「イーグルスキッズ」 将来の野球ファンを育む楽天イーグルスの狙い

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【(C)RakutenEagles】

 幼い頃に大人に連れて行ってもらった球場の思い出は実に鮮烈だったりする。
 試合結果は覚えていなくても、熱気、音、グラウンドに向けられた大人たちの真剣な眼差しはありありと思い出せる。時流れて令和、子どもの野球離れが叫ばれるなか、プロ野球球団は地域と子どもたちに寄り添うべくさまざまな策を講じている。

 ゴールデンウィーク期間中の5月1日、2日に行われた「イーグルスキッズ」は、スタジアムを楽しみ尽くし、将来のイーグルスファンを育むことを目的に、2017年から継続している子どものための特別なイベントだ。1日、2日のイーグルスキッズでは中学生までを対象に、キッズパーカーのプレゼント、グッズ割引やポップコーンのサイズアップ無料、アトラクション1回無料の「キッズわくわくクーポン」のプレゼント、アトラクションで遊ぶと抽選会に参加できる「わくわくスマイルラリー」などの特典が用意された。

ばいきんバスターズとして手指消毒を呼びかけるクラッチくん 【(C)RakutenEagles】

「1、2日とも天気はあまり良くない状況でしたが、当日は配布したネイビーのキッズパーカーを着たお子さまがアトラクションへ行ってくださったりと、お子さまを中心に盛り上がっていただけた日になったかなと思います」と手応えを話すのは、イーグルスキッズの仕掛け人、総合企画部ゲストマーケティンググループの岩崎未来さんだ。

 特に、雨で中断があった2日の試合では、その中断の時間にキッズわくわくクーポンを使ってアトラクションやクレーンゲームで雨を凌ぎながら試合再開を待つキッズの姿がよく見られたという。今回のイーグルスキッズは観客の10%にあたる約1800名のお子さんが来場(2日間合計)。これは、普段の週末よりも4ptほど多い来場者数ということで、パーカー配布をメインとした告知が呼び水となった可能性が高い。

スマイルグリコパークで遊ぶ子どもたち 【(C)RakutenEagles】

 こうした子ども向けのイベントを開催するにあたってきっかけになったのは、2016年に、大きな観覧車とメリーゴーラウンドを目玉としたスタジアム隣接の「スマイルグリコパーク」が完成したことだ。2011年に端を発したボールパーク構想の一環で誕生したこのパークは、他球団にはないオリジナリティとファミリー層を意識した改革だった。以降、「野球を観に行こう」ではなく「スタジアムへ遊びに行こう」という呼びかけが、今日のイーグルスキッズの根幹にある。そしてそれはもちろん、“将来のファン”獲得のためでもある。

スマイルグリコパーク 【(C)RakutenEagles】

「ほかの施策としては、7年連続で東北のすべての新小学1年生にキャップ(野球帽)をお渡ししたり、毎年4月には中学生以下のお子さまを対象に試合の無料招待をしたりしています。まずはこういった球団との接点を増やして、『野球といえばイーグルス』と思ってもらえるようなところから始めて、実際にスタジアムに来て、アトラクションとかも体験しながら野球観戦の楽しみを知っていただく。そして将来たくさん通っていただけるファンになっていただけたら」と岩崎さんは展望を話す。

「例えば小さい頃に野球観戦に連れて行ってもらったときに選手が活躍した記憶って、一生残ると思います。まずは来場いただき、お子さまに将来のファンになってもらう経験をしてもらいたいですね」。そのフックを作るのが岩崎さんたちゲストマーケティンググループのしごとだ。

 1日は田中将大投手6回無失点の好投もあり、岩崎さんの言うように子どもたちにとっても思い出深いイーグルスキッズデーになっただろう。かの田中投手の投球を生で見たということも、スタジアムの思い出とともに将来語り継いでもらいたいものだ。その一方で田中投手自身は2児のパパということもあり、キッズたちの熱視線が集まるこの日を少しは意識をした……のかもしれない。そんな思いを馳せた今年のイーグルスキッズだった。

文・海老原 悠
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