サッカークラブ以上の存在を目指して。プログラミング教育や英語教育での地域貢献【未来へのキセキ-EPISODE 15】
【©KASHIMA ANTLERS】
マインクラフトの仮想空間のなかでは、基本的なコマンド入力やキーボード操作によって自由自在に環境を創造することができる。たとえば、好きな色のブロックを積んだり、水をためたり、動物を呼び出したり。児童たちは担当教員やオンライン上で参加する講師の助言を得ながら、ゲーム感覚でそれらの操作を学んでいく。この授業は2020年10月に取り入れられ、翌年2月には成果発表会も行なわれた。
プログラミング教育は2020年度から小学校の必修科目となった。だが、教科書やノート、筆記用具を用いて教員の話や黒板の内容を記しながら学んでいくような従来の授業形態とは一線を画すため、そのノウハウや専門性を持たない教育現場では実践に向けて多くの課題も抱えている。鹿嶋市も例外ではなかったが、アントラーズの存在が状況を変えた。
アントラーズは2020年2月に鹿嶋市、メルカリとの3者で「地方創生事業に関する包括連携協定」を締結していたことで、クラブがハブとなって地域社会と企業をつなぐための枠組みを整えた。そこでパートナー企業のユナイテッド株式会社の連結子会社であるキラメックス株式会社と鹿嶋市を結び付け、同社が運営する小中高校生向け実践的プログラミングサービス「TechAcademyジュニア」を用いたプログラミング教育の導入を実現させた。
「すべての児童生徒に対して質の高い教育を実現することができるものと確信しており、プログラミング教育の円滑な実施と次世代の人材育成に貢献していければと思います」と、鹿嶋市の錦織孝一市長もその取り組みの成果に大きな期待を寄せている。これからもますますの進化と発展を遂げるであろうIT社会に向けた人材育成の分野において、アントラーズがその一翼を担う形となった。
2020年10月、鹿嶋市内の小学校計5校で始まった、人気のものづくりゲーム「マインクラフト」を使ったプログラミングの授業の様子 【©KASHIMA ANTLERS】
たとえば、永木亮太は「close my hands」と発声して自身の手を握り締め、常本佳吾は「pinch my cheeks」と言って頬をつねってみせる。選手だけでなく、ジーコTDや中田浩二C.R.O、マスコットキャラクターのしかおとしかこが登場する動画もあり、クラブ総出でホームタウンの英語学習に力を貸している。このような自治体とプロスポーツクラブによる共同でのTPR教材制作は、全国で初めての試みだ。選手が登場するTPR教材を使った授業は、5月より鹿嶋市内の小学1・2年を中心に全12校で実施されている。
「今後もアントラーズとの連携協力体制を築き、鹿嶋市にしかできない教育活動の展開をしていければと考えています」と話したのは、鹿嶋市の川村等教育長。これからもプロスポーツクラブのホームタウンとしての強みを生かした教育施策を打ち出す姿勢を示した。
スペインのFCバルセロナには「サッカークラブ以上の存在」という有名なスローガンがある。アントラーズでも、ピッチでのサッカー競技面だけでなく、ホームタウンの教育にも尽力することで、まさにその言葉を具現化することを目指している。
「アントラーズは今後、教育という視点においても鹿嶋市のまちづくりに関わり、地域の発展に貢献していきたいと思っています」(小泉文明社長)
クラブ創設から30年の月日が流れ、鹿嶋市を中心とするホームタウンとの関係性はより強固なものとなっている。これからもアントラーズはその地で戦う意義をかみ締めながら、教育という分野においてもより良い未来を創造するための種を一つずつまいていくつもりだ。
2021年5月より、鹿嶋市内の小学1・2年を対象に全12校で実施された英語学習のTPR教材の様子 【©KASHIMA ANTLERS】
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