私のミッション・ビジョン・バリュー2021年第4回 牲川歩見選手インタビュー「人に感動を与える」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2021年第4回は牲川歩見選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.MVVは昨年作成しましたか?
「昨年は月に1回ぐらい面談をして、MVVを作成しました。今年は3回面談をして、昨年作成したMVVをさらに深く掘り下げました」

Q.面談を通して、自分の考えや思いを引き出し、言語化してみて、どのように感じましたか?
「自分の目指しているものに対する道のりや行動指針を明確にできたという感覚があります。ただ、そこに向かう難しさもあらためて感じました。僕のスローガンは『人に感動を与える』なんですけど、どうすれば、それができるのか。僕のプレーを見て感動してもらったり、チームが勝って感動してもらったり、人によって感じ方は違うと思うんですよ。自分がサッカーを通して、どうやって感動してもらうかについてすごく考えました」

Q.とはいえ、その「考える」という行為自体に意義があると思います。
「そうですね。自分の中でも考えが整理されました。いい機会になりました」

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Q.MISSIONについて聞かせてください。「サッカーを通して夢や目標を達成することで、人々に夢や感動を与える」とありますが、どういう思いでしょうか?
「僕の過去の出来事が大きく影響しています。今までオリンピックアジア予選や、U-17ワールドカップなど海外でプレーする経験をさせてもらったことがあります。その時、一つのプレー、一つのコーチングなどで言葉や文化が違う国の方々から拍手をもらったり、称賛していただいたことがありました。そうやって、人々に影響を与えられることは素晴らしいと感じたので、この言葉を選びました」

Q.牲川選手が誰かのプレーに感動した経験はありますか?
「磐田時代に(川口)能活さんとチームメイトだったのですが、元々すごい選手だと分かってはいたものの、実際身近な存在になってあらためてそのすごさを感じました。外から見ると、どんな努力をしているのか、どんな準備をしているのか、どんな考えを持っているのかは分かりませんが、一緒にプレーして、準備の質や考え方を知ることができて、影響を受けました。すごくストイックですし、無駄がないんです。そして、年齢とも勝負しながら、目の前の試合で結果を出していくというプロフェッショナルな姿に感銘を受けました。能活さんの姿勢を今でも見本としています。ピッチ外の立ち居振る舞いに関しては、背負っているものの違いを感じましたね」

Q.これからは川口選手に感じたことを周りの選手や見ている方に伝えていく役割があるということですね。
「そうですね。水戸には(本間)幸司さんをはじめ、いい先輩が揃っているので、今はその方たちの背中を見ながら、そして胸を借りながら、試合に出場させてもらっています。いい先輩がいることが自分にとって大きなアドバンテージになっていると思います」

Q.感動を与えるために日々を大切にするという思いがあるということですね。
「そうです」

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Q.次はVISIONをお願いします。「夢に向かって希望を持てる社会」と書いてありますが、どういう思いが込められているのでしょうか?
「自分は今まで夢やなりたいと思ったことに対して、エネルギーを持って取り組むことができました。やっぱり、どんなに苦しい状況でも思いが強ければ諦めずにやれると思います。自分のプレーからそういうことを感じ取ってもらえればと思います。そして、一人一人が行動を起こしてくれたら、もっとエネルギッシュでいい社会になっていくと思います。僕はサッカー選手として注目される側の立場にあるので、見てくれる方々にいかにエネルギーを与えられるかを意識することはすごく大事なことだと思っています。みなさんが夢に向かって進むための力に少しでもなれればうれしいなと思っています」

Q.牲川選手自身が夢に向かって「エネルギーを持ってやれた」のはなぜでしょうか?
「再び能活さんの話になりますが、僕は能活さんのようになりたいと思って磐田のアカデミーに入りました。ただ、アカデミーとトップでは身近に感じながらも遠い関係でもありました。その中で徐々に近づいていく実感を抱きながら取り組めたのが大きかったですね。その思いが一つ一つ壁を乗り越えるエネルギーとなりました。今では全国のいろんな地域にJリーグクラブがありますよね。どのクラブもサッカーを通して、地域に貢献しているので、自分もそこに貢献して、地域の人たちに夢を与えられるような存在になりたいと思っています」

Q.夢をかなえるための過程がすごく大切だと思います。牲川選手は今は正GKとして活躍していますが、昨年リーグ序盤は失点に絡むミスをすることがありました。でも、そこを乗り越えて今があるんですよね。失敗を受け止めて、しっかり前を向いてチャレンジし続けた結果だと思います。その経緯にものすごく価値があると思っています。
「昨年からチャンスをいただいていますが、自分が思ったような結果を出せなかったことが多かった。でも、そこで感じたものをポジティブに受け取れたことが大きな要素だと思います。また、自分は運がいいことにそれをピッチで発散する場を与えてもらうことができました。だからこそ、頑張れました」

Q.GKはミスが失点につながるポジションです。その責任を背負いながらも、チャレンジしていく大切さを牲川選手のプレーは多くの人に伝えていると思います。
「自分で言うのも恥ずかしいですが(笑)、水戸ホーリーホックとともにこれからJ1やアジアと舞台が大きくなればなるほど、そういうことを知っていただけると思うので、もっと頑張って行きたいと思います」

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Q.VALUEについて聞かせてください。「ボジティブな思考でいる」「他人の意見に耳を傾け、その人の考えを学ぶことで自分の人生に活かせるようにする」「世界のサッカーを見て学ぶ」「向上心を人一倍持つ」とあります。
「自分の経験談から4つの言葉を選びました。GKというポジション柄、ミスが失点や勝敗につながってしまう。でも、プレーする中で迷ったらダメですし、オドオドしてプレーしていたら仲間からの信頼を得られない。ミスが起きても、試合に勝てばいいという心構えでプレーするようにしていますし、練習でミスをしてしまっても次にうまくなるだろうと切り替えるようにしています。それはGKとして大切なことだと思っています。最初は簡単にはできないと思いますが、習慣づけて取り組んだら、大きな力になると感じています。なので、『ポジティブな思考でいる』ことを心がけています」

Q.「習慣づけ」はいつ頃されたのですか?
「沼津でプレーしていた時ですね。試合に多く出してもらえていた中、チームが勝つためにどうすればいいのかをよく考えました。GKとして失点したら、すごく悔しいし、落ち込むんですけど、落ち込んでいてもしょうがないということを試合に出て感じることができました。反省は試合後に行えばいいという切り替えが無意識にできるようになりました」

Q. 「他人の意見に耳を傾け、その人の考えを学ぶことで自分の人生に活かせるようにする」についても聞かせていただけますか?
「僕自身、磐田をはじめ、いろんなクラブでプレーする機会を与えてもらいました。チームによって求められることが変わってくるんですよね。その中で一番個の力がある人が試合に出て活躍していると感じたので、この言葉を選びました」

Q.一緒にプレーして印象に残っている選手はいますか?
「鳥栖時代にチームメイトだった林彰洋選手ですね。林選手はすごくコミュニケーションを取るのが上手なんですよ。当時、マッシモ・フィッカデンティ監督が就任1年目だったのですが、林選手は監督から要求されたことを掘り下げながら、自分のプレーとすり合わせることをすごく熱心に行っていたんです。GKは守備の構築やゲームマネジメントに大きくかかわる要素がありますが、林選手はいち早くそこを自分のものにしていました。当時の自分に一番足りなかったところですし、今も変えていきたいと思っているところでもあります。コミュニケーション能力というより、読解力に近いですかね。林選手はそこにすごく長けていて、自分の中で整理して迷いなくプレーすることができていた印象です。人の話を聞いて、自分に吸収できる選手は早く活躍できるようになる。そこは選手としてすごく大事な要素だと思います」

Q.「世界のサッカーを見て学ぶ」は?
「自分が好きなことを入れました(笑)。DAZNでよく海外サッカーを見るんです。特に最近開幕したプレミアリーグをよく見ます。23時キックオフの試合は生で見ちゃいますね」

Q.「向上心を人一倍持つ」は?
「自分が成長していく過程で一番大事な心の持ち方だと思っています。勝負の世界では人に勝つことも大事だと思うので、よりハングリー精神を持っていきたいと思い、この言葉を入れました」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「人に感動を与える」ということですが。
「特に今年はこのスローガンに関して、“もっと”という思いが強いです。自分たちがこのコロナ禍でどれだけ多くの方に感動を与えることができるか。特に水戸を応援してくれる方々に感動を与えたい。それは結局、結果だと思うんです。そう考えると、今の順位や結果はまだまだと思うところが大きいです。リーグ前半戦、負け試合が多かったことが悔しかった。ここから挽回して、J1昇格に届くように力を出していきたいと思います」

Q.どういう時に「感動を与える」ことができると思いますか?
「困難に打ち勝った時。そして、誰もが達成しないようなことを達成した時。その2つが大きいと思います。自分としては結果にこだわりたいですし、チーム全員の力で水戸の歴史に新たな何かを残したいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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