【浦和レッズニュース】シーズン終盤を迎えて汰木康也が抱く野心…「僕はもう年長者に頼るような年齢ではない」

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 プロ8年目を迎える今季は、すでにキャリアハイの4ゴール、4アシストをマーク。10月22日の柏レイソル戦では、リーグ戦初の1試合複数得点も記録した。

 ただ、浦和レッズの汰木康也は2ゴールを挙げて勝利に貢献しても、心の奥底から喜ぶことはできなかった。

「前の試合(ガンバ大阪戦)で決定機を外し、チームを勝たせられなかったことが頭から離れなくて……。ここで2点取るなら、そのうちの1点は前節にしっかり取りたかった」

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 リカルド ロドリゲス新体制の下で、プレースタイルも意識も変化しつつある。

 かつてはサイドに張ってボールをもらい、ドリブルで仕掛けてチャンスメークしていたが、いまは求められる役割が異なる。

 ピッチ中央付近でパスを受ける機会が増え、コンビネーションで崩していく形が多い。

 最後の仕事に絡む回数が増しており、以前とはまた違うやりがいを感じている。

「個人で打開しなくても、効率良くゴールに近づくイメージが浮かんでくるんです。その分、改善点も出てきましたけど。得点とアシストは増えるなか、好機で決め切れない場面も増えています。チャンスをもっとモノにしないといけません」

 フィニッシュの質によりこだわるようになったのだ。

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 シーズン前半は手探りの部分があったものの、夏以降はバイタルエリアで躍動。シュートに持ち込む回数は、明らかに増えた。

 小泉佳穂との連係が深まったことに加え、6月に柏から途中加入した江坂任の存在が大きい。

「アイコンタクトで分かり合えるところがあります。感じ取ってくれる選手が近くにいることで、流動的なポジションが自然と取れているんだと思います」

 汰木は、チームメートになる前から江坂のプレーに引き寄せられていた。

 何気なしにJリーグの試合映像などを見ているときに、ふと想像することもあった。

「もしも同じチームになることがあれば、僕がこのタイミングで動けば、きっとパスを出してくれるだろうなって。だから、どういうプレーをするかも、だいたい分かっていました。いざ一緒にやってみると、『やっぱりそうだったか』という感じでした」

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 多くの言葉は必要ない。普段の練習から特別なコミュニケーションを取っているわけではないが、試合では即興のコンビネーションがうまくはまるという。

 中央の密集地帯に走り込んでも、針の穴を通すようにぴたりとスルーパスが届く。

 セオリーではサイドへ流す場面であっても、欲しいタイミングで走れば、ズバっと鋭い縦パスがくることも珍しくない。

「これはもう感覚ですね。縦に走ると、縦にボールが出てきます。出し手の任君には聞いたことはないので、分かりませんけど、個人的にはそう思っています」

 走った場所にパスさえ届けば、たとえ狭いスペースであっても、相手に挟まれていても、自在にボールを操ることはできる。

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 止める技術には絶対の自信を持っている。

 9月18日のセレッソ大阪戦で決めた今季2点目も、技ありのトラップから生まれたゴールだった。

 相手最終ラインの裏に抜け出し、岩波拓也からのロングパスをワンタッチでピタリと止め、右足でゴールへ。目の前に飛び出して来るGK、両脇にはマーカーが迫っていたが、ボールに触れさせるスキを与えなかった。

 超絶技巧と言っても過言ではないだろう。

「うーん、僕の中ではスーパーとは言えないです。ゴールにつなげたことは自信になりましたが、あのトラップからシュートを決め切るところまでをスタンダードにしたい。最近は簡単なシュートを外したりもするので、決定率を上げていきたい」

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 得点パターンを増やすための努力は怠らない。

 今季のリーグ戦初ゴールは、平川忠亮コーチと居残り練習で鍛えてきたクロスからのヘディングシュート。「得意ではない」という形で結果を残したことは、一つのきっつかけになった。

「あの試合を境に右サイドからのクロスに積極的に突っ込んでいくようになりました。いままではなかったことです。タイミングをつかめた感じがします。もうちょっと(この形で)点を取りたいですね」

 ゴールへのどん欲さは増すばかり。それでも、猪突猛進するタイプではない。

 冷静に自己分析することを忘れず、すぐに新たな修正点を見つけていた。一度頭を整理し、ゴール前での判断を見直していくつもりだ。

「欲が出すぎて、強引に打ちにいくシーンが増えています。以前なら横に走る味方が見えていたのですが、いまは見えないときもあります。点を取ることは重要ですが、それと同じくらい味方に点を取らせるのも大事。僕の持ち味でもありますから。冷静にアシストもできるようにならないといけない。この課題を見えたことはポジティブに捉えています」

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 正念場を迎えているシーズン最終盤、さらにギアを上げていく。

 主力として自覚を持っており、厳しい条件のなかでもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権の獲得に意欲を燃やしている。

「難しい試合でチームを勝たせるゴール、アシストを決めたい。自分がACLに連れていくんだという気持ちで戦います。レッズには経験豊富な選手たちはいますが、僕はもう年長者に頼るような年齢ではないです。チームを引き上げていくプレーヤーになっていきたい」 

 力強い言葉には熱がこもっていた。

 野心に満ちあふれた26歳は、大きな結果を手繰り寄せ、新生レッズの看板を背負う男になることを誓う。

(取材/文・杉園昌之)

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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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