中村明彦・山崎有紀(スズキ)がアベックで連覇!〜悔しさを胸に今後の抱負を語る〜/【第105回日本選手権混成】レポート&コメント
【フォート・キシモト】
男子十種競技と女子七種競技は、東京オリンピックの代表選考会として行われ、十種競技は中村明彦選手(スズキ)が7833点で2年連続4回目の優勝を、七種競技は、日本記録保持者の山崎有紀選手(スズキ)が5909点を獲得して4連覇を果たしました。
■十種競技は、中村が今季日本最高の7833点で2連覇
【フォート・キシモト】
2日目は、雨模様となったなかで競技が開始されたものの、正午ごろから徐々に回復していく天候に。優勝争いは、奥田選手が首位を維持したまま進みましたが、中村選手が8種目目の棒高跳で種目別優勝(4m80)を果たすなど着実にポイントを重ねて15点差まで詰め寄ると、第9種目のやり投で、56m18の自己新をマークして奥田選手を逆転。3点差ながら、ここでトップに立ちました。中村選手は最終種目の1500mを4分29秒03で走りきり、昨年のシーズンベスト(7739点、2020年日本リスト1位)を上回る7833点を獲得。目標に掲げていた8000点台には届きませんでしたが、今季日本最高記録で、2年連続4回目の優勝を果たしました。
2位の奥田選手は、昨年出した自己記録(272点)を更新する7768点をマーク。日本歴代7位へと浮上しました。東海大時代から「スピード型」「前半型」として注目を集める一方で、2日目に課題を残していましたが、苦手種目への取り組みを含めた全体的なスケールアップが形になりつつあることを印象づけました。3位には、初日からの順位を守った清水選手が7661点で続きました。上位2選手には2日目で突き放される結果となったものの、この記録はセカンドベスト。中京大4年時に出した自己記録(7697点)以来、6年ぶりとなる7600点台をマークしました。
併催されていたU20日本選手権男子十種競技は、初日でトップに立った清水将貴選手(東京学芸大)が、第8種目の棒高跳で4m00をクリアしたことで大きくリード。やり投で60m08をマークして2位に浮上してきた岡泰我選手(国士舘大、総合2位6869点)らの追撃を寄せつけず、6927点で優勝を果たしました(中村選手、清水選手の優勝コメントは、別記ご参照ください)。
■七種競技は山崎が5909点のセカンドベストでV4
【フォート・キシモト】
2日目最初の走幅跳は、雨が打ちつけ、向かい風となるなかでの競技となりました。山崎選手は、ここで6m台を残しておきたいところでしたが、2回目の試技のスタートで残り時間を間違えてタイムオーバーとなるミスも出て5m72(-1.4)にとどまり、6000点突破はかなり厳しい状況となってしまいます。しかし、山崎選手は、その後も気持ちを奮い立たせ、残るやり投(46m74)と800m(2分14秒47)で種目別トップの成績を残し、自身2回目の5900点台となる5909点で4連覇を達成しました。
2位は、山崎選手には突き放される結果となったものの、2日目も着実にポイントを重ねた大玉選手。セカンドベストの5622点をマークしています。また、3位には、初日から3番手につけていた利藤野乃花選手(わらべや日洋)が、走幅跳(5m84、-0.7;種目別1位)と800m(2分18秒25)等で得点を稼ぎ、5月に出していた自己記録(5264点)をぴったり100点更新。5364点で日本選手権のメダルを初めて獲得しました。このほか、4位には、昨年の全国高校大会七種競技を制した大菅紗矢香選手(中京大、当時、鳥羽高)が、初日9位から大きくジャンプアップ。U20日本歴代9位となる5300点をマークして、3位・利藤選手に64点差まで詰め寄りました。
同時開催されたU20日本選手権七種競技は、高校生の活躍が目を引きました。優勝したのは昨年の全国高校大会七種競技で1年生ながら2位の成績を収めている中尾日香選手(長田高)。初日で2919点を獲得してトップに立つと、2日目も僅差ながらもリードし続ける勝負を展開し、自身初の5000点台となる5007点で制しています(山崎選手、中尾選手の優勝コメントは、下記ご参照ください)。
【優勝者コメント】
◎男子十種競技
優勝 中村明彦(スズキ) 7833点
【フォート・キシモト】
今回、(昨年生まれて9カ月になった)長女が初めて競技場に来てくれて、僕の競技を見てくれた。苦手だった種目でベストが出たので、勝利の女神なんじゃないかと思う。競技を終えたあとに涙したのは、(娘が見守るなかで競技できた)嬉しさと、どんなときにも支えてくれる家族がいたこと、そして遠くから足を運んでくれるサポーターの皆さんがいたことに、すごく幸せな気持ちになったのと、一方で、もっといいパフォーマンスができたんじゃないかなという(悔しい)気持ちがあった。
苦手としていた投てき種目(砲丸投、やり投)で自己ベストを出すことができた。「スピード型からオールラウンダーへ」というテーマでひと冬を過ごしてきただけに、こうして数字に表れたことはすごく自信になる。(年齢を経て)落ちていくスピードをカバーできるだけのパワーと技術をつけて、また“新しい自分”で、次の十種競技に臨める気がしている。
今回は、本当に、「嬉しい優勝、悔しい記録」。でも、「まだどこか自分に可能性を感じられる十種競技」でもあった。パリ(オリンピックを目指すこと)は難しいと思うけれど、娘が自分の競技している姿を記憶できる年になるまではなんとか頑張れたら…。今後、どういう取り組みをしていくかを考えて、また十種競技したいなと思う。
◎女子七種競技
優勝 山崎有紀(スズキ) 5909点
【フォート・キシモト】
(初日をトップで終えて迎えた2日目も)合計得点のことは気にせずに1種目1種目をしっかりと、それぞれの自己ベストを狙おうと思って臨んだのだが、なかなかタイミングや
(5月に)日本記録を出したあとは、試合自体の疲れはそこまで残っていなかったのだが、実はその大会の3日後に首の筋を違えてしまい、それが3回も起きたので、首に少し痛みが残っていた。そこが万全の状態で臨めていたらよかったなという気持ちはある。
(目前に迫ってきた6000点突破については)ここまで、ずっと6000点を目指して、出したいと言ってきたが、なかなか近づくことができない記録だったが、5月に5975点(日本記録)を出せたことで、少しは世界に近づけたような気はしている。今まで、記録が出るにつれて、目標が毎年変わってきた。昔は日本選手権に出場するのが夢だったが、それが優勝することになったし、国際大会を経験して「日本代表になりたい」と思うようになった。前は、遠いように感じていた世界選手権やオリンピックにも、やっといけるかもしれないと思えるようになってきた。それは、フィールド種目での“自分の当たり前”のレベルを上げることができれば、自然と見えてくると思う。
(再度の記録更新に対しては)調子がいい状態が続いているし、もう少しフィールド系で記録を安定させることができれば、もっといい記録が出せると思っている。今後、試合を探して、挑戦していきたい。
<U20日本選手権混成競技>
◎U20男子十種競技
優勝 清水将貴(東京学芸大) 6927点
【フォート・キシモト】
今回は、点数のことは考えずに、とにかく1位を目指していた。優勝を狙うためには、1つ1つの種目で上位にいることが大事だと思って、各種目に取り組んでいた。(最初の)100mで、追い風参考ではあるけれど初めて10秒台(10秒87、+3.2)が出せたし、400mも走高跳も自己ベストに近い記録を出すことができた。また、今日は、今まで3m80がベストだったポール(棒高跳)で4m00を跳ぶことができたことが大きかった。結果的に、そこが優勝の決め手になったなと感じている。U20規格ではあるけれど、砲丸投や110mHなども去年出場したときに出したベスト記録を大幅に更新することができている。そう意味で、内容的にも、すごくよい結果だったと思う。
シニアの十種競技では、まだ(日本)インカレのB標準しか切れていない(レベルだ)が、これから全国での強い選手の背中を追って、来年、再来年にはしっかりと勝負していけるような選手になっていきたい。
◎U20女子七種競技
優勝 中尾日香(長田高) 5007点
【フォート・キシモト】
この大会で得られたのは、「仲間って大事だな」ということ。私は800mの前に気分が落ち込むのだが、誰ということなく、みんなが「頑張ろう!」と声をかけてくれて、それがすごく励みになった。今回は、私が最年少(高校2年)だったのだけど、「自分もこういう先輩になりたいな」と思った。
インターハイに向けて、同じ高校生の人たちにも勝てたことはよかったし、これで自信を持って臨むことができるけれど、まだ、みんな成長している。自分もこれで満足するのでなく、改善するところを改善して、もっとよくなるように頑張っていけたらと思う。インターハイは、去年、2番(全国高校大会)だったので、「去年2番だったのだから、今年は1番」という気持ちで目指している。まずは、来週の近畿インハイを頑張りたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォートキシモト
■第105回日本選手権・混成競技 ダイジェスト動画
https://www.jaaf.or.jp/jch/105/combined-events/
■10周年企画 長野陸上競技協会 インタビュー
<Vol.1>〜10年間の歴史と心に残る出来事〜
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14944/
<Vol.2> 〜大会を盛り上げる工夫・10年目を迎える想い〜
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14945/
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ