【特集】ビーチ全日本選手権ベスト8記念! 金蘭会コンビ対談 早大バレー部・中澤恵×秋重若菜

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

 今年の春、高校バレーファンなら誰もがその名前を知る二人のスパイカーが早大で再び同じコートに立つことになった。中澤恵副将(スポ3=大阪・金蘭会)と秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会)だ。ともに2019年の春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)を制したコンビの活躍の舞台は室内に留まらず、7月15日・16日に開催された全日本ビーチバレーボール大学男女選手権大会にペアを組んで出場し、ベスト8の好成績を残した。今回はそれを記念して同大会を振り返っていただくとともに、高校時代のエピソードや秋季リーグ(秋季関東大学リーグ戦)への意気込みを伺った。

早稲田スポーツ新聞会(取材・編集 平林幹太、新井沙奈)

「早稲田に来てくれたのがとても嬉しい」

高校時代を振り返る中澤副将 【早稲田スポーツ新聞会】

――まず、お互いの紹介(他己紹介)をお願いします

中澤 金蘭会で一緒にやっていたのでお互い知っている状態でスタートしましたが、若菜(秋重)は高校のときと変わらずすごく元気で人懐っこいです。バレーの時だけじゃなく日常生活でも「どこか行きましょう」とか誘ってくれる明るい性格です。1年生の中でもバレーの経験は様々なのですが、若菜がいるから仲良くやっているのが自分たちからもよく分かります。コートの中でもすごく頼りになって、先輩にもよく声をかけてくれて、プレーでもミスが少ないです。

秋重 めぐさん(中澤)は結構第一印象から明るいイメージがあると思うのですが、中身を知ってもあまりそれは変わらなくて。メリハリがはっきりしている人で、バレーのときは集中してやるけど、バレー以外のときは切り替えて楽しく過ごすみたいな(笑)。すごく親しみやすい人です。

――秋重さんは入学して初めての学期が終わりましたが、大学生活はいかがですか

秋重 大学生活ですか。なんというか周りの人たちがすごく賢くて、頭の良さの差が出ているなというか(笑)。楽しいです!楽しいのですが、周りが賢いなあという感じです。

――1年目の大学バレーですが、高校までのバレーと違いを感じる部分はありますか

秋重 全体のプレーのレベルとしては金蘭会よりどうしても下がってしまっているかもしれませんが、早稲田には勢いがあって、志を高くもっている人が多いなと感じています。練習の充実度という点では、差を感じていません。

――ポジションが高校までと変わりましたが、その部分についてはいかがですか

秋重 高校ではミドルブロッカーをやっていたのですが、めぐさんと入学前からいろいろと話をしていて。私が対角に入るかもしれないということで、引退後や卒業後に少しサイドの練習をしていました。なので、ポジションが変わったからといって不便というか違和感があるということは特別なかったです。

――中澤さんから見て、1年生たちの雰囲気はいかがですか

中澤 関西出身が多いのもあって、若菜が馴染みやすいというのはあると思います。仕事をするにも誰かに任せるのではなく全員でやっていますし、コートに入っているかどうかで分かれたりせず、よくまとまっていると思います。若菜に限らず全員が頼もしいです。

――今年から副将に就いて意識など変わったことはありますか

中澤 自分は今まで、下級生ながら先輩たちに少し指示を出したりすることがあり、他の選手の悪いところにばかり目が向いてしまっていました。ですが上級生になっても下級生の悪いところばかりを指摘していると後輩がやりづらくなってしまうので、良いところを指摘するとともにチーム全体をみてその選手に求める部分を考えるようになりました。チームの雰囲気も個人の気持ちもポジティブにやっていけるように、声がけや練習づくりをしていこうという考えに大きく変わりました。

――お二人とも同じ金蘭会高校の出身ということですが、高校の頃はどんな関係性でしたか

中澤 金蘭会は比較的新しい学校なので、あまり上下関係もなく1年生と3年生の距離も近かったです。合宿などでもいっぱい話したりしました。1年生もがつがつコートに入っていけるのが強みの学校でした。

秋重 高校のときは普通の先輩後輩という感じでした。特別仲が良かったわけでも悪かったわけでもないので、優しい先輩という印象でした。

――高校で1年間一緒に戦った中で、特に思い出深い試合はありますか

中澤 自分が3年生の時、秋重はレギュラーではなく1年の守備的な選手が入っていました。私の最後の春高バレーの準決勝で八王子実践高校とあたったのですが、そこで勝つには攻撃力が必要になるということで秋重がスタメンに起用されました。3セットの間コートに立ち続け、ストレートで勝利に貢献してくれました。急に回ってきた出番で思い切りプレーができる選手だったので、1年生の頃から存在感がありました。そこから3年間成長して早稲田に来てくれたのがとても嬉しく、今も楽しくバレーができています。

秋重 やっぱり同じで、めぐさんたちが3年生で優勝した時の春高バレーです。自分が初めてコートにしっかり立って試合をした舞台だったのですが、3年生の偉大さを体感できました。やはり特別印象に残っていますね。

風・疲労…「今まで何気なく出していたパスが」

ボールをつなぐ中澤副将(右)と秋重 【部員提供】

――ではここからはビーチバレーについてお伺いします。はじめに、これまでビーチバレーの経験はありましたか

秋重 私はやったことはなかったです。

中澤 2年生のときコロナの影響で試合が全くなかったので、毎日体育館に来て練習していても、モチベーションを維持する難しさがありました。そんなときコーチの知り合いにビーチバレーの選手がいて、コートを用意してくださいました。気分転換みたいな感じで何度かやらせてもらったのが楽しくて、3年では試合に出るつもりで今年を迎えました。ペアを組む相手を秋重がいいなと思ったので、自分から誘いました。

――では秋重さんは中澤さんに誘われて始めたということですね。実際にやってみてどうでしたか

秋重 めっちゃ楽しかったです。本当に楽しかったです(笑)。難しいのですが、初めてということもあって楽しさのほうが大きかったです。

――全日本選手権(全日本ビーチバレーボール大学男女選手権大会)での2試合についてお伺いします。まず初戦はフルセット(23―25、21―12、15―9)の長い戦いを制しましたが、振り返ってみていかかですか

中澤 相手がビーチをたくさんやって日に焼けている人たちだったので、見た目からして負けている感じでした(笑)。あまり攻撃力のないチームだったので、自分たちは強打やサーブで攻撃を意識していきました。第1セットは、初めはすごくリードしていたのですが中盤から風が強く吹いてサーブカットが入らなくなり、逆転されてしまいました。風のことがあったので、2セット目と3セット目はいい意味で気持ちを切り替えられて修正することができました。2セット目を取ったのでその勢いで試合を決められたという感じです。

秋重 振り返ってみてやっぱりビーチバレー歴といいますか、経験の差が出てしまったのかなという実感があります。自分たちは練習時間が短かったのですが、今の段階でできることはできたかなと感じています。

――続く2試合目の準々決勝は、0―2(17―21、29―31)で敗れはしたものの特に2セット目で競り合った試合でした。振り返ってどんな印象ですか

中澤 明海大学さんとは普段のバレーで練習試合をしたり、ビーチバレーでは試合前の合同練習も一緒にやらせてもらっています。それぐらい手の内を知っている同士の試合でした。明海大の二人は、背は高くないのですが経験豊富で読みがうまく、1セット目は競って取られてしまいました。その後2セット目の中盤で自分が脚をつってしまって、そのまま続けていたら秋重まで脚をつってしまいました。2セット目もし取れていても3セット目は棄権を考えるぐらい、出し切った試合でした。

秋重 とにかく二人とも勝ちたかったのですごく一生懸命やったのですが、やはり環境や慣れも大切なのだなと感じました。脚がつってしまうこともそうですし、水分補給などもこまめにできていなかったので。そうしたところで経験の差が出てしまったという感じがします。

――お二人が感じる普段のバレーとの一番の違いや難しいと感じる部分はどこですか

秋重 ビーチバレーではサーブレシーブをオーバーハンドで触れなかったり、ドリブルに厳しかったりするということですかね。練習していくうちに1本目をあまりオーバーで触らないようになってきたのですが、最初の頃はオーバーを使ってしまうことがすごく多かったので、そこが少し難しかったです。

中澤 自分としては、風があることですね。見た目からすると砂が一番違うように感じると思うのですが、砂は慣れてしまえば対応ができます。ですが風は日によって違うし、同じ日の中でも有無や向きが変わってくるのですごく難しいです。バッドサイド(風上側のコート)でどれだけ点を取られても、グッドサイド(風下側のコート)に戻った時にたくさん点を取るというように、戦術を組み立てる面でも経験不足を感じました。

――秋重さんも足元の悪さはあまり気にならなかったですか

秋重 足元の悪さも、最初は全然駄目だったのですが教えてくださっている方が「慣れてきたらいけるよ」と。練習を少しずつやっていくたびに砂には慣れてきたので、そこはあまり気にならなかったです。

――ビーチバレーでの経験がインドアのバレーに生きると思う部分はありますか

中澤 タイミングの取り方ですね。二人でコートを守るとなると、普通のパス一本の高さがミスにつながってしまうので、ペアの状況をよく見ることに神経を使います。インドアで今まで何気なく出していたパスが丁寧にできるようになるなど、守備の部分が生きてきたなと感じています。

秋重 やはり人数が違うので、相手に任せきりにしないという思いやりだったり、2本目をとにかく丁寧にあげることだったり、細かいプレーがインドアに生きてくるのではないかなと思います。

「絶対勝って終わりたい」「後悔しないように」

秋季リーグを見据える秋重 【早稲田スポーツ新聞会】

――ここからは秋季リーグに向けてお話を伺います。まず7月4日に戦ったオープン戦はどのように評価していますか

中澤 良いところも駄目なところも出た試合でした。1試合しかなかったのですが、課題も成果も全部が出ていました。前日に日大と皇后杯都予選を戦い、そこでの内容が良かったのでスタートはそのイメージのまま入ることができました。また相手のセッターとブロックのタイミングが合い、ブロックとディグの関係性が良かったのは前半の良い点でした。後半は転じて相手のセッターが変わってリズムが悪くなってしまいました。またロングサーブなどに対応できず大きく崩れてしまったのは、一番の修正点だと考えています。ブロックとミドルの攻撃も後半全然駄目だったので、自信をもってミドルがプレーできるようになるとチーム力に繋がるのではないかと感じました。

秋重 自分たち1年生が初めての公式戦ということで少しかたくなってしまったところもあると思います。それでも上半期に練習してきたことを出せる舞台だったので、もう少し1年生は思い切りやって、チーム全体としても完成した形を見せることができたらよかったなと今は思っています。

――去年のチームは繋ぎを強みとしていましたが、今年は新入生の加入もあってスタイルが変わった印象です

中澤 結構大きく変化しています。去年の4年生にはレシーブの上手い選手が多くいて、ボールを落とさないバレーができたのですが、今年はレシーブ力が少し落ちました。良い点としては身長が高い選手が多いので、ネット際のプレーに強いチームにしていこうということでスタートしました。特にブロックに力を入れていて、今まで週に2回ほどだったブロック練習をほぼ毎日行い、いかに自陣に強打を通さないかということを課題にやっています。

――秋重さんから見て今年のチームの強みはどこだと感じていますか

秋重 意外と全員身長が高かったりするので、今ブロック練習をたくさんやっています。身長が高いというメリットを活かして、ブロックの強化などチーム全体での攻撃力の底上げができたらなと思っています。

――秋重さんは試合後のインタビューで、1年生はおとなしいという話をされていましたが、夏になっても印象はそのままですか

秋重 夏になってもあんまり変わってないですね(笑)。たぶん性格の面もあると思うのですが、コートの中でもあまりフレッシュな印象ではなくて冷静なので、1年生のカラーはあまり「イェイ!」という感じではないかもしれないです(笑)。

――副将という立場から見て、チームスローガン『磨く』の現時点での達成度は

中澤 (100のうち)60あって欲しいけど、正直50ぐらいかなと思います。状況によってプレーが大きく左右されてしまい良い時と悪い時の波が大きいので、良い状態を保てるようにしていきたいです。そうすることで、試合の中で攻撃でも防御でも自分たちのやりたいことができるようになっていくと思います。

――この夏休みに特に力を入れて練習していきたいところはありますか

中澤 ブロックとゲーム感覚を磨くことです。高校時代に大きな大会に出てこなかった選手が多いので、実戦経験を重ねて勝つためのゲーム展開にするということに力を入れていきたいです。勝つために今どういうプレーをしなければいけないという感覚を自分が細かく伝えて、全員がずれのない同じ意識でゲームを進めていけるようにしたいです。夏休みはなるべく多く練習試合を戦いたいと考えています。

秋重 私は個人的な部分で、今サーブをスパイクサーブにしているので、そこを強化したいです。東京五輪で男子代表がサーブで多く点を取っているのを見て刺激を受けたというか、決めたいなというイメージができました。あとはスパイクやレシーブも、もう一度基礎の面からしっかりつくっていきたいなと思っています。

――最後に秋季リーグの目標と意気込みを聞かせてください!

中澤 目標はずっと言っているように一部昇格なので、絶対に1位で入替戦に進みたいと強く思っています。ですが結果だけにこだわらず、良い雰囲気のなか全員で戦い抜きたいという思いもあります。人数も少ないので誰一人欠けることなく、コロナにもかからずに戦って、かつ昇格のために勝ちを重ねていきたいです。美久さん(橋本美久主将、社4=福島・郡山女大附)が今年最後になるので、絶対勝って終わりたいです。

秋重 秋もリーグ戦が開催されるか分からない現状ではあるのですが、春季リーグのオープン戦の反省点だったり、今頑張って細かい部分練習をしています。ありきたりかもしれないですが絶対に後悔しないように、試合ですべてのプレーを出し切りたいなという風に思っています。

――ありがとうございました!

※撮影時のみマスクを外していただいています 【早稲田スポーツ新聞会】

◆中澤恵(なかざわ・めぐみ)(※写真右)
2000(平12)年5月28日生まれ。大阪・金蘭会高校出身。スポーツ科学部3年。ストレートに「勝つ」と意気込みを綴った中澤さん。最近は教習所に足繁く通っているとのことで、免許取得も間近!

◆秋重若菜(あきしげ・わかな)(※写真左)
2002(平14)年10月23日生まれ。大阪・金蘭会高校出身。スポーツ科学部1年。チームを「勢い」づけるプレーに期待がかかります。最近人生初のアルバイトを始め、お給料にテンションが上がっているそうです!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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