【浦和レッズスペシャルインタビュー】小泉佳穂がC大阪戦で叶える遠き日の夢。そして、次の夢
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そう話しながら、小泉佳穂は子供のように目を輝かせていた。
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その後も小幡直嗣コーチ兼通訳とサッカー談義に花を咲かせる。徳島ヴォルティス時代からのリカルド ロドリゲス監督の代弁者と意見を交わす。その談義は敢えて自分たちで終了の合図をしない限り、いつまでも続きそうだった。
FC琉球でチームメートだった小野伸二と同じ18番を背負い、レッズの攻撃をコンダクトする。浦和レッズ加入1年目、J1リーグ初年度とは思えないプレーぶりでファン・サポーターの心をつかんだ。
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「僕は理屈で考えるタイプなんです。理屈で考えて、理屈で詰める。理詰めで詰めて詰めて、自分がやらないといけない状況に追い込んだり、正解を見つけてから動きたいと思うタイプです。『四の五の言わずにやればいい』と言う人もいますし、僕自身そう思うこともあります。でも性格上、無理なんですよね」
それでも、次の対戦相手であるセレッソ大阪でプレーする坂元達裕について問われると、表情が変わった。
前橋育英高校時代の小泉佳穂(8番)と坂元達裕(11番) 【本人提供】
言い方を変えれば、互いにFC東京U-15むさしからFC東京U-18には昇格できず、また前橋育英高校からプロ入りはできなかった。その後、坂元は1年、小泉は2年と年数に違いはあれど、J2リーグのクラブを経由してJ1リーグのクラブに移籍したことも同じ。サッカー選手として、非常に似通った境遇だった。そしてそれは、決して順風満帆とは言えなかった。
「だから、大学まではまさか自分たちがJ1リーグで試合に出て対戦できるとは思っていませんでした。大学のときですらリアルには思えませんでしたし、中学、高校のときは夢にすら思っていませんでした」
2014年に浦和レッズユースと対戦した時の小泉佳穂(左)と坂元達裕(右) 【©URAWA REDS】
そして2年目、小泉よりも一足先にJ1リーグに活躍の場を移した坂元は、小泉が琉球でレギュラーになろうとしていた2020年夏にはすでに開幕から先発出場を続けていた。そして小泉がプロ3年目で浦和レッズの一員になった数ヶ月後の3月18日、坂元は日本代表に選出された。
FC琉球時代の小泉佳穂とモンテディオ山形時代の坂元達裕 【©J.LEAGUE】
「去年の時点で坂元は近いうちに代表に入るだろうと思っていました。なので、驚くこともありませんでした」
妬みはなかった。嫉妬するような希薄な間柄ではない。純粋に祝福できた。追いつきたいという気持ちはあったが、それもライバル心に心を燃やしたわけではなく、サッカー選手としてのピュアな感情だった。心から祝福できた。むしろ、自分自身がうれしくなった。
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坂元が日本代表に初選出されたわずか3日後の3月21日、レッズは埼玉スタジアムで川崎フロンターレと対戦した。日本代表を経験した選手が複数存在する前年のJ1リーグ王者は、チームや個人の今の力を測る一つの物差しとも言えた。
それまでの約1ヵ月で経験したJ1リーグのスピード感や強度はJ2リーグでは味わえないレベルだったが、リカルド ロドリゲス監督の戦術が自分に合っていたこともあいまって、1ヵ月ほどで順応してきた手応えはあった。
前年王者に対してもチームとして意識を統一させ、前半は攻守ともに迷わずプレーできた。それでも42分に失点すると、後半には失点を重ねた。終わってみれば0-5。大敗だった。
「僕はトップ下をやっているので僕自身と、相手の脇坂(泰斗)選手や田中 碧選手、小林 悠選手との差がそのままスコアに出たと思っています」
メディアの質問一つひとつに対して、時に腕を組んでこうべを垂れ、時に天を仰ぎ、深く考えながら答えを導き出していた小泉は、そう言って唇をかんだ。日本代表に選出されている選手たちとの差を痛感した一日だった。
3月21日の川崎フロンターレ戦 【©URAWA REDS】
結果は半年前とは大違いだ。ならば、差は縮まったのか。そう問われた小泉は、すぐにかぶりを振った。
「前回は個人としての差があり、川崎の方が個の力が上だったので大敗しました。個人の技術が半年で劇的に伸びることはほとんどありませんし、差が縮まったとは思っていません」
レッズの一員として、J1リーグで半年以上戦い続けたことで、細かいところでの成長は実感している。言葉で説明するのは難しいことだが、成長しているのは間違いない。だが、それが川崎の選手たちとの差を埋めるほどのことではないと自覚している。
では、何が違ったのか。
「チームとしての戦い方でカバーできるところまでは来ているという実感です。チームの完成度には川崎戦や横浜FC戦で手応えを感じています」
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その評価を小泉自身は「少し過剰」と表現する。日本代表に推す声は耳に届く。日本代表に選ばれたいと思っている。ただ、「海外組込みの代表だと入れると思わない」と淡々と話す。自信がないわけではないが、その距離感を見誤りはしない。まるでもう1人の自分を俯瞰して見ているかのように。
そして、川崎の選手たちがそうであったように、坂元は小泉にとって、日本代表との距離を図る物差しの一つになるだろう。
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「個人的な感情で言えば、一番負けたくない相手です。お互いにしっかりと完全燃焼できる試合になればいいなと思っていますし、自分のいいところを出し切る試合にしたいというのが個人的な感情です。ただ、実際に試合が始まったら、勝ち点3を取りたいですし、そのために何をするのかというところはどんな試合でも変わりません。試合が始まってしまえば、実際にマッチアップするときに意識するくらいで、それ以外はただただ勝つためのプレーをすることになります」
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だが、それは新たな夢の始まりでもある。その夢とは、坂元が初めて日本代表に選ばれた際に思ったことであり、今でも思うこと。もしかすると、C大阪戦が終わった後に強くなる思いかもしれない。
「その次の夢は一緒に日本代表でプレーすることです」
ある日は夢ですらなかったことを叶え、83日ぶりの埼玉スタジアムでの試合で完全燃焼する。そして今はおぼろげな次の夢の輪郭を少しはっきりとさせるべく、小泉はC大阪戦のピッチに立つ。
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