【東京五輪連載】早大バレーボール部・大塚達宣の世界と戦うメンタル(大学編)
【早稲田スポーツ新聞会】
大学編「相手が強くなるほどパワーアップ すべての経験を成長につなげる」
勝負の中で発揮される冷静さ
黒鷲旗でVリーガー相手にスパイクを決める大塚 【早稲田スポーツ新聞会】
その冷静さを発揮していたのが大学1年時に出場した黒鷲旗全日本男女選抜大会(黒鷲旗)だった。相手はV1リーグに所属する堺ブレイザーズ。5セット目の12ー14と、1点を取られたら早大の負けが決まる場面だった。ここで大塚が相手ブロックの上から決め、13ー14に。さらに、ディグを乱され後方から2段トスが上がってきた。ブロックは3枚ついていたが、かわして決め同点に持ち込んだ。それは、相手のブロックやディグの関係、そして「自分らしい、自分がしたいぷれーをする」という1年生としての役割を理解した上での得点だった。
相手が強くなるほど成長する
代表での活動を終えて早稲田に帰ってきたときには大きく成長していた。プレー面では特にサーブレシーブに変化が見られた。「シニアに選んでもらってから、自分はパスもスパイクもできるようにならないといけないと思うようになった」。大塚のポジションであるアウトサイドヒッターはリベロとともにサーブレシーブに参加する。少しでも攻撃枚数を減らし、スパイカーの的を絞りやすくするため、サーブで狙われることが多い。サーブで崩され攻撃パターンを絞られたら、世界に比べて高さで劣る日本にとって圧倒的に不利になる。サーブレシーブが試合の流れを左右する大事なプレーであることを肌身で感じてからは、ひたすらサーブレシーブの練習に取り組んだ。
努力のかいあり、1年時よりも体勢を崩されず、そしてセッターのもとへ正確に返球できるようになった。またプレーだけでなく、体にも変化が現れた。ウエートトレーニングに一層励むようになり、1年で6キロ増量。昨年は世界を相手に戦う機会はなかったが、五輪出場が現実味を帯び、より高いモチベーションを持って1日1日を大切に過ごすようになった。昨年は大塚にとって間違いなくプラスになった。
前向きに、そして論理的に
サーブレシーブをする大塚 【早稲田スポーツ新聞会】
コートに入っているときとは違う視点が新たな学びとなった。また、初めて世界を相手に戦ってみて、サーブが課題であることに気づいた。「身長も体格も大きい世界の相手に、こっちがサーブで崩さないと思い通りに決められてしまう。自分はパワーのあるサーブを打てるわけでないが、相手の嫌なところを狙うボールコントロールを意識して打たないといけない」
その3週間後には、世界の上位16か国が集うFIVBネーションズリーグが行われた。同大会は東京五輪の前哨戦。その結果で五輪代表の12人のメンバーが決まる重要な大会だった。12人に選ばれるか分からない。それでも1日1日、1本1本を大切にしてきた。雑念は持たず、練習の成果や自分の強みをアピールすることだけを考えていた。
だが、ふたを開けてみれば、今まで経験したことのないオポジットとしての起用がほとんどだった。最初はライト側からの攻撃に慣れず苦戦していたものの、徐々に得点を決められるようになった。また、課題であったサーブでの活躍もあった。ロシア戦では5セット目の15ー14で大塚がサーブで崩し、高橋藍(日体大2年)がダイレクトで決め、フルセットの激闘を制した。サーブレシーブで狙われることや劣勢の場面から出場することもちろんあったが、大崩れすることなく、むしろ試合を重ねるにつれ、ますますパワーアップしていった。
オリンピックは通過点
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