新たな人材確保により、デジタル技術を活用して攻勢に転じる

清水エスパルス
チーム・協会

【(C)S-PULSE】

サッカーJ1清水エスパルスを運営する株式会社エスパルスがデジタル人材の採用を積極的に推進している。
今春、デジタル関連に特化した人材を副業・兼業にて2名採用した。未だ新型コロナウイルスの感染の影響は続くが、収束後を見据えて中長期的にクラブの中核として活躍人材や、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に知見の深い人材などを追加募集している。
エスパルスの人材採用戦略について、総務人事担当役員の杉山敏取締役に聞いた。

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-今年初めに副業・兼業での採用募集を行いました。そのあたりの背景や狙いとは?

スポーツビジネスは他国のサッカークラブはもちろん、プロ野球や他のエンターテインメントなどと時間の取り合いのビジネスになっているのではないかと考えています。我々の業界は成長産業と言われていますが、実際は競合も多く、厳しい業界だと感じています。一方で、私の感想としては、比較的先端のテクノロジーはJリーグのビジネス領域において受け入れやすい分野なのではないかと思っています。
そのような中、年初に副業・兼業の採用を行いました。これはスポーツ庁の支援事業もあってのことですが、従来、私たちはいわゆるローカルの中小企業で、社内の人材も地元に縁のある人たちが長年勤めているという、地方企業のイメージです。したがって先端テクノロジーの活用という点では、大都市圏と比べやや遅れている感もあるため、これに注力していくことが、企業としての成長ひいては清水エスパルスの躍進に繋がると考え、人材採用を進めています。
仕事としてスポーツやJリーグに関わってみたいというニーズは総じて高いであろうと感じる一方で、例えば東京の人が地方のエスパルスに転職して一生頑張るということは、それなりにハードルも高いと思います。ご家族の理解が必要であったり、賃金や生活水準、生活スタイルも変わってくる可能性もありますが、副業・兼業という形であればそのハードルを下げられると考え、今年に入って副業・兼業の採用を行いました。ご自身の本業をきちんとやって生活のペースを守りながら、空いた時間でエスパルスに関わり自己実現を図っていただけるのではないでしょうか。
一方で最新テクノロジーも日進月歩の分野だと思いますので、5年、10年経つと、今の技術をアップデートし続ける大変さがあると思います。我々企業側からすると、現時点の最新技術だけにフォーカスした人材を中長期的な期待を込めて採用しても、特定分野のスキルにおいて最新性を維持することは簡単ではないでしょう。そのような理由から一度、副業・兼業の採用にチャレンジしてみようとやってみました。

-今春、何名の方が副業・兼業で採用されて、どのような業務をされているのですか?

大手広告代理店でデジタル分野に携わる方、大手IT企業で管理職に就かれていた方の2名を採用しました。いずれも都内在住で、デジタル分野での最新理論や技術をエスパルスの事業に活かしてもらっています。具体的にはマーケティングプロジェクトを立ち上げ、そのメンバーとして定期的に社内でリモートミーティングを行ったり、デジタル技術を活用したプロモーションにより特に新しいお客様へアプローチする手法を導入したり、データやシステムへの投資検討などに関与してもらっています。3月からの活動ですので、まだ4ヵ月程度ですが、この分野ではこれから成果も表れてくると思います。

-今回、新たに採用募集されていますが、その目的や期待することは?

副業・兼業というところについては我々の中でイメージができ始めてきたので、再度、副業・兼業での採用も行う一方で、将来的に会社の幹部として活躍いただく若手・中堅層のフルタイム人材も募集しています。
副業・兼業人材に関しては、現在はデジタルや集客という分野に特化した方に活躍してもらっていますが、少し範囲を広げて、新たにIAIスタジアム日本平の指定管理事業も担当させていただくことになりましたので、ホームゲーム時やそれ以外でのイベント企画であったり、SNSの効果的な活用であったり、もっと言えば我々がかねてより力を入れているブランディング領域に知見をお持ちの方だったりという専門分野におけるプロフェッショナルに、本業を持ちながら副業で関わってもらいたいということが一つです。
もう一つのフルタイムでの採用については、1998年に株式会社エスパルスが立ち上がってから、土地柄もあってか社員の定着率も比較的良くて、社員には長年にわたり力を発揮してもらっています。一方で企業の拡大という点では、約20年間大きく事業規模が拡大しているわけではありませんので、なかなか定期的な採用はできていませんでした。結果として社員構成としては年齢層がやや高く、20代、30代の社員が全体の30%に留まっており、年齢構成面において将来への不安要素があります。したがってこの機会に若手社員・中堅社員の採用も行い、中長期的な企業の価値向上も狙っていこうということになりました。
要するに、短期的な経営課題に対し副業・兼業の方に活躍いただき、企業・エスパルスの価値向上といった中長期的な経営課題に対しては、若手・中堅の方にフルタイムで腰を据えて活躍いただきたいという棲み分けとなります。

-6月のタイミングで募集した理由は?

我々は山室晋也社長のリーダーシップのもと、これから企業としての価値をより高めていこうとしているなかで、現職のある方が入社するまでには最低でも2ヵ月くらいが必要だと思います。仮に10月くらいの入社と考えると、少しの準備期間を経て来年2月には戦力として活躍してもらえるだろうということで、新シーズンのスタートから逆算して採用活動を行っています。このため、募集期間は一旦7月末で締切りとし、8月以降具体的選考に入っていきます。

-コロナによる業績の落ち込みが想像できますが、その中でも今回の採用募集に踏み切った狙いは?

これまでコロナ禍で思うような取り組みが出来ませんでしたが、ようやくワクチンも徐々に普及し始めてきて、いよいよ反転攻勢に出ていくタイミングだと思います。これから事業拡大するフェーズに入っていくことを見据えて新戦力を投入し、攻めに転じたいと考えています。

-具体的には?

マーケティングやDXという分野において少し遅れているということが率直なところです。またSNSや様々なデータを活用してスタジアムへの来場を促す施策をしたり、ファンエンゲージメントを高め、新しいお客様にスタジアムに足を運んでいただく、あるいは来場が年1回の方を年2回に、さらにリピーターになってもらうということを仕掛けていかないといけない。そのためにデジタル技術を使って集客を仕掛けられる方を求めています。
昨今は各社ともDX人材のニーズは高まっていると思います。ただ、スポーツビジネスに興味のある人はとても多いと実感しています。今年初めの副業・兼業での募集の際は、800人を超える応募があり、大手IT企業や広告代理店、外資系企業で活躍する優秀な方々に興味を示してもらいました。報酬は決して高くはないですが、面接していて、やりがいを求めたり、スポーツに興味があって携わりたいという方が非常に多いことも知りました。
また、これからも多くの皆様に末永くエスパルスを応援いただくためにも、中長期的な企業の成長も図っていく必要がありますので、スポーツ・サッカー・エスパルスに深くまた中長期的に関わっていきたいという強い思いを持った方に、フルタイムで仲間に加わってもらいたいと願っています。


コロナ禍による昨今の働き方改革でテレワークなどリモートワークが珍しいものではなくなってきている。さらに大手企業でも副業・兼業を認めるような時代の流れで、首都圏だけでなく地方に活躍の場を求める動きが活発化していくと考えられる。
働き方の変化やデジタルの進化を一つのチャンスと捉え、攻勢に転じる清水エスパルスの姿に期待したい。


ISM編集部
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著者プロフィール

チーム名の「S-PULSE」は、「サッカー・清水・静岡」の頭文字Sと、サッカーを愛する県民、市民の胸の高鳴りとスピリットを表現するため、英語で「心臓の鼓動」を意味するPULSEを組み合わせて名付けられました。 1993年に「オリジナル10」の一つとしてJリーグ開幕を迎え、クラブの歴史がスタートしました。 こちらのサイトではチームや試合、イベントなど様々な情報をお届けいたします

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