Bリーグマネジメントカップ 2020 分析レポート 第5回:FM(競技面)とBM(経営面)の関係性分析
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この分析では、それらの変革や環境の変化によって形成された各クラブのPL(損益計算書)構造の特徴を洗い出し、BMとFMの両立度や、売上高成長率の評価を行いました。
まず、各クラブのPL構造を定量的に評価してクラスタリングによってグループ分けをすることで、BMとFMが両立できているクラブにはどのような特徴があるのかを分析するとともに、コロナ禍に関する収益への影響を最小限にできているクラブには、どのようなPL構造の特徴があるのかについても考察していきます。
PL構造クラスタリングの実施
本分析では上記のPL構造の情報を利用した階層的クラスタリングによって、B1所属の各クラブを分類しています。階層的クラスタリングとは、最も似ている要素同士を最初につなぎ合わせてクラスター形成していき、最終的に1つのクラスターに集約されるまで結合を繰り返すクラスタリング方法です。図1が、過去3シーズンにおいてB1所属クラブをクラスタリングした結果になります。
図1 各シーズンにおけるB1所属クラブのクラスター分類状況 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
残りの〔2〕〜〔4〕のクラスターでは、先述の1高スポンサー収入・高人件費型のような特定の収益・費用項目への過度の依存は起こっていないクラスターで、ここではバランス型と名付けています。
〔2〕バランス型(その他収入重視)は、例えばアリーナ運営による収益源を有している大阪に代表されるような、興行関連以外での収益を確保できているクラブが分類されています。
〔3〕バランス型(物販収入重視)は、物販収入(試合会場での飲食・グッズ販売や、オンラインショップでの販売)を多く確保できているクラスターになります。例えば川崎の場合、2018年シーズンよりDeNAの子会社による運営になり、プロ野球チーム横浜DeNAベイスターズでの試合運営ノウハウを生かしたグッズ販売などで、物販収入を大きな収益源として確立することができています。
〔4〕バランス型(入場料収入重視)は、試合興行による入場料収入を収益源の要とするクラスターです。例えば宇都宮(2019年にチーム名変更、2018年以前のシーズンでは栃木)では、東武鉄道との連携企画であるラッピングトレインの運行等でクラブの注目度を上げるなどのBM施策により、入場料収入の向上につなげています。
BM・FMの両立ができているクラブはその他収入を重視した事業多角化を推進
図2 リーグ勝率×BMC順位における各シーズンのクラスターマッピング図 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
この結果より、特定の収益に依存せずに、その他収入に代表されるようなビジネスの多角化に取り組んでいるクラブは、中長期的にBMとFMの両立が可能になると示唆されます。
売上高が成長しているクラブではオフライン収益減をカバーできるオンライン収益が成長
図3は、2019年シーズンにおける各クラスターの平均売上高成長率(対前年度比)を可視化したものになります。これを見ると、〔2〕バランス型(その他収入重視)と、〔4〕バランス型(入場料収入重視)のクラスターが、平均してマイナスの成長率になっていることが分かります。一方で1高スポンサー収入・高人件費型、〔3〕バランス型(物販収入重視)のクラスターでは、逆に大きく売上高を伸ばしていることが分かります。〔1〕高スポンサー収入・高人件費型クラスターでは、シーズン開幕前に確定したスポンサー収入が、試合減少でも削減されず維持できたこと、〔3〕バランス型(物販収入重視)クラスターでは、試合開催できない中でもオンラインショッピングなどでグッズ販売ができたことで、それぞれ売り上げを伸ばした可能性があります。
図3 2019年シーズンにおける各クラスターの平均売上高成長率 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
BMCの総合観点では〈バランスの取れた収入構成モデル〉が推奨されていますが、今回のように試合開催ができないといった特別な状況下では、入場料収入やアリーナ運営収益などのオフライン収入の減少リスクを、オンラインの物販販売網でカバーできたようなクラブが成長できているという結果になっています。
まとめ:危機的状況下での収益の支えはオンラインビジネスでのマネタイズ
また一方で売上高成長率に着目すると、〔3〕バランス型(物販収入重視)のようにオンラインでも収益を上げることが可能なビジネスモデルを組んでいるクラブが、シーズン中断のあった2019年のような危機的状況でも収益を伸ばすことができているのではないかという示唆が得られました。
Bリーグでは、「スマホファースト戦略」や、リーグ創設に際する全クラブの公式SNSアカウント開設の推進など、積極的なデジタルマーケティング戦略を行っています。今後も、さらなるデータ活用や効果的なプロモーションの実施でオンラインのマネタイズにつなげていくことにより、オンラインとオフラインの両輪で収益を得ることができるようになると考えられます。それにより、2019年シーズンのような試合開催ができない危機的状況下でも、興行収入減に対するリスクヘッジを基盤とした確固たる収益を確保できる財務体質を実現し、サスティナブルな成長を達成してほしいと思います。
次回は、ポストコロナにおけるクラブ運営とBリーグのポテンシャルについて解説します。お楽しみに!
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