悔しさを糧に急成長する小野郁。ストライクゾーンで勝負できる投手に

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【力投する小野郁投手】

 その目は泳いで見えた。マウンドで呆然と立ち尽くし、打球の行方を見つめた。小野郁投手は4月9日のライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で手痛い逆転3ランを許した。3点リードの場面で2番手として登板。四死球でランナーを溜めると2点適時打を許し、なおも一死一、三塁。ここで6番愛斗に151キロストレートをライトスタンドに運ばれた。1回を被安打2,3四死球、5失点。負け投手になり、試合に敗れた。打たれた試合が続いたこともあり監督室に呼ばれると二軍調整を告げられた。

 「悔しくて、悔しくて涙が出ました」

 ロッカーに戻ると一人、涙した。タオルで顔を覆い、時間だけが過ぎた。涙が枯れ、少し冷静になった時に井口資仁監督と吉井理人投手コーチから指摘された事を頭の中で反芻した。ホームランを打たれたことではなく、3四死球を与えた事に関する話だった。

 「ストライクゾーンの中で勝負できる投手なのだから、その部分をもう一度、見つめ直して欲しい。しっかり調整してまたすぐに一軍に上がってきて欲しい」。

 150キロを超える威力あるストレートを持ちながら、勝負できずにランナーを溜めた反省。原点に戻る必要があった。

 「厳しいところに投げなくてはいけないと思っている自分がいた。結果的に力んでしまって。そうじゃなくて、思いっきりストライクゾーンに投げていくというシンプルな考え方をしようと思いました。打者に向かっていく姿勢。ファウルでもなんでもストライクを先行させて自分に有利なカウントを作りあげていく。すごくシンプルに目の前の打者を抑える。任された場面を0に抑える。そういう風に考えるようにしようと思いました」と小野。

 悔しさを胸に二軍落ち。弱い自分と向き合い、いつの間にか複雑に考え込んでいた投球をシンプルに考えるようにした。走る量を増やす調整で軸となる下半身も作り直した。

 尊敬する先輩から二軍落ち直後に送られてきた言葉も、支えとなった。選手会長でストッパーの益田直也投手からLINEでメッセージが届いていた。

 「最後は気持ち。悔しいのもわかる。泣きたいのもわかる。ここまでオマエがやってきたこともわかる。今、必要なのはちょっとした技術と自信だけだと思う」。

 いつも可愛がってもらい、ブルペンでも様々なアドバイスをくれる先輩が気を使ってメッセージをくれた。メンタルの大事さ。自分を信じ自信を持つことの大事さを優しく教えてくれた。通算500試合以上に登板をして13年にはセーブ王にも輝いている先輩の言葉が心に染みた。
 
 4月22日に一軍に昇格をすると堂々たるマウンドさばきを見せるようになった。もうマウンドで不安そうな表情を見せることはなくなった。5月2日のイーグルス戦(楽天生命パーク)でも3番手として登板をすると1回を無失点。これで5試合連続無失点。チームの勝利に貢献した。
 
 「今は状態がいい。自信をもって投げることが出来ている。任されたところを0点に抑える。その気持ちだけです」と小野は試合後、充実した表情を見せた。

 打てるものなら打ってみろと言わんばかりに打者に向かって力強い剛速球を投げ込む小野を井口監督、吉井理人投手コーチは信頼をして大事な局面で起用する。そして勝利が決まると小野は大好きな益田先輩と喜びを分かち合う。24歳の若者は悔しさを糧に成長し自信を掴んでいる。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
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