【マッチプレビュー】2021年JFL第25節 いわきFC対ヴェルスパ大分

いわきFC
チーム・協会

【©︎IWAKI FC】

第23回日本フットボールリーグ(JFL)第25節。いわきFCは10月10日(日)、Jヴィレッジスタジアムにヴェルスパ大分を迎える。

ヴェルスパ大分は、大分県別府市、由布市をホームタウンとするJリーグ百年構想クラブ。チーム名称のヴェルスパ(Verspah)は「vermelho(ポルトガル語で赤)」「spa(温泉)」「hoyo(豊洋精工)」を合わせた造語。エンブレム周囲の白模様は温泉、中心の山は由布岳・鶴見岳・高崎山。下部にあしらわれた花は大分県の県花・豊後梅を表す。

クラブの歴史をたどっていこう。

2003年、大分の金属部品メーカー・豊洋精工の社員が声を上げ、協力会社の社員とともに立ち上げたサッカーチーム「HOYO FC」がオリジン。活動開始当初、選手の半数近くがサッカー未経験者だったという。2004年に大分県4部リーグからスタート。2006年より大分県2部リーグ、2007年より大分県1部リーグに所属。地道に強化を進め、順調にステップアップを果たす。

2010年に九州サッカーリーグ参戦。大分トリニータ、ロアッソ熊本に続く初参戦初優勝を成し遂げる。ただし全国地域サッカーリーグ決勝大会(現在の全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)は、1次ラウンドで敗退。

翌2011年、親会社の工場内に特定非営利活動法人「大分スポーツ&カルチャークラブ」を設立し、運営を移管。九州サッカーリーグ連覇を達成し、再び全国地域サッカーリーグ決勝大会に進出。決勝ラウンド3位に入り、地域決勝2度目の挑戦でJFL昇格を決めた。

※この時JFL入りを争ったY.S.C.C.(1位)、藤枝MYFC(2位)、SC相模原(4位)はいずれもJFL昇格を経て、2014年の創設とともにJ3参戦。SC相模原は今年からJ2で戦う。

2012年よりJFL参戦。これまでHOYO FC→HOYO Atletico ELAN→HOYO AC ELAN大分→HOYO大分と都度名称を変えてきたが、この年のシーズン終了後、チーム名を現在の「ヴェルスパ大分」に変更。Jリーグ入りを念頭により地域に根差したチームとなるべく、運営母体の企業名を外すことを決断した。

そして2018年、須藤茂光氏の監督就任とともにチームは飛躍を果たす。2019年は過去最高タイの7位。2020年には株式会社ヴェルスパを設立し、運営を移管。コロナ禍の影響でリーグ戦が1回戦総当たりの15試合制に変更される中、開幕から4連勝し勢いに乗った。その後もシーズンを通じて安定した戦いを見せ、JFL初優勝を成し遂げた。

さらに今年、チームはJリーグ参戦へ向けた動きを本格化。Jリーグ百年構想クラブの認定を受け、ホームタウンを別府市・由布市と定め、新監督として年代別日本代表のアシスタントコーチなどを務めた山橋貴史氏を招聘した。

ただし残念なことに、J3クラブライセンス申請は見送りとなった。「施設基準を現時点では満たすことが困難」というのが理由。ホームタウンの別府市・由布市にJリーグ・JFLの開催基準を満たすスタジアムがなく、ヴェルスパのホームゲームは現在、主に大分市内で開催されている。クラブは来シーズンのJ3クラブライセンス申請に向け、J3の施設基準を満たすスタジアム建設を目指し、協議を重ねている。

【©︎IWAKI FC】

いわきFCとは昨年のJFL第17節で初対決。いわきは前半30分にMF日高大のゴールで先制するも、暑さの残る開幕2戦目のアウェー、選手のコロナ罹患による活動自粛などの影響で以後、失速。前半40分から2点を許し逆転。後半にも2点を加えられ、1対4の大敗を喫した。

2度目の対戦は今年6月20日のJFL第13節。アウェーでの戦いは57分に先制されるも流れを引き戻し、67分にFW鈴木翔大が同点ゴール。84分にはFW平岡将豪が幼少期からのなじみの地・大分で決勝点を挙げ、いわきFCが2対1で逆転勝ちを収めている。

ヴェルスパ大分の現在の順位は11勝4分7敗。勝ち点37の5位。同じ百年構想クラブであり、昨年に厳しい負けを喫した2020年JFL王者を、いわきFCは今節いかに攻略するのか。田村雄三監督、村上佑太アナリストのコメントを紹介する。

■「9連勝を目指して戦う」田村雄三監督

「前節、アウェーで松江シティFCに勝つことができました。4対0の圧勝でしたが、今、特に浮かれた空気は感じません。

松江戦のデータを見たところ、走行距離やスプリント回数、プレーエリアとパス成功率など、自分達のやろうとするサッカーがしっかりと表れていた。アタッキングサードに多く侵入できており、パス成功率も高く、精度の向上というHonda FC戦で得た教訓を、しっかりと生かすことができました。

【©︎IWAKI FC】

サッカー=ポゼッションではありません。プレッシャーの少ないディフェンシブサードでいくらパスを回しても、ゴールに向かわなかったら意味がない。できるだけ敵陣でボールを奪い、素早く攻守を切り替えてゴールに向かっていくのが理想。そのことを全員が理解し、トライできていると思います。

ここに来ていいデータが出ているのは、シーズンインから一貫して鍛え続けてきた成果でもあります。もちろんストレングストレーニングだけでなく、サッカーの要素も含めてのことで、今、フィジカルとパフォーマンスがしっかりとつながってきている。まだまだ課題は多いですが、積み上げていきたいです。

松江戦は3バックで戦いましたが、ヴェルスパ大分さんは4-3-3なのでこちらも4バックで戦うか、それとも今節も3バックで戦うか。それはまだ決めていません。この先は状態のいい選手を使っていきますし、毎試合違うヒーローが出てきてほしい。残り9試合を9連勝するつもりで戦います」

■「MF利根瑠偉選手を封じたい」村上佑太アナリスト

「ヴェルスパ大分さんは4-3-3からボールをつないでくるチーム。6月のアウェーゲームでは、こちらが前から奪いに行ったところ、GKも使いながらしっかり剥がそうとしてきた。とはいえこちらもチャンスを作れたので、決して相性の悪いチームとは思っていません。

昨年の戦いでは、前半30分までパーフェクトなゲームをして1点を先制しましたが、そこから失速し、4点を取られて負けました。その結果を踏まえた6月の戦いは前半にカウンターで先制されたものの、2点を取って逆転勝ち。この試合は大きな自信になりました。

【©︎IWAKI FC】

警戒しているのは左サイドのMF利根瑠偉選手。個人で打開してシュートまで持っていける選手で、6月の戦いでやられていますし、前節の鈴鹿ポイントゲッターズ戦では2点を取っています。利根選手を止められれば、ヴェルスパさんの攻撃を抑えられると考えています。

彼は足元も上手いですが、一番の武器はスピードと大きなストライド。ヴェルスパさんの3トップ中央の中野匠選手はFWというよりMFで、頻繁に中盤まで下りてきます。それに対して利根選手は高い位置に張り、中野選手に食いついたCBの背後のスペースに斜めに侵入してくることが多くあります。

得点パターンは、左サイドからカットインしての右足のシュート。中に侵入させると失点のリスクが増えるので、まずは前を向かせないこと。前を向かせたとしても中へのランニングを切り、自由にやらせないことが大事です。

前節、セットプレーからのトリックプレーで先制点を取りました。今節も何かをしようと考えています。ただ、もちろんそれでゴールできたらうれしいのですが、通常のセットプレーからあまり点が取れていないのが気になっています。『日本のフィジカルスタンダードを変える』と宣言している以上、セットプレーの競り合いでもっとパワーを示したい。そのために今週、しっかり整理します」

■スターティングメンバー争いは激化の一途。

リーグ前半戦を首位で折り返したいわきFCは9月19日、Jヴィレッジスタジアムで2位Honda FCと直接対決。チームは真っ向勝負を挑んだが、1対5の完敗を喫した。

シーズン2敗目となる4点差の負け。しかし2週間後、田村雄三監督は見事、チームを立て直してみせた。

大敗からのJFL第24節。松江シティFCとのアウェーマッチはMF日高大、FW鈴木翔大、MF山下優人のゴールで4対0で完勝。ここまで積み上げてきたことに間違いがなかったことを証明し、勝ち点51で首位をキープしてホームへ帰還した。

松江シティFC戦は3-4-3で戦ったが、今季は4-1-3-2、4-3-3などを対戦相手と戦術に応じて使い分けている。1年前に辛酸をなめさせられた王者を相手にどのようなフォーメーションとメンバーで挑むのか。興味は尽きない。

シーズン残り9試合となった今も、スターティングメンバー争いは激化の一途。DF陣は1年目の米澤哲哉を筆頭に、スピードに定評ある黒澤丈、クレバーな読みを武器とする奥田雄大、そしてアキレス腱断裂から復帰し、松江戦に3バックの左で先発復帰したDF田中龍志郎、気迫あふれるプレーで守備陣を鼓舞する江川慶城らがスターティングメンバーを争う。そして両SBは盤石の日高大、嵯峨理久か。

中盤はアンカーとして闘志あふれるプレーを見せ、プレースキッカーとしても活躍する山下優人が中心。加えてこれまで主に守備面で貢献してきた宮本英治が、ここにきて攻撃センスを発揮しつつある。

【©︎IWAKI FC】

アタッカー陣は前節2ゴールを挙げた鈴木翔大とここまで9得点を挙げている古川大悟が軸となっていたが、古川がしばらくゴールから遠ざかっているのは気になるところ。この2試合3トップ中央で起用され、恵まれたサイズと前線からの守備力の高さを誇る谷村海那、前へのパワーを武器とし競り合いに強い平岡将豪、交代出場で幾度となく流れを変えてきた吉澤柊など、アタッカー陣は多様な人材がひしめき合っており、いつ誰が台頭してもおかしくない。現在2位Honda FCとの勝ち点差は4。勝負の10月、新たなスターの登場はあるのか。注目したい。

熱き戦いは10月10日(日)13時より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はYouTubeのJFLオフィシャルチャンネルにてライブ配信される。ぜひ会場にて観戦ルール順守の上、気持ちのこもった拍手で、選手達の熱き戦いを後押しいただきたい。

なお、いわきFCの最新情報は現在、"魂の息吹く"noteにて配信中。

また、いわきFCファンクラブ「LOVE IWAKI」も、会員を随時募集。入会は無料。チケットやグッズの会員限定価格で購入や、メルマガによる情報配信など多くの特典があるので、ぜひチェックしてほしい。

熱き戦いに、ぜひご注目を!
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著者プロフィール

「いわき市を東北一の都市にする」ことをミッションに掲げ、東北社会人サッカーリーグ1部を戦う「いわきFC」の公式アカウントです。

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