中田浩二 アントラーズOBの今「経営者を目指して、挑戦の積み重ねが可能性を広げていく」【未来へのキセキ-EPISODE 22】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

 始業時刻は9時。中田浩二の一日は、鹿島アントラーズクラブハウスに出社することから始まる。引退後の2015年からアントラーズのC.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)に就任。フロントスタッフとして、クラブとパートナー、サポーター、行政機関などのステークホルダーをつなぎ、ビジネス面でクラブを支える役割だ。

 一日のスケジュールは目まぐるしい。社内でのミーティング、来社があれば打ち合わせ、もちろん自ら会社訪問することもある。セールスグループという法人事業をメインとする部署に所属し、メインパートナーであるLIXIL、NIKEなどを担当。2020年にクラブが設立したパートナー企業の団体で、ともに地域を盛り上げていく「ビジネスクラブ」の地元企業へ訪問をすることもある。今シーズンで、現役引退から7年目を迎えた。

「現役を引退して、自分が知らない世界に飛び込んでいきました。大変ですが、すごく楽しいし充実しています。セカンドキャリアとして、選手から監督やコーチになることが多いですが、個人的にはそれだけだとどうしても日本サッカー界は良くなっていかないと感じたんです。逆にプロサッカー選手経験者が、経営やマーケティングの分野にも入っていかないといけないと思っていたし、自分自身、そうなろうと思って飛び込んでいった経緯もあります。今はその道を選んで良かったなと思っています」

 この7年の間にはフロント業務だけでなく、自身の考えや知見を広げるために筑波大学大学院に進学してインプットする時間も作った。とはいえ、仕事と学業の両立は簡単ではなかった。

「とにかく移動が多く、車の総走行距離の数字がどんどん増えていきました(笑)。通常の業務に加えての通学はハードでしたね。大学での専攻は、社会工学。社会現象を多様な視点から分析して課題解決する学問です。アントラーズに置き換えて問題は何かと考えたときに、渋滞について頭に浮かびました。ファン・サポーターが東京からも含めて多くの方が2時間から3時間かけてスタジアムに来場してくれています。試合後は渋滞で鹿嶋を抜けるのに1時間かかることもある。それをどう解決していくのか。そこを学ぶにも知らないことが多すぎました」

 ファン・サポーターのために何ができるか。知らないことに素直に向き合った。ひと回り下の年齢の学生たちとともに、学び考える日々を過ごした。

「大人になるとどうしても落としどころを考えてしまいがちですが、若い子は発想が自由で柔軟でした。ときに無理なこともありますが、年代の違うみんなと接することで、こういうこともできるんじゃないかと刺激をもらいました。知識や情報だけでなく、そういった学びもありました」

【©KASHIMA ANTLERS】

 中田C.R.Oの仕事は、クラブの営業活動に止まらない。ホームゲームに向けた選手へのインタビューに始まり、オフィシャルサイトでは当日の見どころも発信。さらには地元のコミュニティ放送局、エフエムかしまで毎週金曜日放送のクラブオフィシャルラジオ番組「アントラーズラウンジ」にもレギュラー出演して、選手視点での情報を伝えている。クラブオフィシャルの仕事以外にも、DAZN「やべっちスタジアム」への出演や日本代表戦はじめ他クラブの試合中継にも、現地スタジアムからの解説やピッチリポートもつとめる多忙ぶりだ。

「解説をすることで、違うチームがどんな状況なのかを見ることも勉強だと思っています。そこでの言葉の使い方や表現方法も大事ですよね。その際に経営目線での話もできるようになってくると、また違ってくると思うので意識していきたいところです。考えながらもいろいろなことに挑戦することで、自分の可能性を広げながら取り組んでいければいいなと思っています」

 帝京高校卒業後、1998年に鹿島アントラーズへ加入し、11の国内タイトル獲得に貢献した。2005年にはマルセイユ(フランス)へ移籍し、その後のバーゼル(スイス)でもタイトル獲得を経験。さらに日本代表として2002年と2006年の2度のW杯出場するなど、現役時代は大きな実績を残した。ボランチ、センターバック、サイドバックとさまざまなポジションをこなし、引退後もさまざまな仕事によって自身の視野を広げる日々を過ごしている。

「現役時代は特別に特徴がある選手ではありませんでした。そこは失敗を繰り返しながら、いかに周りを活かすか、自分の強みをどう活かすかを考えてやっていました。その意味ではサッカーと今やっているビジネスには通じる部分もあるなと思います。まだまだできないことの方が多いですが、まずはチャレンジすること。いろいろなチャレンジをすることで成長しているかはわかりませんが、充実しているなという実感があります。うまくいかないこともありますが、そのときになぜそうなったのか、またどう振る舞うべきだったのかを考えることはおもしろいです。それがないと成長できないですから」

 将来への展望は、現役引退当時と変わらずピッチ内とはまた違ったところに向いている。

「今の目標は、経営者を目指したいと思っています。プレイヤーズファーストという選手の視点がありますが、それだけだと、どうしてもクラブ経営は成り立たない。逆にマーケティングの視点だけで稼いでいこうとしても選手ファーストでできない。そこでうまくバランスを取るためには、両方の知識がないといけません。そういう立場になりたいなと。それができるようになると、アントラーズはもちろん日本サッカーが進化する可能性があるのではないかと思っています。もっともっと盛り上げていかないといけないですからね」

 アントラーズのみならず、日本サッカーの未来への軌跡を築き上げるために。「知識はすごく増えてきた。これからはそこをいかに活かしていけるかを考えています」。現役時代とは違った武器を蓄えながら、未来への挑戦は続いていく。

中田浩二C.R.Oも出場!12/26(日)にスペシャルマッチ開催!ふるさと納税型クラウドファンディング開催中!

【©KASHIMA ANTLERS】

内容:アカデミー vs OBスペシャルマッチ観戦(3万円〜5万円コース)
詳細:アントラーズの伝統をつくりあげてきたOBたちが、将来、アントラーズの選手としてプレーすることを夢みるアカデミーの選手たちと対戦
※チケットの一般販売や動画配信の予定はありません。寄附者限定で観戦できるスペシャルマッチとなります。

開催日:2021年12月26日(日)予定

13:00〜13:30 U13アカデミートレセンvsOB
13:40〜14:10 U14アカデミートレセンvsOB
14:20〜14:50 U15アカデミートレセンvsOB
15:00〜15:30 U16 ユースvsOB
15:40〜16:10 U17 ユースvsOB

出場予定現役選手:遠藤康、土居聖真、町田浩樹、上田綺世、沖悠哉、染野唯月、山田大樹、舩橋佑
出場予定OB:本田泰人、秋田豊、名良橋晃、本山雅志、新井場徹、野沢拓也、青木剛、内田篤人、柳沢敦、小笠原満男、曽ケ端準、中田浩二ほか

※出場予定OBは随時発表予定
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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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