【浦和レッズスペシャルインタビュー】日本で充実の時間を過ごすアレクサンダー ショルツが誓う恩返し

浦和レッドダイヤモンズ
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【©URAWA REDS】

いつごろからだろう、夏を過ぎても日差しが痛いほど暑くなったのは。11月の大原サッカー場は、日なたと日陰の気温がまるで違う。境界線を跨げば、その瞬間に体感気温が変わってしまう。一歩の違いでまるで季節が異なるようだ。

夏か、冬か。取材場所を問えば、アレクサンダー ショルツは迷わず日なたを選んだ。

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「プレーするときは涼しい方がいいですが、普段は暖かい方がいいですね」

生まれも過去3年間プレーしていた場所も北欧のデンマーク。真夏の気温がちょうど今ごろのさいたまと同じくらい。デンマークでも7月からシーズンが始まるが、日本の夏の暑さには驚いた。プレーするのもさすがに苦労し、プレーの質が変わってくることも実感した。

「でも今はプレーするのにパーフェクトな気候です。もう少し寒くてもいいくらいです。これくらいのフレッシュな気候が好きですね」

そう話すショルツの表情は、最近の気候のように実に穏やかだった。

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今から3ヵ月前。チームに合流した直後、同胞のキャスパー ユンカーと話しているショルツを見ながら、大久保智明が思わず漏らしていた。

「怖え…」

一見、ワイルド。肩の辺りまで伸びた頭上で髪を結えば、羽織袴と日本刀が似合いそうな雰囲気もある。

しかし、ショルツより20センチメートルほど身長が低い大卒ルーキーも、今ではショルツを「怖え」とは言わないだろう。

明本考浩(右) 【©URAWA REDS】

汰木康也(左) 【©URAWA REDS】

むしろ、穏やか。阿部勇樹と笑顔で話しながらクラブハウスに戻ることもあれば、明本考浩や汰木康也と手を叩きながら大笑いしていることもあるが、それでもショルツには気品が漂う。

「お互いにジョークを飛ばし合って、笑い合っていることが多いですね」

それぞれが日本語と英語を単語で交えながら会話しているような形だが、その様子からはチームに溶け込んでいることが十分に伝わってくる。

「そういうコミュニケーションの手段は大切だと思っています。普段の大抵の会話がジョークで成り立っていますが、それは本当に重要ですし、チームとして一つになるには必要な要素だと思っています」

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トレーニング中は通訳を介さなければならないが、チームメートと積極的にコミュニケーションを取る。

チームに溶け込んでいるから、笑顔になる。でも、理由はそれだけではない。

「プライベートの時間もかなり充実しています。全体的に充実していることが、笑顔が多い理由だと思います。家族もいい生活ができています。家族がいい状態でいられることは非常に重要なことです。自分は好奇心が旺盛なタイプですが、日本でいろいろなことを経験できています。食事も文化も、何もかも素晴らしい国だと思います」

キャスパーと同様、特に日本の食事を好んでいる。うなぎ、餃子、そば、うどんが特にお気に入り。天ぷらや野菜も好きだ。その話を聞いた日は、「あれは何ていう料理だったっけ?」と通訳に確認しながら、お昼にハヤシライスを食べることを楽しみにしていた。

「日本は食事がおいしくて食べすぎてしまいますね」

そう言ってまったく出ていないお腹をさすりながら、やはり穏やかに笑顔を見せていた。

189センチメートル、84キログラムの体格を持つセンターバックと聞けば、フィジカルを生かしたハードな守備が売りと思われるかもしれない。

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しかし、ショルツはピッチ内でも気品を失わない。言うまでもなく穏やかさは陰を潜めるが、身体能力よりも読みや判断を生かした守備はクレバーだ。

「私は決してスピードがあるタイプではありません。だから相手よりも先読みしてプレーする必要があります。それがクレバーに見える理由かもしれませんね」

9月25日に行われたFC東京戦の59分、10月16日に行われたガンバ大阪戦の64分でのカバーリングを見れば、スピードがないタイプだとは思えないが、デンマークではそうだったのだろう。

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また、スペースに走り込んだ選手を見つけては的確に送る縦パスで攻撃の起点になり、機を見たドリブルで相手の守備を崩す。選手が適切なポジションを取り、スペースを使いながら前進していくチームで、攻撃面においても大きく貢献している。

公式戦16試合連続、J1リーグ11試合連続で先発出場。守備の要としてレッズに欠かせない存在になっている。

20日に埼玉スタジアムで行われる、明治安田生命J1リーグ 第36節 横浜F・マリノス戦【MATCH PARTNER三菱重工】。J1リーグ最多の78得点を挙げている横浜FMに対し、ショルツは活躍が期待されるキーマンの一人だ。

クレバーなショルツは、チームから与えられる情報をインプットするだけではなく、その都度対峙するストライカーを自分でしっかりと分析する。横浜FMにはスピードがあるアタッカーがおり、彼らが積極的にプレスをかけてくることも把握している。

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「Jリーグの中でもかなりのスピードを持った選手が前からプレスを積極的にかけてきますので、我々もしっかりと対応しなければいけません。ホームゲームですし、我々は浦和レッズとしてしっかりとプレーし、いい結果につなげなければいけません」

昨季はデンマークのFCミッティランで欧州チャンピオンズリーグに出場し、イングランドのリバプールFC、イタリアのアタランタBC、オランダのアヤックス アムステルダムと対戦した。

2分4敗でグループステージ敗退となったが、守備で奮闘するだけでなく、アウェイのアタランタ戦では豪快なハーフボレー、ホームでのリバプール戦ではPKを決め、それぞれ引き分けに持ち込んだ。ミッティランが6試合で得た勝ち点は全て、ショルツのゴールによってもたらされたものだった。

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日本でその経験を生かす、のではなく、日本でも同じレベルでプレーしようと意識している。

「基本的には、その経験があるから、ということではなく、その経験をしたときのような高次元のパフォーマンスを毎試合出せるようにすることが自分のミッションだと感じています。常にそのレベルを出していけば、必ずチームを助けることができると思いますし、そのクオリティーが非常に大事だと思っています」

とにかく結果にこだわる。個人としてどんなにいいプレーをしても、チームの結果がついてこなければ満足できない。途中経過としていいシーズンを過ごしてきたつもりでも、最終結果に満足できなければ、いいシーズンだったとはとても思えない。

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今はレッズが勝利するため、AFCチャンピオンズリーグ出場権獲得するため、力を尽くすことを誓う。

「チームの中でもみんなが良くしてくれて、非常に過ごしやすく生活を送っています。その恩返しとして、チームに貢献できるように努力を続けていきたいと思っています」

これまでがそうだったように、ショルツが持ち味を発揮し、クレバーな守備で横浜FMの攻撃を封じれば、レッズは勝利と目標に近づく。

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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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