【早大競走部】石塚陽士×伊藤大志 駅伝シーズン直前特集 第6回 

チーム・協会

【笑顔の伊藤(左)と石塚【早稲田スポーツ新聞会】】

【早稲田スポーツ新聞会】

【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集 及川知世、湯口賢人

1年目の春から、早くもエンジをまとった石塚陽士(教1=東京・早実)と伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)。5月のルーキー対談の様子、そして相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)からも「(合宿中)ずっと元気」と評されるこの二人だが、今回もそれを感じられる対談となった。前半は入学後の半年の振り返り、後半では競技面について。そして最後には番外編として、序盤に載せきれなかった内容を掲載する。

※この取材は9月11日に行われたものです。

入学から半年経って

――入学後から時間が経ちましたが、お互いの印象は変わりましたか

石塚 伊藤はちゃんと人間味があるというか、大学生しているなって感じがします。もちろん、陸上の活動もしっかりとやっていますし、それ以外の大学生としての生活の楽しさも満喫して、競走と大学生活の両立を図っていると思います。そこはさすがだなと思います。

伊藤 入学後の対談のインタビューでは(石塚の)ネジがぶっ飛んでいるなってことを話しましたが、多分数本ぶっ飛んでいるというか、基盤自体はちゃんとしていると思いますがそもそも大事なところがないのではないのかなと思います。何か欠落している感じがします。

――それに関して具体的なエピソードはありますか

伊藤 ところどころ会話の端に感じるものがありますね。以前、石塚と歩いている時に石塚が糸に引っかかった虫をずっとペシペシと叩いていました(笑)。無心で叩いていたので、こいつやばいなと思いました。

――寮生活で、互いに直してほしいところ、不満なところはありますか

伊藤 僕は寛容だから、特に気にすることはありません。寮生活が長く、いろんな人を見てきたので、不満とかは特にないですね。

――石塚選手は寮生活の経験があまりないと思いますが、実際始めてみていかがでしょう

石塚 些細なことでも驚くことが多々あります(笑)。

1年目の春夏シーズン

日本選手権男子5000メートルに出場した伊藤 【早稲田スポーツ新聞会】

――次に、前半シーズンの振り返りをお願いしたいと思います。お二人の前半シーズンの総評をお聞きしたいです

石塚 関カレ(関東学生対校選手権)と日本選手権で、1500メートルを走らせてもらいました。ですが、自己ベストを超えることができなかったので、自分としては納得していないです。高校から大学に入ったときの環境の変化が大きく、競技面において対応するまでに時間がかかりました。夏休みでリフレッシュできて対応の仕方もわかってきたので、駅伝シーズンに生かせたらいいなと思います。

伊藤 僕は対校戦に5000メートルをメインに出させてもらったのですが、乗り切らずに前半シーズンを終えてしまいました。自己ベストの13分36秒を目指していたのですが、後半沈んでいくレースが多かったです。高校時代は自己ベストのペースで走っても、残りの2000メートルを一定のペースで走ることができていたのですが、大学では落ちてしまいます。自己ベストを100パーセントとしたときに、今の自分はその状態にまで上がってきていないなと思います。
 相対的に自分のレースを見ていると、良かった点よりも悪かった点が大きく出てしまうレースが多かったです。秋シーズンはトラックよりも駅伝がメインになってきます。駅伝でも自己ベストのような高みを目指すことができる場面が多くなると思うので、駅伝でも自分の強さを極めていきたいです。

――石塚選手は高校から大学への変化が大きかったとおっしゃいましたが、中でも時間の変化が大きいと思います。どう対応しましたか

石塚 前期はオンライン授業が多かったので、1時間の通学の間にオンデマンドを消化したりしていました。月曜は授業が多かったのですが、火曜以降の授業を少なくしたかったので、割り切って1日に8コマ受講したこともあります。忙しいなら忙しいなりに、勉強する日は勉強して、練習する時とはメリハリをつけていました。

――伊藤選手は長野から東京に移ってきて、気候や環境の面で大きな変化があったと思います

伊藤 夏の暑さが厳しいです。中学、高校は準高地だったのですが、東京は急に暑くなったので、体全体の調子が落ちてしまいました。ホクレン前から体が重く感じていたので、暑さへの対策が不十分であったと思います。そこで競技面で足踏みしてしまった部分はあるので、そこは誤算でした。

――夏合宿はどのような目標で挑みましたか

石塚 もともと1500メートルを中心にシーズン中はやっていたので、1500メートルのスピードを生かしつつ、後半シーズンに向けて長い距離に、ということでやっていました。普段はあまり走行距離とかは気にしないのですが、合宿中に関しては走行距離にこだわってやるようにしました。
 相楽さんから8月は月間825キロと言われていて、1年生は700キロでいいと言われていたのですが、そこで1年生とか2年生とか線引きされるのが嫌だったので、800キロ以上ちゃんと走って、850キロほどで一応ノルマはしっかり越しました。なおかつ一度の時間を長くして、箱根とかの走行時間に合わせて、ゆっくりですが、距離につながる練習をするようにしました。

――高校時代は10キロを越す距離を夏に継続して走ることはあったのですか

石塚 練習でジョグとかで15キロ走ったり、夏合宿だと20キロとかはあったのですが、大学入って35キロ走もあり、高校の時よりは伸びたという感じです。

伊藤 僕は逆に腹八分目に抑えようと意識していました。そもそも抑えざるを得なかったというのもあるのですが、これまでの高校までの合宿の経験で、積んで積んで、というのを繰り返してしまうと、涼しくなった秋くらい、ちょうど走りやすくなったくらいに調子がガクっと落ちてしまうことが高校1、2年の時に多くありました。それを含めて、今回は腹八分目で、故障もなく調子も落とさず、とにかく練習を継続させることを一番に考えて夏合宿取り組みました。
 ジョグの距離など減っている部分も多かったのですが、その分腹八分目でここまで調子が継続して、今上がりつつもあります。走行距離の劣っている部分はこれから補っていかないといけないのですが、腹八分目でやる部分はうまくできたかなと思っています。

――夏合宿の目標としては達成できたという感じでしょうか

伊藤 そうですね。距離自体はちょっと足りないかなって感じですが、練習内容自体は、ポイント練習も全部消化しましたし、最近はプラスアルファでもできるようになってきたので、まあまあいい感じかなという感じです。

――石塚選手もケガなはく合宿を終えられましたか

石塚 はい。全部ポイントとかもできています。

――夏合宿全体を振り返って感想としてはいかがですか

石塚 全体的な感想としては授業期間より合宿の方がいいなと思いました(笑)。 勉強やらなくていい、レポート書かなくていい、食事は出る、昼寝はできるし…

伊藤 (石塚は)ずっと寝てましたもん。間の時間ずっと寝てたので。合宿期間堪能してるなって思いながら見てましたけど(笑)。

――全体的な合宿の練習量としては高校と比べてどうですか

伊藤 練習の頻度的には高校の方が多いのですが、練習の量、走行距離だったりポイント質は大学の方が格段に上でした。

初めての大学駅伝に向けて

――駅伝シーズンに向けての話をお聞きします。改めて駅伝やロードに向けての意気込みを聞かせてください。

石塚 まずは一番直近の出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)が自分の持ち味であるスピードが活かせるところだと思っていて、特に夏合宿入っててだいぶ調子が上がってきているので、その調子を継続させてちゃんと6人に食い込み、優勝できるメンバーの一員になれたらなと思っています。

伊藤 僕はこれまで駅伝に苦手意識があったのですが、夏合宿でも単独走をやったり、駅伝の対策もしっかりやってきたと思っているので、区間に捉われず、どの区間でも実力を発揮できるようにしたいです。出雲でも全日本(全日本大学駅伝対校選手権)でも箱根(東京箱根間往復大学駅伝)でも、距離に少しずつ対応しながら駅伝シーズン迎えたいですし、やっぱり3大駅伝三冠という目標をチームで立てていて、だんだんチームの雰囲気とか走力とかも上がっている中なので、チーム内競争にしっかり食い込みながら、相乗効果で自分の力もしっかり上げていきながら駅伝を迎えたいと思っています。

――伊藤選手は上りに対しての苦手意識は無いのですか

伊藤 無いですね。高校の頃も僕と芽吹先輩(鈴木芽吹、駒大)で駅伝の上り区間担当でした。春の高校伊那駅伝の3区や、都大路(全国高校駅伝)の3区など、駅伝の上りを想定した普段のクロカンでの練習や、山の方に行って走るという練習も高校時代はあったので、上りの苦手意識というのは高校時代からあまり無かったです。

――石塚選手も上りが得意といった話が新入生対談の時にはありましたが、夏合宿終えてみていかがですか

石塚 なるべく上り坂とか上るようにしていて、平地でも、5区とか特殊区間でも対応できるような準備は一応少しずつ進めているような感じです。

伊藤(他の組が対談終わったのを見て)はええな(笑)、喋りすぎた、絶対俺が喋りすぎてる、100パー俺が喋りすぎ。

――具体的に狙っている区間や駅伝はありますか

石塚 とりあえず全部走れるのがいいのですが、出雲はスピードと駅伝やロードの適性という両輪あると思うので、優先順位的にはまずは出雲で自分の実力確認をし、その後でもう少し距離を伸ばしていって、箱根でしっかりメンバーに入ってチーム優勝に貢献できればなと思っています。

伊藤 僕は欲張って3大駅伝全部走りたいです。出雲で言えば前半区間は距離も短く、上半期主戦場にしていた5000メートルと近いものがあると思います。集団走や、2区や3区だったら前とか後ろとの距離が近く、わりとトラックでのレース感が生かせると思うので、直近の出雲では前半区間目指したいと思っています。
 また、さっきも言ったように上りにわりと得意意識があるので、そういったそのアップダウンが激しいコース、区間も積極的に狙っていきたいかな、と思っています。箱根は、5区は狙いたい、しっかり狙っていこうという気持ち半分と興味本位半分という感じなので、もう相楽さんとか駒野さん(駒野亮太長距離コーチ、平20教卒=東京・早実)に適性を見てもらって、ドンピシャで入れてくれればどこでもという感じではあります。

――単独走は結構得意ですか

伊藤 僕は高校の時は、前に人がいてペース作ってもらってとか、集団の中で駆け引きして、というのは得意だったのですが、単独走は苦手でした。ですが、最近集団走の練習を引っ張らせてもらったりとか、ジョグを一人でする機会が増えたので、最近は単独走も苦手意識はなくなってきてるかなという感じです。

石塚 自分は逆にほぼ単独走みたいな環境で高校時代までやっていたので、集団走の中で楽に走っていくのが苦手でした。大志とは逆で、ずっと引っ張るよりはいろんな人の後ろついて、人によって歩調とかそういうのが違うと思うので、いろいろなパターンに慣れながら、どうやったら楽に走れるのかなっていうのを研究したり、意識してやっていました。

――今後の大会での計画や目標はありますか

石塚 大会計画に関してはまだ相楽さんと詰められてないので、これからしっかり詰めていきます。直近では9月29日に出雲に向けた記録会があり、その頃にはメンバーは決まっているので選考とかではなく調整みたいな感じなのですが、自分はまだ5000メートルが14分08というベストで、それだといくら調子が良くても出雲は走れないと思うし、早めに5000のベストを出したいのもあります。そこでしっかりベストを出して調子を上げていってその後につなげたいです。
 11月にも記録会で1万を走る機会が多分あるので、初の1万になるのですが、長い距離に関しての適性や、今まで夏合宿やってきたことの確認をして、駅伝シーズン、全日本と箱根とかも狙っていきたいなと思っています。

伊藤 僕も同じ感じで、記録を狙うというよりかは、駅伝に向けて調整していくレースが多くなっていくかなと思っています。1万も高校の時に一回走っただけで、記録を狙いにいっていないので、多分一回は走るんじゃないかなと思います。

――今後の意気込みをお願いします

石塚 これからの自分の一番の弱点が授業との両立だと思っています。夏合宿とか夏休みですごく調子がいいぞと周りから思われてるのですが、それが授業が無かったからだと思われずに、ちゃんと夏休みに地力がついたからだと認められるように頑張って、しっかり3大駅伝走破して、駅伝3冠に貢献できればと思っています。

伊藤 僕はやっぱり距離への対応と駅伝力というか、駅伝への対応が一番求められていると思っています。出雲自体は高校駅伝と距離はあまり変わらないですが、全日本や箱根は距離が伸びると思うので対応力は求められると思います。
 また、上半期も高校時代もトラックメインの記録や結果が多かったので、やっぱり駅伝の区間の中で勝ち切れるような走りといったものが、僕自身の結果もそうですし、チーム全体の結果を見るにしてもすごく必要だと思います。なのでその二つと、最終的にはトラックも駅伝も含めて勝ちに強い選手、勝ち切れる選手を、これからのシーズンもそうですし、4年間全体見て目指していきたいなと思っています。
――ありがとうございました!
◆石塚陽士(いしづか・はると)
2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部1年

◆伊藤大志(いとう・たいし)
2003(平15)年2月2日生まれ。171センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部1年

番外編

「入学から半年経って」の部分に載せきれなかった話の続きを掲載します。

話を『自分の土俵に持っていこうとする』伊藤(右) 【早稲田スポーツ新聞会】

――寮内での1年生の雰囲気はどんな感じなのですか

伊藤 わりと和気あいあいとしていますね。もともと短距離も長距離も寮に入っている人が少ないので、その分団結力があるのではないかと思います。

――誕生日会のようなイベントは誰が企画するのでしょうか

伊藤 大体、僕とか杜真寿(千田杜真寿、スポ1=茨城キリスト教学園)がやることが多いですね。誰々が今日誕生日だからケーキ買いに行こうってなりますね。

――それは自然にはじまったものなのですか

伊藤 そうですね。もとは短距離の海くん(池田海、スポ1=愛媛・松山北)の誕生日を祝った時が最初だと思います。

石塚 自分は4月生まれだったので、その時はどのように進んでいたかはわかりませんでした。

伊藤 海くんと石塚の誕生日では、僕が海くんを呼び出しました。その時は「ちょっと当番のことで話があるから食堂に来て」って言いました。海君はとても怯えていましたね。ちょうど、その日海君が寝坊していたので、「俺、怒られる」って勘違いしていました。そして、ケーキを出して、サプライズをしました。

――石塚選手は実際に誕生日をお祝いされてどうでしたか

石塚 うれしかったですね。祝われた時はびっくりしました。全体での初めての誕生日会だったので、先ほどの池田海くんの時のようにびくびくしながら行ったら、皆が誕生日ケーキを持っていました。皆に「おめでとう」って言われた時は、いい学年だなと思いました。

――お互いの面白いエピソードとかはありますか

石塚 伊藤はずっと喋っているので、一回どの分野なら喋れないだろうかと実験したことがあります。伊藤はディズニーについて知らないので、ディズニーの話をしようということになりました。

伊藤 その時、僕を含めて4人の間で、アラジンの実写版の映画の話をしていました。僕はアラジンの実写版も、アニメすら見たことがなかったので、話を聞いていたんです。でも、すかさず「アラジンってサウジアラビアとかのアラビア系の話じゃなくて、中国の話らしいよ」って言って、自分の土俵に持っていこうとしました(笑)。
石塚 開始2分で終わりました。大志を置いてきぼりにするつもりが、こっちが置いていかれました(笑)。

――ちなみに伊藤選手はアラジンを見ましたか

伊藤 一切見ていないですね。基本的に映画は見ません。暇になっちゃって、途中で飽きちゃうんですよ。映画館とか、他の人とであれば見ることができると思いますが、一人だとあまり見ないですね。

――伊藤選手がずっと喋っていて、食べ終わるのが遅いと聞きましたが

伊藤 話すのが好きなんですよね。話してないと気まずくないですか。僕は無言が耐えられないので、食べている時でも無言にならないようにしています。いつも居残り飯ギリギリになってしまいます(笑)。

石塚 食べるのが遅いというより、食べる量が多く、ずっと喋っているので遅いんだと思います。いつも喋るなと言っているのですが、それができていなと思います。

伊藤 黙ったら死んじゃいます(笑)。

石塚 同じ学年の和田(悠都、先理1=東京・早実)が大志よりも食べるのが遅いんですよ。しゃべらないのに遅いので、伊藤とは違ったタイプなのだと思います。

伊藤 僕は喋り以外の行動が多いので、黙って食べれば早いと思います。

――入学以降、大学生活には慣れましたか

石塚 前期は何とか耐えることができました。必修が多く、忙しかったですけど、単位は全て取ることができました。

伊藤 僕は所沢キャンパス勢なので、授業に関しては大丈夫でした。1回、月曜2限のチュートリアルイングリッシュで寝坊して、授業3分前にパソコンを開いたことがあります。

石塚 僕は月曜が1限から5限まで対面で授業があり、全て行きました。なので、月曜2限で文句は言わないでほしいです(笑)。

伊藤 春学期、石塚は必修が多かったのですが、僕はほとんどありませんでした。来期は自分の興味のある分野を勉強してみたいと思います。

――石塚選手は後期の月曜日は空きそうですか

石塚 対面は無くなると思います。天国ですね。通学がないだけで、全然違います。

――たくさんお話を伺いました。ありがとうございました!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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