3選手が東京オリンピック日本代表に内定!/第105回日本選手権10000m大会レポート

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【フォート・キシモト】

第105回日本選手権男女10000mが5月3日、静岡県小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われ、今夏、日本で開催される東京オリンピックの日本代表選手選考レースとして実施されるとともに、両種目の「2021年日本チャンピオン」が競われました。男子10000mでは昨年12月に実施された前回大会で、オリンピック参加標準記録を突破していた伊藤達彦選手(Honda)が27分33秒38で初優勝。また、女子は廣中璃梨佳選手(日本郵政グループ)が31分11秒75で先着して、こちらも日本選手権を初めて制し、31分18秒18をマークして2位でフィニッシュした安藤友香選手(ワコール)とともに、この種目のオリンピック参加標準記録(31分25秒00)を突破。これらの結果により、伊藤選手、廣中選手、安藤選手の3名が、新たに東京オリンピックの日本代表選手に内定しました。


同じ日に開催されていた静岡国際の競技が終了して約2時間半後、それまで会場内を吹いていた風がぴたりと収まった午後7時3分に、まず、女子10000m決勝がスタートしました。
オープン参加の外国人選手1名を含めて20名で行われたレースは、スタートしてすぐに廣中璃梨佳選手(日本郵政グループ)が先頭に立つと、安藤友香選手(ワコール)、カマウ・タビタ・ジェリ選手(三井住友海上、オープン)、岡本春美選手(ヤマダホールディングス)が縦長の先頭集団を形成、少し離れて鍋島莉奈選手(日本郵政グループ)を先頭とする第2グループが形成され、1周ごとにトップグループとの差が開いていく展開となりました。

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第1グループでトップを牽引した廣中選手は、最初の1000mを3分06秒で入ると、2000mは6分11秒、3000mは9分16秒、4000mを12分21秒で通過。1200m以降は74秒のラップを刻み、精密機械のような正確なペースで周回を重ねていきます。3200mを過ぎたところで岡本選手が後れ、先頭は3選手に。4000m以降は、少しペースが落ちたものの5000mは15分28秒で通過していきました。13周目のバックストレートで、最後尾を走っていた福士加代子選手(ワコール)を抜いたあとに、安藤選手が廣中選手の前に出て先頭に立ち、廣中選手がその後ろにぴたりとつく配置に。5600mあたりでカマウ選手が腹部を押さえながらペースダウンことで、その後は、2人のマッチレースとなりました。
両者は6000mを18分36秒で通過してからは、1周76〜77秒から78秒へと次第にペースを落としつつレースを進めていきます。7000mを過ぎたあたりから、安藤先生に並びかけるような場面を見せるようになった廣中選手は、残り3周となった8800mを通過したところでスパート。ラスト3周を73秒、73秒、70秒で回って安藤選手をここで突き放し、日本歴代7位となる31分11秒75でフィニッシュ。10000mのトラックレース経験わずか2本にして、日本選手権での初優勝を果たすとともに、東京オリンピック参加標準記録31分25秒00も突破したことで選考条件を満たし、この種目の東京オリンピック代表選手にも内定しました。また、終盤で離されはしたものの安藤選手も最後までよく粘り、前回マークした自己記録(31分37秒71)を大きく更新する31分18秒18(2位)でフィニッシュ。同じく参加標準記録を突破して、廣中選手に続く「3枠目」の座を手に入れました。
3位に食い込んだのは、学生で今季好調の小林成美選手(名城大)。32分12秒31・4位でフィニッシュした岡本選手、32分16秒07・5位の筒井咲帆選手らヤマダホールディングス勢を押さえて先着。昨年マークした学生歴代8位となる自己記録の32分08秒67を、0秒22秒更新する32分08秒45で、表彰台に上がりました。

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出場者多数のために2組タイムレースで実施された男子10000mは、参加資格記録上位者30名とオープン参加の外国人選手2名で組まれた2組目がメインレース。12名が出場した第1組のあと、20時24分にスタートしました。
レースは、日本の実業団に所属し、オープン参加のロジャースシュモ・ケモイ選手(愛三工業)とクレオファス・カンディエ選手(三菱重工)が1000mごとに交互で先頭に立つ形でペースをつくり、1000mを2分44秒、次の2000mも2分44秒(通過タイム5分28秒)と、ほぼイーブンで入ると、その後は1周66〜67秒のペースを刻んでいきました。先頭から途切れることなく縦の塊となった集団は、レースが進むにつれて縦に長くなり、徐々に絞られていくことになりました。
日本人選手は、青木祐人選手(トヨタ自動車)、鎧坂哲哉選手(旭化成)、牟田祐樹選手(日立物流)、市田孝選手(旭化成)らが順番にトップに立ちましたが、伊藤選手は常に日本人の2〜4番手に位置してレースを進めていきます。また、牟田選手がいったん大きくリードを奪った4400m過ぎあたりでは、駒澤大の鈴木芽吹選手と田澤廉選手が上位へと浮上。5000mを過ぎたところで市田選手がトップに立った際にすぐにつき、日本人の先頭集団は6000m付近では市田・鈴木・田澤・伊藤・茂木圭次郎(旭化成)の5選手となりました。さらに動きがあったのは残り8周を迎えたあたり。19歳の鈴木選手がトップを行く市田選手をかわして先頭に立つと、すぐこれに反応して20歳の田澤選手が2番手に。伊藤選手も市田選手を抜いて駒大コンビにつく展開に。7000mを通過するときには、優勝争いは3人まで絞られる形となりました。その後は、鈴木選手、田澤選手、伊藤選手の並びは変わらずに1周67〜68秒前後のペースで、8000mは22分09秒、9000mは24分58秒で通過。そして、残り2周を切って9200mを過ぎたところで、そこまで一度も前に出ることのなかった伊藤選手がスパートして先頭に立つと、バックストレートで後続との差を広げていきます。伊藤選手は最後の2周を62秒、ラスト1周は59秒台に引き上げて、27分33秒38で念願の初優勝。条件を満たしたことで、この種目で男子2人目となる東京オリンピック代表に内定しました。
2位・3位を占めたのは田澤選手と鈴木選手の駒大コンビ。田澤選手は、伊藤選手のスパートを追うべく、鈴木選手をかわして3位から2位へ浮上。伊藤選手のキックに追いつくことはできなかったものの、この種目で日本人学生歴代2位となる27分39秒21をマーク。前回のこの大会でマークしていた自己記録27分46秒09を更新しました。また、田澤選手に続いて3位となった鈴木選手も最後まで粘り、同歴代3位となる27分41秒68の好記録でフィニッシュ。4月10日の日体大記録会でマークしていた28分00秒67の自己記録を大幅に更新する、初の27分台突入を達成しました。

【フォート・キシモト】

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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