Bリーグマネジメントカップ 2020 分析レポート 第6回:ストコロナにおけるクラブ運営とBリーグのポテンシャル
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こうしたリーグ運営、いわゆる「密」を避ける動きはある程度定着すると考えられ、現在のゲーム開催形式が今後も一定期間は続くことが予想されます。ポストコロナにおいては従来のリーグ運営とコロナ禍による急激な変化がミックスされたBリーグのニューノーマルが形成され、クラブの運営やクラブに関係する様々な立場の人や企業の関わり方を大きく変える可能性があります。今回は、ポストコロナにおけるクラブ、あるいはクラブに関係する様々なステークホルダーのBリーグへの関わり方の変化について考察してみたいと思います。
「密」を回避する動きがクラブの経営に与える影響
図1 B1クラブ営業収入平均の内訳(2017-18〜2019-20年シーズン) 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
また、ポストコロナにおいても「密」を回避する動きが一定期間継続することが見込まれることから、今後も十分かつ安定的な入場料収入の確保は難しくなるでしょう。また、アリーナの入場人数制限は、選手やクラブとファン・ブースターの物理的な接点を減少させるため、関係が弱くなることも見込まれます。つまり、今後のBリーグにおいては、入場料に頼らない長期的な収入源を模索しつつ、選手やクラブとファン・ブースターの接点を維持すること、とりわけ足元のクラブ経営においては、収益化も視野に入れた「試合以外」のコンテンツをいかに充実させるかが重要になってくると考えられます。
コロナ禍において「試合以外」のコンテンツを充実させるクラブの動き
図2 GO BREX!! グルメパス 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
宇都宮はさらに、「VR BREX WORLD」という取り組みでバーチャル空間にアリーナを再現し、デジタルでのブースター交流のプラットフォーム創出にもチャレンジしています。このように、地域に発信力があるクラブが地域の産業を活性化させるプラットフォームとなるケースは、「試合以外」のコンテンツによって、地域産業の活性化と収益化を両立させ得る好事例といえるでしょう。
次に、「試合以外」で選手とファンの接点を作る取り組みをみてみましょう。レバンガ北海道など複数のクラブでは、クラブ・所属選手がオンラインサロンを運営し、クラブ・選手とファン、ファン同士がオンラインでもより近い距離で交流できる空間を作っています。また、川崎ブレイブサンダースは、クラブのYouTubeチャンネルを活用し、動画を通じて多くの人が楽しめるようなコンテンツを提供しています。
従来、クラブ・選手とファン、ファン同士の接点はアリーナが中心でしたが、現在のリーグ開催形式において、アリーナでの接点は激減しています。その減少を補完する役割として、オンラインコンテンツはより一層の注目を集めることになりました。人々の生活にオンラインツールが急速に浸透している社会の流れからみても、オンラインコンテンツの注目度の高まりは必然といえるでしょう。
しかし、生み出す価値はそれだけではありません。アリーナで見る選手はゲームに臨むアスリートですが、オンラインコンテンツでは、各選手の人としての個性が強く出ます。その個性の露出は、選手の新しいイメージを形成し、今までになかったファンコミュニティや選手の活躍の場を創造するきっかけとなります。さらに、生み出した新しいファンエンゲージメントは長期目線でクラブの収益につながる可能性もありますし、収益化につながれば、クラブや選手の価値をさらに高めることもできると思われます。
以上の事例から、クラブは、「試合以外」のコンテンツを充実させることで、長期的な収益化を視野に入れつつ、地域やファンのプラットフォームとして機能し、興行的価値に加えた新しい価値創造を目指していくことが重要になると考えられます。
「試合以外」のコンテンツの充実は新パートナー参入の可能性も広げる
図3 プロスポーツが持つ価値の分類 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
ポストコロナにおけるBリーグのポテンシャルとBリーグへの関わり方
今後のBリーグの発展にはクラブの社会的価値にも目を向けていくことが不可欠です。クラブ関係者には、その価値を最大限生かした運営を目指してもらいたいと考えます。クラブに関わる人々や企業・団体にはBリーグ、ひいてはスポーツコンテンツの社会的価値を感じ、それぞれの関わり方でBリーグを応援していってもらいたいと思います。
9月28日10時にはJリーグマネジメントカップ2020のリリースを予定しています。どうぞお楽しみに!
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