廣瀬俊朗コラム「最後のトップリーグ決勝」

RUGGERS(ラガーズ)
チーム・協会

【廣瀬俊朗】

RUGGERSオリジナルコラム

筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事
スクラム・ジャパン・プログラムアンバサダー
 
 現状のトップリーグ最後の決勝戦は、約20年に渡りトップリーグを引っ張ってきた2チームによる試合になった。

 準決勝の戦いをみると、これまで攻撃力が突出していたサントリーが、クボタに良い形を作らせないで完勝した。サントリーの懐の深さを感じた。パナソニックは、前半トヨタの勢いを受けたものの、終わってみれば快勝だった。パナソニックの方が少し不安定な部分があるのかなと感じていたまま決勝戦を迎えたため、僕の予想では勝者はサントリーだったのだが、実は前夜に夢を見ていた。夢の中では予想とは逆にパナソニックが勝っていたので、どうなるのかとワクワクしながら、決勝戦を観戦した。

 試合が始まってみると、パナソニックがサントリーを圧倒した。ディラン・ライリー選手のインターセプトで開始早々トライをあげてからもDFでプレッシャーをかけていく。PGを重ねながら、得点を重ねていった。一方、サントリーは少し攻めあぐねた。これまで局面を打開してきたサムケレビ選手の欠場は痛かったなと思う。パナソニックのDFに対して、想定外の何かを与えることがなかなかできなかった。あっという間に点差は開いていく。この試合で現役最後の福岡堅樹選手も、松田力也選手からの素晴らしいパスをしっかりとトライまで持ち込んだ。「けんき!持ってるなー!!」と思わず笑ってしまうようなトライだった。
 サントリー視点で考えると、前半のうちにワントライは返しておきたい。「苦しくなるぞ!」と思っていたら、中村亮土キャプテンが見事な個人技からトライを奪って、なんとか前半を折り返すことができた。首の皮一枚で勝負を後半戦に持ち込むことができた。
 後半が始まると、サントリーは思い切って攻めた。後半早々、どんどんボールを動かして、一気にトライまで持っていったのは素晴らしかった。これでサントリーが勢いに乗るかなと思ったが、パナソニックはリザーブの選手を積極的に活用するスタイルでどんどんフレッシュな選手を入れ、自分たちの流れを作っていった。連続得点を許さない。DFでもタックルとジャッカルの判断が秀逸であった。サントリーは後半最後の尾崎選手のトライまでパナソニックを崩し切れるシーンがなかった。
 パナソニックは、余裕を持った状態で試合を展開して、見事に優勝を勝ち取った。素晴らしい試合になった。サントリーとしては、多少のけが人も出し、最後にやりたいラグビーをさせてもらえなかった印象を受けた。相手に力を出させなかったパナソニックに軍配が上がった。

 試合が終わってからのスピーチも良かった。坂手キャプテンは久々の試合だったので、キャプテンとしての重責もあったと思う。福岡選手は最後の試合でなかなか集中するのが難しかっただろう。福岡選手は今後のことを少し話してくれたが、明確に次のキャリアを築いていく意思が見られて、素晴らしかった。これから新たな長い道のりだが、応援していきたい。お疲れ会もしないと!!
 ボーデン・バレット選手は、この試合では本領を発揮できなくて悔しそうだったが、楽しんでプレーすることの大事さを改めて教えてくれた。スピーチでは優しさが伝わってきて、負けたチームの選手のコメントとは思えないような爽やかさに心を打たれた。

 コロナ禍でのトップリーグ最後の決勝は、ラグビーの楽しさとそこに携わる選手の素晴らしさを改めて知る機会になったと思う。
 次回はトップリーグの総括をしていきたい。
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著者プロフィール

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