【新日本プロレス】『G1』覇者・オカダ・カズチカ選手に直撃インタビュー!

チーム・協会

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

秋の最強決定戦、『G1 CLIMAX 31』に7年ぶりの優勝をはたしたオカダ・カズチカ選手。“レインメーカー完全復活”を印象づけた今年のリーグ戦、飯伏選手の負傷アクシデントが起きてしまった優勝決定戦、さらに『G1』覇者として、いまIWGP世界ヘビー級王者に思うところは? 

11.6大阪でのタマ・トンガとの挑戦権利証マッチを前に、直撃インタビュー!!

やっぱり、「『G1』のチャンピオンはIWGPのチャンピオンと違うな」というのは実感しています

【新日本プロレスリング株式会社】

──さて、オカダ選手、まずは7年ぶりの『G1』優勝おめでとうございます!

オカダ ありがとうございます。もう7年も経つんですね……。

──言われてみると確かにかなりのブランクですけど、オカダ選手的にはこの7年ぶりの優勝はどう捉えているんですか?

オカダ 凄く久しぶりな感覚はありますけど、IWGPヘビーのベルトを持っていた期間が長かったし、全く丸腰のチャンピオンではない時間が7年あったわけではないので、凄く変な感じではありますね。ただ、やっぱり、「『G1』のチャンピオンはIWGPのチャンピオンと違うな」というのは実感しています。

──なるほど。オカダ選手は2012年に24歳9カ月で史上最年少優勝し、2014年に26歳で2度目の優勝をしているんですが、20代の優勝と今回の30代の優勝で違う部分はありますか?

オカダ そこは何も変わらないですね。まあ、強いて言うなら、やっぱり過去2回は「勢いだけで優勝したな」と今になって思いますし、今は技術も使うようになった。そこは歳を取ったということですかね(笑)。

──まだまだ若いですけど、無我夢中でやっていた時とは違うと。今回、オカダ選手の『G1』のコメントを振り返ってたんですけど、開幕からかなりの覚悟を持って臨んでいたというか。コンディションもしっかり整えられていたと思いますし、やはり“期するモノ”はありましたか?

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

オカダ 『G1』だから、というわけではないんですけど、こういうコロナ禍の中で時間がないということはまずないと思ったんですよ。逆に時間があるからこそ、シッカリと自分と向き合うことができましたよね。身体のことに関しても何を食べればどう反応してくるかとか、何をしたら体が絞れてくるのかとか、試合をしてみてその絞った体がどうなるかとか、昨年からいろいろと試すことができたんですよ。

――なるほど。

オカダ チャンピオンだった時代はそれができないんですよ。「もっといい身体になれよ」なんて言われても、戦うことで精一杯で身体を作ることができない。そういう意味で、改めて自分のコンディションの整え方や作り方をしっかり考えることができましたし、「どうしたら自分のプロレスキャリアを長くできるか」っていうことも考えられましたし、どうしてもマイナスに捉えてしまうコロナ禍をプラスに変えることができたのは良かったなと。怪我という怪我も今回の『G1』では全くなかったですからね。

「初戦の相手が棚橋弘至で本当に良かったな」と思います。

【新日本プロレスリング株式会社】

──リーグ戦を振り返っていきたいんですけど、Bブロックの開幕戦は9.19大阪大会でした。相手は棚橋弘至選手で、2012年の“レインメーカーショック”と同じ場所での戦いでしたね。

オカダ 正直、そこはそんなに深くは考えてなかったんですけど、大阪府立で棚橋さんを相手に“先に入場”したのは、初めてIWGPヘビー級チャンピオンになった2012年の2月12日ぶりだったと思うんですよね。

──あ、そのシチュエーションはそんなに久しぶりでしたか。

オカダ ええ。その年の6月にも大阪府立で再戦してますけど、その時はボクがチャンピオンだったので“後入場”ですからね。

――なるほど。

オカダ だから、なんか凄く懐かしさを感じたんですよ。お客さんの入りも今回、制限があって超満員にはなってないですけど、それこそ2012年当時も超満員だったわけではないですし、そのシチュエーションに自然とグッと来ちゃいましたね。なので、棚橋さんの入場中にグッと来ました。だからこそ「これはやらなきゃダメだな」と気が引き締まったというか。

──そこでまたスイッチが入ったということですね。

オカダ そうですね。だから「初戦の相手が棚橋弘至で本当に良かったな」と思います。

──オカダ選手の歴史を知っていると「レインメーカーが帰ってきた」という言葉も、大阪と言うシチュエーションも凄くハマっていましたよね。

オカダ 大阪で開幕して、相手が棚橋弘至で、ボクが先入場で、去年はマネークリップだけでしたけど、今年はレインメーカーも狙うようになって……なんかもう完璧でしたね。

──その後も快調に白星を重ねていったわけですけど、9.29後楽園大会でのYOSHI-HASHI選手との同門対決では、もう少し感傷的なコメントが出るかなと思ったんですが、試合後は「オレはもっと先見てるんで」という毅然とした態度で、優勝に向けた覚悟をここでも感じました。

オカダ 自分の中で“出来上がっちゃって”ましたね。なんかもう「レインメーカーになっちゃってた」んですよ。去年までとは違って、思考が完全にレインメーカーになっていたというか、出る言葉もレインメーカーになっていたと思いますし、何なんでしょうね?

──その「レインメーカーになった」というのは、ここ最近なかった感覚というか。

オカダ ボクは新日本プロレスのために頑張るんじゃなくて、自分のために頑張る、自分を応援してくれる人のために頑張る。それがまた新日本プロレスのためにもなるんだろうなと思ってやってきているんですけど、結局それが一番なのかなとは思いますね。

──結果的に、それがレインメーカーになるというか。あと印象的だったのがSANADA選手との公式戦があった10.4後楽園大会の日に、新しい総理大臣に岸田文雄さんが決まったんですよね。その日のマイクで「新しいリーダーになる」という言葉を使われて。

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ 言ってましたね(笑)。

──今振り返ると、そういった言葉も“覚悟”の部分に繋がるというか。

オカダ あれは5戦目ですよね。新しい総理大臣が決まったっていうことは日本国民みんなが知っているわけじゃないですか? そういう意味では岸田・オカダじゃないですけど、ボクが新たに新日本を引っ張っていくという意思表明ですよね。そのへんは「見たらわかるでしょ」っていう戦い方をやってきたっていう自負もありましたし、それだけ自分に自信もありましたね。

──その後、連勝が続いていたジェフ・コブ選手とのトップ争いのデッドヒートが続いていたんですが、10.14山形大会でタマ・トンガ選手に敗れてしまいました。オカダ選手は「嫌な空気を感じた」ともおっしゃっていましたよね。

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ タマに関しては、今までのコメントを聞いていてもボクへの思いが相当あったのかな、と思ったんですよ。そういう意味では一本取られてしまったなと。ボクのツームストンからのガンスタンという返し技も想像してませんでしたから。

──あれは本当に鮮やかでした。

オカダ まあ、完璧な全勝優勝とはいきませんでしたけど、あのガンスタンでしっかりとアゴを調整してイケメンにしてくれたことですし、借りはまた返せばいいだけなんでね。次は、大阪で『G1』チャンピオンとしてのオカダ・カズチカを改めてタマに見せたいと思います。

──そして公式戦の最終戦、10.20日本武道館大会の相手であるコブ選手はまさにオカダ選手がモンスターにしてしまったというか。あそこまで星取り的に食らいついてくるとは想像されていましたか?

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ まあ、ジェフがモンスターになってしまったのは完璧にボクのせいでしょうね……(苦笑)。UNITED EMPIREに入って、今はウィル・オスプレイもいない中でジェフと(グレート・)オーカーンでしっかりやっていくんだっていう気持ちが出たんだと思います。リーグ戦中はボクが勝っても、ジェフも勝ちまくるし、ジェフが勝ってもボクも勝つっていう、後に試合をするほうが嫌なのでお互いにプレッシャーをかけ合うような、心理戦みたいになってましたけど。

──日々、どちらも譲らない感じで。

オカダ 『G1』の前から東京ドーム、メットライフドームとやり合ってきましたし、最終的にこうやって借りを返すことが出来ましたから。ただ、あれだけの選手になったんで、また戦うこともあるだろうと思います。

飯伏さんも不本意だったと思いますし、20年後、30年後に「あんなことがありましたね」って笑えるようにしていきたいですよね

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

──そして飯伏幸太選手との優勝決定戦は残念ながらアクシデントで終わってしまいました。あの瞬間は、改めてどういうお気持ちでしたか?

オカダ 飯伏さんのフェニックス・スプラッシュを避けて、コーナーで「痛いな」というか、「次どうしようかな」と考えている時に、「うわー」っていう飯伏さんの声が聞こえたんですよ。レフェリーの「出来るか?」っていう声も聞こえたんですけど、レフェリーストップになった中では素直に喜べなかったですよね。

――茫然とされた表情がとても印象的でした。

オカダ ボクも何が起きたのか理解できなかったです。でも、プロレスには怪我はつきものですからね。『G1』も過去30回やっていて、今までがたまたまうまくいっていただけかもしれない。ボクが見てきた中でも危険な場面はたくさんありましたし、それがたまたま今回の『G1』の決勝で起きただけだと思っていますよ。

――なるほど。

オカダ まあ、「プロレスは本当にいろいろなことを経験させてくれるな……」と改めて思いました。勝つこともそうですし、無観客でやったりとか、柴田(勝頼)さんの件もあったりとか、ボクは本当にプロレスで凄く成長させてもらっているなと感じました。ただ、飯伏さんにしても二度と戦えないわけじゃないですし、もう逆に笑い話に出来てしまうぐらいポジティブでいないと、飯伏さんも抱え込んでしまいますからね。もちろん飯伏さんも不本意だったと思いますし、20年後、30年後に「あんなことがありましたね」って笑えるようにしていきたいですよね。たとえば、甲子園でもサヨナラボークがあったり、サッカーでも最後に決めなきゃいけないPKでゴールを外したりとか、他のスポーツでもそういうことってたくさんあるわけですから、また改めて満足の行く戦いが出来たらいいんじゃないかなと思いますね。

【新日本プロレスリング株式会社】

──その後のマイクも非常に難しい場面の中、オカダ選手の肝が据わっていたからこそ、みんなを納得させるマイクになったというか。

オカダ でも、AブロックもBブロックも、「この1カ月はそれだけのことをやってきた」という自信があったので、そこは誇っていいことだと思ったんですよ。だから、あの場面では、チャンピオンとして堂々とマイクをさせてもらいました。

──「勝ちは勝ちです。任せてください。また俺がいろいろと背負いたいと思います」とおっしゃいましたけど、この1カ月のオカダ選手の覚悟がこの言葉に集約されていた気がしました。

オカダ まあ、IWGPはしばらく持っていないし、この『G1』ぐらいでしか堂々と発言できなかったんですけど、やっぱりこれだけの戦いを1カ月してきての優勝だったので、堂々と「俺に任せなさい。俺しかいないでしょう!」と言わせてもらいましたね。

ボクがIWGPチャンピオンではないのに、世界ヘビー級チャンピオンよりも上の存在になってやろうかな、と思っています(ニヤリ)

【新日本プロレスリング株式会社】

──「飯伏幸太を待つ証として、“4代目IWGPヘビー”を俺にください」という発言もありました。4代目のベルトへのこだわりは分かるんですけど、改めてこの部分をお願い出来ますか。

オカダ ボクも大事にしてきたIWGPヘビーのベルトですし、飯伏幸太を待つ証として、「繋がりを持っていたい」という意味でもありますよね。あとは彼が封印したベルトですし、プラス・今は何にも使われていないじゃないですか? いつも“権利証”というものがありますけど、その代わりに4代目のIWGPヘビーのベルトを持たせてもらう。別にIWGPヘビー級チャンピオンを名乗りたいわけじゃないです。ただ、飯伏幸太と戦うまでは持っていたいということですね。

──それは今後、現IWGP世界ヘビー級王者の鷹木選手との戦いが実現して、IWGP世界ヘビー級ベルトを獲ることがあっても、同時に持っているということですか?

オカダ いや、そんなややこしいことはしないです。あくまでベルトを権利証という形で東京ドームに向けて守っていこうと思いますし、それはその時にいろいろ考えていけたらいいんじゃないかなと。あとは、『G1』チャンピオンとして、ブリーフケースはカッコ悪いじゃないですか? とくに今のコスチュームで自分が何かを持つって想像できないと思うんですよ。

――なるほど。現在のコスチュームにはブリーフケースは似合わないんじゃないかと。

オカダ であれば、ベルトだったら初めて見たお客さんにもわかりやすいものになるんじゃないかなと思うんですよね。まあ、『G1』チャンピオンになったので、もっと新日本プロレスを盛り上げていきますよ。ボクがIWGPチャンピオンではないのに、世界ヘビー級チャンピオンよりも上の存在になってやろうかな、と思っています(ニヤリ)。

『G1』チャンピオンがIWGP王者に挑戦するという構図が当たり前になりすぎてて、みんなちょっと勘違いしていたと思うんですよ

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

──Twitterやコメントなどで現・IWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟選手から反論もありましたけど、現時点で贈る言葉はありますか?

オカダ 鷹木さんは鷹木さんなりに盛り上げたらいいんじゃないですか? 2012年にボクが初めて『G1』で優勝した時に権利証というものを作ってもらって、東京ドーム大会でのチャレンジャーになりましたけど、久しぶりに優勝して思ったのが「こっちもチャンピオンだ」ということですね。

──ああ、なるほど。

オカダ 『G1』で優勝した選手は東京ドームでベルトに挑戦できるよっていうのが、ここ数年の当たり前になっていましたけど、こっちも『G1』チャンピオンなんだし、こっちはこっちで盛り上げますよ。

──たしかに、以前は『G1』覇者とIWGPヘビー級王者が東京ドームで頂上決戦を闘うというイメージがありましたね。

オカダ ええ。それにベルトが懸かっていただけですからね。ただ「チャレンジャーに決まりました。その権利をしっかり守っていきます」っていうのは個人的sには違うかなと。だからボクも『G1』チャンピオンとして、2021年も残り少なくなりましたけど、シッカリと盛り上げていきますよ。昔で言えば、IWGPヘビーとインターコンチ王座でメインイベントを決める投票をやったりもしているわけじゃないですか? 

──ありましたね(2013年1.4東京ドーム大会、IWGPヘビー級選手権 オカダ・カズチカvs内藤哲也と、IWGPインターコンチネンタル選手権 中邑真輔vs棚橋弘至の試合順をファン投票で決定し、大きな話題となった)。

オカダ 昨日(10月21日)の試合後にも言いましたけど、どっちの“政党”についていくのか? IWGP世界ヘビー党なのか? IWGPヘビー党なのか? まあ、IWGPヘビー党というよりは、“『G1』党”ですよね。

──もう一度、IWGP世界ヘビー王者と、『G1』王者の対決を強調していくというか。

オカダ 鷹木さんも自信があれば普通に闘って、「鷹木は凄いな」っていうのを見せて、IWGP世界ヘビー党の支持者を増やせばいいだけですし、何をそんなにビビってるのかなと思いますね。

──そして、オカダ選手はオカダ選手のやり方で対抗していくと。

オカダ ボクもさんざんインターコンチでやられましたからね。だから、今回は、ボクはボクで『G1』チャンピオンとして新日本プロレスを盛り上げていきますよ。ボク自身はIWGP世界ヘビー級チャンピオンに負けているとは思ってないし、同等というよりも、「『G1』チャンピオンのほうが上」だと思っていますから。なぜなら『G1』にはIWGP世界ヘビー級チャンピオンも出場していたわけですし、そこで優勝出来なかったのに「俺のほうが上だよ」っていうのもおかしな話ですからね。だから、バックステージで言ったように「おまえが挑戦してこいよ」ということです。

【新日本プロレスリング株式会社】

──なるほど。その発言に最初はビックリしましたけど、理屈としてはたしかに合っていますよね。

オカダ 『G1』チャンピオンがIWGP王者に挑戦するという構図が当たり前になりすぎてて、みんなちょっと勘違いしていたと思うんですよ。『G1』は年に1回しかないですし、IWGPチャンピオンだからってチャンスが大きいわけではない。そういうリーグ戦です。まあ、ボクもIWGPチャンピオン時代にいろいろと言っているかもしれないですけど、過去は過去なんでね。今をしっかりと盛り上げますよ。それでIWGP世界ヘビー級チャンピオンが燃えてくれればいいんじゃないかなと思います。

(了)

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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