」という言葉も気になります。
「そこは最後に付け加えた言葉なんです。自分の言葉や行動を人は見ています。そこで印象や評価が変わってくるので、意識したいと思っています」

Q.以前水戸に在籍していた時と比べて、すごく落ち着いているというか、精神的に成熟したような印象を受けます。
「それだけ悔しい思いをしてきたので。悔しい思いをした選手の方が必ず成長すると僕は思っています。今も悔しい思いをしている途中ですが、これからプレーだけでなく、言動も含めて、伊藤涼太郎という選手としての価値をどんどん高めていきたいと思っています」

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「楽しむ!」。ずっとこの話をしていましたね。
「楽しむって簡単なようで難しいんです。でも、それがサッカー選手として、人間として、そこが究極だと思っています。楽しいという感情を持てれば、いろんな面において充実すると思いますし、いろんなことを成功させるきっかけをつかむことができる。楽しいことだけをやるというわけではありませんが、努力をも楽しめる選手になりたい。そういう選手がどんどん上に上がっていくんだと思っています。自分が一番大事にしている言葉ですね」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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