阪神で、ロッテで走り続けた18年。鳥谷敬が誰よりも早く球場入りし走り続けたワケ

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【引退会見での鳥谷敬内野手】

 それは日課でもあり、初心に戻れる大事な時間であった。今季限りで現役を引退した鳥谷敬内野手はいつも誰よりも早く球場入りをして走っていた。阪神で16年、ロッテで2年。環境が変わってもナイターの時は午前10時頃にグラウンドに姿を現し汗を流すことを日課としていた。グラウンドだけではなく、時にはコンコースやスタンドも走る。18年間の現役生活で通算2099安打をマーク。歴代2位となる1939試合連続出場を記録したレジェンドはそのルーティンの中で自分と見つめ合っていた。

 「午前中にランニングをしているとグラウンド整備をしていたり、スタンドでごみを拾ってくれたり、掃除をしてくれている人を見かける。全体練習中や試合中には目に出来ない、そういう光景を見てボクはこういう人たちの支えの中で成り立っているのだなあといつも感じることが出来た。そういう人たちの想いも背負ってプレーをしないといけないと思うことが出来た」

 鳥谷にとって午前中のランニングはもちろん身体の調整の一環ではあった。ただ、ファンが入ったスタジアムでは見えない光景を見ることで様々な思いにふけることが出来た。初心に戻れる特別な時間だった。

 グラウンド整備スタッフ、清掃スタッフは朝早い時間に活動をしていた。来場する人の事、プレーをする選手の事を思って誰にも見られない時間帯に黙々と業務を遂行している姿を見ながら走っていると力が沸いてきた。

 「そういう人たちの事を考えると疲れているとか、調子が悪いとかを言って試合から逃げ出すことは出来ないですよね。どんな状況でもベストを尽くしてやっていくだけ。いつもそういう気持ちにさせていただいていました」と鳥谷。

 現役を引退した今ではもうグラウンドを走ることはない。それでも支えてもらった人への感謝の想いはユニホームを脱いでも持ち続けていたいと考えている。18年間の現役生活で数々の記録を打ち立てた。すべては支えてくれた人たちがいたから。応援をしてくれたファンがいたからだ。

 「正直言うと毎日、辛かった。打った、打たなかった。いいプレーをした、エラーをした。勝った、負けた。毎日、いい時もあるけど、当然、悪いこともある。毎日が、その繰り返しで苦しかった。でも周りの人の存在を知っていたから頑張ることが出来たのだと思う」

 みんなに愛され、惜しまれながら鳥谷はユニホームを脱いだ。「悔いはない」と本人はスッキリとした表情を見せる。支えてくれた周りの人の想いと共に走り抜いた18年間だった。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
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