【マッチプレビュー】2021年JFL第26節・いわきFC対ソニー仙台FC
【©︎IWAKI FC】
対戦相手のソニー仙台FCは、宮城県の実業団クラブ。選手は基本的にソニー及び関連企業の社員であり、午前中は業務をこなし、午後からサッカーの練習を行う。Jリーグへの昇格意思を持たない実業団クラブだが獲得選手のレベルは高く、近年は常に安定した成績を残す。Honda FCと並ぶ「JFLの門番」として、Jリーグ参入を目指すクラブの高い壁であり続けている。
オリジンは1968年に発足した、ソニー株式会社仙台テクノロジーセンターのサッカー同好会。長年、宮城県リーグで活動を続け、1994年に県リーグ優勝。1995年から東北リーグ3連覇を果たし、1997年度の全国地域リーグ決勝大会で全勝優勝。旧JFL(ジャパンフットボールリーグ)に昇格するや、初戦で優勝候補の本田技研工業を破る大金星を挙げた。
1999年から続く現在のJFL(日本フットボールリーグ)では「プロの横にいる最強アマチュア」として、社内の活力の源になることを目指し活動。2010年には天皇杯でベガルタ仙台に勝利するなど結果を残したものの、翌年、チームは大きな試練に襲われる。
東日本大震災で、多賀城市にあるソニー仙台テクノロジーセンターが大きな被害を受け、チームは約2カ月間、活動を停止。後期よりリーグに参加するも、最下位の18位に終わった。松本山雅FCのJ2加盟とジェフリザーブズの解散に伴い地域リーグへの降格を免れ、かろうじてJFL残留を果たした。
そんな困難に屈することなく、チームは巻き返す。2012年は12位、2013年は9位。2014年は5位と着実に順位を上げ、2015年のファーストステージで2位。セカンドステージで無敗優勝し、JFLチャンピオンシップでもヴァンラーレ八戸に勝ち、初のリーグ優勝。以降もコンスタントに上位に入り、2017年以降は毎年4位以内をキープしている。
エンブレムは昔、政治の中心地であった多賀城市を守る兵士の刀をモチーフに「戦う姿勢」を表したもの。天に向かう剣は「リーグの頂点を目指す」という意味。その上に二つのSを組み合わせている。配色はブルーをベースに「フェアプレー」を表す白と「冷静」を表す水色を配している。
今年の成績は、第25節終了時点で11勝6分け7敗。勝ち点39で4位。
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二度目の対戦は昨年のJFL第24節。いわきFCは前半、CKからの失点をきっかけに2点を許し、後半に山口大輝がゴールを挙げるも逃げ切られ、またしても1対2で敗戦。三度目の対戦となった今年5月の天皇杯1回戦はDF日高大のゴールで先制するも終了間際に追いつかれ、延長戦に突入。延長ではソニー仙台FCのMF佐藤碧選手にミドルシュートを決められるも、延長後半にFW谷村海那が同点ゴール。ここでも決着がつかずPK戦に突入し、三たび屈した。
昨年まで3連敗。しかし今年、いわきが一矢報いる。
7月に行われたJFL第15節。アウェーのいわきはチームの攻守の核・日高大が欠場し、小田島怜、黒澤丈、奥田雄大、米澤哲哉と4人のCBを並べる4バックで対峙。普段は右SBの嵯峨理久を左サイドハーフに上げる起用が当たった。嵯峨が後半に2ゴールを奪い、いわきが2対0で初勝利。
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■「相手どうこうより、いかに自分達の力を出すか」田村雄三監督
彼らのペースに巻き込まれることなく前に出続け、休ませない。そんなゲームができればいいのですが、決して簡単ではないことはよくわかっています。
今年7月のアウェーでは『天皇杯の借りを返そう』というモチベーションで、どうにか勝つことができました。でもソニーさんとしても、年間2敗は許されないはず。一丸となって勝ちに来るでしょう。この試合も間違いなく、難しいゲームになると思います。そもそも、ここまで来たら簡単なゲームは1試合もありません。
ただ、今はソニーさんどうこうよりも、自分たちの力をもっと出すにはどうしたらいいかばかりを考えています。前節のヴェルスパ大分さんとの試合で気になったのが、全体的にコンパクトではあるけれど、やや後ろに重たかったこと。決して相手のプレッシャーが速かったわけではないのに、攻守の切り替えや準備が遅く、パスがつながらなかった。もっとアグレッシブなディフェンスができたら、全体のバランスが変わってくる。そこを今週の練習で修正しました。
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ここからは基本的に調子のいい選手を、組み合わせを考えながら使っていきます。ヴェルスパ戦の翌日に福島ユナイテッドFCさんとトレーニングマッチをしたのですが、ここしばらく試合に絡む回数が少なかったFW吉澤柊と岩渕弘人がいい動きを見せていました。彼らに加えFW平岡将豪、古川大悟、谷村海那あたりを上手く起用できたら面白いかなと思います」
■「怖さはそれほど感じない」村上佑太アナリスト
フォーメーションは4-2-3-1。今節の大きなポイントがボランチ二人。ここ数年のソニーさんを支え続けてきた平田健人選手と吉森恭兵選手が出場停止とケガで欠場する見込みです。彼ら2人が出ないゲームをほとんど見たことがなく、おそらく、展開するサッカーは前節と変わるでしょう。特にゲームコントロールの中心的な役割を果たしてきた吉森選手が出られないことは、ソニーさんとしては痛いのではないでしょうか。
攻撃のキーとなるのは10番のMF藤原元輝選手と8番のFW佐藤碧選手。今年の天皇杯で見事なゴールを決めた佐藤選手は特に厄介な存在です。ワントップの位置にいますが、実質的にゼロトップのフリーマンのような形で自由に下り、さまざまな場所に顔を出してくる。この選手を気持ちよくプレーさせると、ソニーさんのペースになってしまいます。
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ボランチが代わることもあり、今節は前のメンバーを変えてくるかもしれません。9番のFW内野裕太選手と17番のFW上野瑶介選手はここ最近の試合では終盤のパワープレー要員で起用されていますが、どちらかの選手をスタメンで使ってくる可能性もある。特に前線のターゲットマンとして内野選手が出てきた時、彼へのロングボールに対応できるかどうかもカギになるでしょう」
■リーグ終盤に向け、厳しい戦いが続く。
東日本大震災のダメージから立ち直り、地域社会への貢献を目標とするソニー仙台FC。そして震災をきっかけに誕生し、いわき市と双葉郡の活力の源となることを目指して戦ういわきFC。ともに東北を盛り上げるライバル同士のバトルに、ぜひご注目を。
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なお、いわきFCの最新情報は現在、"魂の息吹く"noteにて配信中。
また、いわきFCファンクラブ「LOVE IWAKI」も、会員を随時募集。入会は無料。チケットやグッズの会員限定価格で購入や、メルマガによる情報配信など多くの特典があるので、ぜひチェックしてほしい。
熱き戦いに、引き続きご注目を!
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