廣瀬俊朗コラム「廣瀬俊朗と車いすラグビー」

RUGGERS(ラガーズ)
チーム・協会

【廣瀬俊朗】

RUGGERSオリジナルコラム

筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事
スクラム・ジャパン・プログラムアンバサダー

車いすラグビーに対する想い

 今回は、車いすラグビーに対する僕の想いと、先日閉幕した「東京2020パラリンピック」について書きたいと思う。

 前回の2016年リオデジャネイロパラリンピック、僕は現地に行って生で観戦することができた。2012年ロンドン大会が4位で、それ以上の結果を目指していた大会。順調に勝ち進んだものの、準決勝で惜しくも敗戦。3位決定戦はカナダに快勝して銅メダルを獲得した。負けてから気持ちを切り替えて試合に臨み、勝利した日本代表の選手を見ていてめっちゃ感動した。僕と同い年でその当時コーチであった三阪洋行は泣いていた。試合後にこちらに来て声をかけてくれた。
 「こっちも新たな歴史を作ったで!!」
 前年にラグビー日本代表はワールドカップで南アフリカに勝つなど新しい歴史を築いており、そのことを意識しての言葉で、一層感動した。大会前から「新しい歴史を築く!」と言っていたメンバーが、見事に有言実行した瞬間であった。本当に良いシーンを見せてもらって、最高の瞬間であった。
 現役を引退して、少し燃え尽きていた僕自身にとっても、改めてスポーツの素晴らしさを感じる時間となった。また、競技だけでなく音楽も含めてアリーナ全体が盛り上がっていて、屋内スポーツならではの良さや、ブラジル特有のノリの良さもあって、より深く気持ちが興奮したことを覚えている。

 リオパラリンピックが終わって以降、僕は車いすラグビーの様々なイベントに出席させてもらうことが多くなった。色々な選手とお会いして、皆さんそれぞれここまでの歴史や年齢、障がいの違いもあって、勉強になることばかりであった。
 池さん(現日本代表キャプテン池透暢選手)に「これまで大変なことが多かったんじゃないですか?苦労していませんか?」と聞いたら、「そんなことないですよ。今あることでどうやってやるかを考えるのが大事なんで、大変と思ったことはないんです。」ということを教えてもらった。とても胸に響いた。今ある環境で工夫してベストを尽くすこと、自分の気持ち次第で色々なものの見え方も変わってくるという考えを聞き、どこか一方的に思い込んでいた自分がいることに気付き、恥ずかしくなった。
 他にも国内の大会を千葉まで見に行ったり、日本代表の合宿に参加したりと共に活動をしてきた。その過程で、車いすラグビー協会からアンバサダーにも就任させていただくことになった。

 活動の一環として合宿に参加したとき、一コマのセミナーを実施させていただくことがあった。
 合宿初日の練習を見て、少し緊張感がないなと思った僕は、選手たちに正直な気持ちをぶつけた。その時に選手は色々な感情があったと思う。しかし、僕の気持ちを受けて、色々と改めて考えてくれた。少しでも良いキッカケになったらと思って、感じたことを正直に話したが、ミーティング後に池さん、池崎さん、乗松さんとも距離が近くなり、ヘッドコーチのケビンにも良い時間になったと言って喜んでもらえて一安心した。

 いよいよ2020年、「応援するぞ!!」と思っていたらコロナの問題が起き、パラリンピックは1年延期になった。それ以降、重症化リスクへの懸念や、車いすを使った質の高い練習が可能な施設を借りられない事態などで、チームはかなり苦しい状況に追い込まれた。ケビンは海外にいたので、オンラインでコーチングをして合宿をするなど、工夫して準備していた。
 2021年を迎え、パラリンピックの開幕直前に池さん・池崎さんにお会いしたが、大会をとても楽しみにしている一方で、対外的な試合を出来ていないので、これまでの準備が良いのかどうか実感できないこともあり、少し不安を感じられていた。練習試合をしないまま本番を迎えると思うと、とても緊張するだろうなと思ったので、僕自身もソワソワしていた。

 そしてついに始まった東京2020パラリンピック。大会の振り返りは、後編で書きたいと思う。
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著者プロフィール

「RUGGERS(ラガーズ)」は、日本ラグビーフットボール選手会が運営主体を務め、ファンと選手がつながる新しいラグビーアプリ(メディア)です。トップリーグ選手の投稿や、ラグビー関連の記事をまとめています。オリジナルコラムや動画も配信しています。アプリもぜひご覧ください。

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