【AFTER GAME】 2020-21第20節 仙台戦(4/30〜5/01)~鮮やかなるカムバックの舞台裏、そして「夢の舞台」への想い~

茨城ロボッツ
チーム・協会

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

ホーム最終節の相手は、仙台89ERS。2週間ぶりの対戦となった相手だが、ロボッツはGAME1(4/30)を競り合った末に78-81で落とし、今シーズン初の3連敗を喫してしまう。しかし、明くる日のGAME2(5/1)では息を吹き返したような戦いぶりをみせることに成功。堅守をカラーとする仙台を相手に守りから試合を組み立て、96-67で快勝を果たした。この戦いぶりの裏には、何があったのか。試合を終えたばかりの選手たちの言葉で、綴っていくことにしたい。

ベテランたちが押した背中

ここ数戦プレータイムを伸ばしている、#13中村功平。仙台戦に先立って行われた越谷アルファーズ戦での大活躍など、その印象は記憶に新しい。ただ、その彼もGAME1における内容の悪さには、なにか感じ取るものはあったようだ。そして中村は、試合後に行われたミーティングの場面を振り返る。

「GAME1を終えて、選手たちだけでミーティングをしたんですけども、『雰囲気が悪いままプレーオフに行くのはもったいないぞ』という話が出ました。今日、みんなでいい雰囲気でGAME2に臨めましたし、そういう雰囲気で試合ができれば、どこにだって勝てる、強いロボッツを体現できるというように思いました。」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

「もったいない」と言葉を発したのは、キャプテン・#25平尾充庸などベテラン勢。中村はその姿勢について、「『最後はベテランの力が必要』とばかりに、志気を高めてくれているし、若手もそこに応えようとしています」と話す。ロボッツが目指していた、「全員で戦う姿」を取り戻すために、大きな一押しだったといえるだろう。ただ、中村は気を付けるべきポイントも認識していた。

「(ロボッツは)みんなが『乗っている』時は強いんですけども、例えばビッグマンが相手に競り負けたりだとか、フラストレーションがたまった時にそれが態度に出てしまったりとか、一気に崩れてしまう瞬間もあります。それをプレーオフで出さないように相手を抑えられれば、いい結果がついてくるんじゃないでしょうか。」

今季のロボッツは、大きな連敗を喫することなく、シーズンを駆け抜けようとしている。それも、メンタル面においてはプレーオフの武器になるであろうと、中村は付け加える。

「負けたっていう印象があると、どうしてもそこに引っ張られるといいますか、例えば西宮(ストークス)戦のGAME1を落としながらGAME2で勝ちましたし、今回も仙台にGAME2で勝ちましたので、『僕らは弱くないんだぞ』という意識を少しでも持ってプレーオフを迎えられるのは大きなことじゃないかなと思います。」

最後に、中村なりに感じる、プレーオフでのポイントを尋ねた。「一言で」という難しい注文に、彼は悩みながら答えを紡ぐ。

「最後は『信頼』とかじゃないでしょうか。チームメイトを信じて、コーチを信じて、今までやってきたことをやるだけです。奇をてらったりせず、かといって『これぐらいでいいか』ということでもなく、もう一段階レベルを上げてやれば、勝てると思います。」

中村だけでなく、「中大コンビ」の相方#29鶴巻啓太の成長も著しかった今シーズン。ベテランたちが引っ張ってきたチームに、彼ら若手選手が最後のブーストを与える存在になれるか、注目だ。

「生き字引」眞庭城聖が語る想い

ロボッツの酸いも甘いもかみ分けた男、#27眞庭城聖。実に5シーズンに及ぶ在籍期間の中で、クラブの成長、あるいは苦難の時を一番身近で感じていた彼に、「B1へのピース」になにが足りないか、彼の言葉で話してもらうことにした。ここ数戦のゲーム展開や練習への取り組み方についても尋ねると、「確かに悪い部分があったと思いますし、どこかには慢心のようなものがあったはず」と明かす眞庭。ただ、同時に彼はこんな意見も持っていた。

「連戦が続く中、心身の疲れがたまっていく中で、練習から悪い状態になってしまったのではと思います。プレーオフを前に練習の状態が悪かったことで試合も落としてしまう。これを経験できてよかったのではないかと思います。強度を上げて、練習から課題解決を徹底していくことも、重要なことに思えます。」

連敗脱出には、日本人選手、外国籍選手を問わず、選手全員の奮闘があったと話す眞庭。選手の名前を例に挙げながら、「戦う姿勢」が重要なのだと、改めて強調する。

「鶴巻がGAME1で仙台の渡辺選手(#15渡辺翔太)にやられてしまい、得点もアシストも決められてしまったわけですが、GAME2では渡辺選手に仕事をさせませんでした。あとはインサイド陣の頑張りです。特にシェイ(#11チェハーレス・タプスコット)は本当に分かりやすくて、ディフェンスをがんばっているときは腰を低くして相手に当たっていきますし、クウソーも相手のビッグマンと戦っていきました。クウソーはファウルがかさんだ部分もありましたが、うちにはG(#4小寺ハミルトンゲイリー)もいますしね。」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

ここからは一発勝負のプレーオフ。眞庭は、「ドキドキとワクワクならワクワクの方が勝つ」としながらも、チームとしては「これまでのロボッツ」の形で挑んでしまってはいけないと話す。

「GAME1を落としてGAME2で大勝する、そんなことが今シーズンたびたびありました。『連敗しない』ということは確かに強みにはなりますが、プレーオフにおいては初戦を落とすというのはかなり厳しい状態になりかねません。レギュラーシーズンのように『集中を欠いていた』、『戦っていなかった』というような事態になってしまうと、上に勝ち上がるのは難しくなってしまうでしょうね。」

そして、彼はこれまでのロボッツの歩みと、そして自らの歩みに照らし合わせながら、プレーオフを「チャンス」あるいは「貴重な経験」と表す。プレーオフ、あるいはB1昇格に手が届きそうで届かなかった、その歯がゆさを、選手の中で一際強く感じている現れだろう。

「感慨深いものがあるといいますか、僕がロボッツに来た頃にはアダストリアみとアリーナがまだなかったわけですし、環境面もメンバーも全然違いました。でも、それを全部乗り越えてきて、どんどんロボッツの姿が大きくなっていったというのを僕も見てきました。そして、やっとプレーオフです。初めてのプレーオフ、言い換えれば『5年目で1回しか出ていない』という重みがある一方で、またそうそう巡り会えるわけじゃないチャンスです。だからこそ、『絶対、今年つかみに行かないと』というのは感じています。選手全員のキャリアの中で、プレーオフは貴重な経験になるでしょうし、そういった意味では『キャリアを懸けた戦い』にしてほしいなとも思います。」

最後に、佐賀戦の展望を尋ねてみた。プレーオフの初戦をホーム・アダストリアみとアリーナで戦えるということを、眞庭は何よりも大事にしているようだった。

「最大のアドバンテージは僕らがホームで戦えることです。僕らがホームで強いことは、相手にとってプレッシャーになるでしょうし、お客さんの盛り上がりも含めて、僕らの背中を押してくれると考えています。また、勝つことは大前提なんですけど、プレーオフの空気感に呑まれない。プレッシャーを感じて消極的になるのではなく、ある意味積極的に楽しむ姿勢を見せて、ファンやブースターの方々にも、負けられないチーム同士のハイレベルなぶつかり合いというのを見ながらロボッツを後押ししていただいて、昇格までの道筋を一緒に見届けてほしいと思います。」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

シーズン最終戦。全力で当たって勝利を

シーズン最終戦の相手は福島ファイヤーボンズ。中1日での過密スケジュールでの戦いだけに、くれぐれもケガには注意して戦っていきたい。仙台戦のGAME2のように、プレータイムをシェアしつつ、強度の高いゲームを展開してほしいところだ。

福島は外国籍選手の大幅な入れ替えや#9神原裕司の長期離脱などで、もはやこれまでの印象などは通用しない、別物のチームとなった。プレーオフをあと一歩のところで逃したが、ホームで迎えるレギュラーシーズンの最終戦とあって、並々ならぬ気迫で向かってくることだろう。気をつけておきたい選手が、#23マーク・セントフォート。彼がゴールに絡むシーンが増えると、それがそのまま福島に流れを生む。機動力も、インサイドでの馬力もある彼を、しっかり抑えていくことが勝利への近道となるだろう。

ロボッツの注目は、#29鶴巻啓太だ。彼がまずディフェンスからしっかり仕事をしていくことで、福島の流れを止めることが必要になる。特にセントフォートや#21菅野翔太など、点取り屋のフォワード陣を相手にする上では鶴巻の力が大いに必要とされる展開となるだろう。

この福島戦には、茨城からもファンやブースターが押し寄せ、多くの応援が現地で送られることだろう。その中で試合を勝ち取り、夢舞台のプレーオフへの流れを作ってほしい。
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著者プロフィール

水戸市・つくば市を中心とする茨城県全域をホームタウンとするプロバスケチーム 2013年7月 「つくばロボッツ」としてクラブ創設 2014年11月法人設立 2016年 拠点をつくば市から水戸市に移し、「茨城ロボッツ」としてB2リーグに参入 事業面では、今年1月には、Bリーグ初のクラブによる「スポーツまちづくり会社」である「株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメント」を設立 官民連携で開設した「まちなか・スポーツ・にぎわい広場(M-SPO)」の運営等を行い、地域にある様々な魅力と資源をつなぎ合わせる「地方創生」をコンセプトにした活動にも注力している。

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