14号車 ROOKIE Racing 開幕戦岡山 レースレポート

SUPER GT
チーム・協会

【ROOKIE Racing】

公式練習

『もっといいクルマづくり』を実現したい。モータースポーツを盛り上げたい。──そんな思いとともにモータースポーツ活動を展開している ROOKIE Racing は、国内屈指の人気を誇るSUPER GTに2020年から挑戦を開始している。そして、新たな体制が組まれた2021 年、TGR TEAM ENEOS ROOKIE として、新たなカラーリングとともに最高峰のGT500クラスに挑む。
これまでメーカーテストや、3月に岡山国際サーキット、富士スピードウェイで行われた公式テストを経て、迎えた2021 年開幕戦。大嶋和也と山下健太という 2019 年のチャンピオンコンビを擁して戦う TGR TEAM ENEOS ROOKIE は、4月に入り暖かさが増すなか準備を万端に整え、4月 10 日(土)の予選日を迎えた。迎えた予選日の天候は、やや風があるものの晴天。まずは午前9時45分からスタートした公式練習で、午後の公式予選、そして翌日の決勝レースに向けた準備やセットアップの確認を行わなければならない。チームの大黒柱である大嶋が乗り込んだ ENEOS X PRIME GR Supra は、まずコースインからすぐにピットに戻り確認を行うと、少しずつタイムを上げていく。実は ENEOS X PRIME GR Supra は、 岡山で3月に行われた公式テストではいまひとつフィーリングが良くなかったが、コクピットの大嶋はチームの努力で大きくフィーリングが改善されていたことを感じ取る。「これはセットアップはしなくても大丈夫だ」と大嶋が感じるほど ENEOS X PRIME GR Supra は好調で、タイヤの確認等を行いながら 17 周をこなすとピットへ。 山下に交代した。
山下もその ENEOS X PRIME GR Supra の好調ぶりはすぐに感じ取り、すぐに1分19秒台の好タイムを立て続けにマークすると、そこから早くもロングランに入るなど、順調に公式練習を進めていった。
終盤のGT500クラスの専有では、予選に向けたシミュレーションも実施した。山下はコースインから4周目に1分18秒533 というタイムをマー クすると、4番手という好位置で公式練習を締めくくった。

公式予選

午前に続き晴天のもと迎えた午後2 時からの公式予選。気温が上がり、午前とはコンディションもわずかに異なっていたが、わずかな違いがフィーリングに直結する現代の SUPER GT では、コンディションを読むことが非常に重要となる。
迎えた GT500クラスのQ1で、 ENEOS X PRIME GR Supra の アタッカーを務めたのは山下。Q1 残り8分というタイミングでコースインした山下は、少しずつタイヤをウォームアップさせていくと、午前よりも1周多い5周目にアタックを敢行。その結果、山下は1分18秒091までタイムを縮めてみせた。終わってみれば、GT500クラスの2番手。山下は見事な走りでQ2の大嶋にバトンを繋いだ。 GT300 クラスのQ2を挟み迎えたGT500クラスのQ2。ふたたびコンディションは変化していくが、山下同様残り8分でコースインした大嶋は、 午前同様のENEOS X PRIME GR Supra の好感触を確かめると、5周目にアタックを敢行する。大嶋自身はそれほど納得がいくアタックではなかったというが、コクピットから無線で大嶋に伝えられた順位は「2番手」とい うものだった。ENEOS X PRIME GR Supra としてのデビュー戦でフロントロウを獲得した喜びとともに、「ポー ルポジションを獲れたかも」という悔しさがやや入り交じったが、それでも好位置を獲得できたのは間違いない。そして、チームの雰囲気を盛り上げるには十分な結果となった。

【ROOKIE Racing】

決勝レース

迎えた4月 11 日(日)の決勝日。 2年ぶりのSUPER GT開催を待ちわびたファンが晴天に誘われ、朝からスタンドを埋めるなか、午前 11 時 50 分から、決勝レース前のウォームアップ走行が行われた。ENEOS X PRIME GR Supra はまずは大嶋和也がステアリングを握りコースインし、途中山下健太に交代。1分 21 秒 985 というベストタイムで、10 番手で走行を終えた。しかし、やはり ENEOS X PRIME GR Supra のフィーリングは前日から続き、良好そのもの。セットアップも多くは必要がないほど好調だった。

■大嶋が首位をうかがう走り
気温19度、路面温度33度というコンディションのもと、午後1時30分からの決勝レースでスタートを担当したのは大嶋。2周のフォーメーションラップを経て、まずはグリッドどおり2番手をキープしていく。序盤、トップを走る #37 GR Supra とは少し間隔が開くものの、GT300クラスのラップダウンが前に出はじめると、大嶋はジワジワと前とのギャップを縮め、首位をうかがう姿勢をみせた。このフィーリングなら勝てると大嶋は確信した。後半の山下に、できるだけ有利な状況でバトンを繋ぎたい。そんななか、レースは8周目にヘアピンで起きたGT300クラスのアクシデントにより、セーフティカーが導入される。タイトな岡山国際サーキットではアクシデントも多く予想され、 レース展開が大きく左右されることもある。ルーティンのピットストップはまだ先だが、現代の SUPER GT で は、セーフティカー導入までにピットインを済ませておかなければ、勝負権を失ってしまう。ENEOS X PRIME GR Supra のコクピットに座る大嶋とチームは、無線で交信しながらピット インのタイミングをうかがった。 そして 33 周目、1コーナーでアウ トラップだった GT300 クラスのマシンがストップしている映像が映し出される。場所も危険性が高く、セーフティカーが導入される可能性は非常に大きい。チームは即座に大嶋に状況を伝え、ピットインを決断した。
もちろん、このタイミングでピットインをしなければならないのは、他チームも同様だ。一斉に人の動きが激しくなる。タイトな岡山国際サーキットのピットレーンでは、多数の車両が同時にピットインした場合、通常どおりピットと並行に停め作業することは難しい。業界用語で言うところの、『斜め止め』と呼ばれる作業となる。TGR TEAM ENEOS ROOKIE の左右のピットも準備している。斜め止めを行うことが確定的となった。

■新人メカに緊張の時
今季、新たな体制となった TGR TEAM ENEOS ROOKIE で は、 これまで長年レースに携わってきたメカ ニックが、新たにモータースポーツの世界で成長しようと加わったメカニックを育てながら戦っている。もちろんこれまでオフの間、練習に練習を重ねてプロのレベルに到達し、前週のスーパーフォーミュラではその成果が発揮され、大嶋の順位を押し上げていた。しかし、タイトな岡山で、しかも初めてのSUPER GTでの本番レースで、長年モータースポーツに携わるベテランでさえ経験が少ない斜め止めは、ハードルが非常に高い。チームには緊張が走った。大嶋は冷静に停止位置に ENEOS X PRIME GR Supra を停めると、メカニックたちは緊張しながらも、冷静に、かつ迅速に作業を進めた。決勝前、チー ムオーナーの豊田章男がチーム全員に語った「ドライバー、エンジニア、メカニック、みんながそれぞれ努力して、 コンマ1秒を縮める戦いをしよう」という言葉どおり。そして、斜め止めの際に必要なプッシュバックと呼ばれる、車両を押し戻す作業までも冷静にこなしたメカニックたちは、ピット内に戻り、すかさずモニターを見た。すると、レース序盤に先行していた #37 GR Supra をリードし、ENEOS X PRIME GR Supra がトップに立っているシーンをモニターで確認した。
「 や っ た ぞ!」 ──TGR TEAM ENEOS ROOKIE のピットは、これまでの努力が成果に繋がったことの喜び に沸き立った。

■山下が魂の走りで首位を守る
そんなチーム全員の思いを胸に ENEOS X PRIME GR Supra のステアリングを握った山下健太だが、コンディションの変化からか、スティント序盤はフロントが、そして少しずつリヤのグリップ感が減るのを感じた。 ペースが鈍るなか、後方から2番手に浮上した#36 GR Supraが迫った。 50周を過ぎる頃になると、2台の差は1秒を切り始める。そして61周目、いよいよ#36 GR Supraが山下に並びかけた。しかし、山下と#36 GR Supraを駆る坪井翔選手は、これまでも長年切磋琢磨してきた間柄。どこからどう攻めてくるか。手の内を知っている。山下は絶妙なラインどりでディフェンスした。
#36 GR Supraはあらゆるパター ンで ENEOS X PRIME GR Supra に仕掛けるが、山下は必死の抵抗をみせる。最高の仕事をしてくれたメカニックたち、セットアップを仕上げてくれたエンジニア、そして新チームのこれからのために。その鬼神の走りはピットで見守る大嶋、チーム全員、そしてファンの感動を呼ぶことになる。 迎えた 75 周目。アトウッドカーブからの立ち上がりで加速に乗った #36 GR Supra は、ヘアピンでいよいよアウトから仕掛けにかかった。山下も決してダーティではないラインを 取りながら防戦にかかる。わずかなが ら #36 GR Supra に前に出られたか ......? チームは全員固唾を呑んでその瞬間を凝視した。
しかし、#36 GR Supra はヘアピンのブレーキングで大きな白煙を上げると、減速しきれずアウト側のグラベルにオーバーランを喫してしまった。 そしてその様子を視界の片隅に収めながら、山下は冷静に通過していった。 決してその後も楽ではない苦しい状況ながら、これで ENEOS X PRIME GR Supra のリードは盤石なものに なった。終盤、山下は2番手以下とのマージンをコントロールすると、紅く染まりかけた岡山の空の下、82 周の長丁場を走りきり、2年ぶりの SUPER GT 開催を待ちわびた岡山のファンから万雷の拍手を受けながら栄光のチェッカーフラッグを受けた。

■ここからがスタート
新体制で 2021 年のスタートを切った TGR TEAM ENEOS ROOKIE にとって、開幕戦はこれまでの努力が優勝という最高のかたちで結実することになった。 ピットでその様子を見守り、激闘を大嶋、山下、そしてプレッシャーをはねのけ大仕事をやり切ったエンジニ ア、メカニックたちと喜び合ったチームオーナーの豊田章男も、この結果に最高の笑顔をみせたが、「まだこれからがスタート」と発破をかけた。チームが目指すシリーズチャンピオンという目標に向け、まだ第一歩を踏み出したばかりなのだ。

【ROOKIE Racing】

MORIZO's Voice

新体制となった TGR TEAM ENEOS ROOKIE にとって、 今回は初めての SUPER GT レースウイークとなりました。
このレースも本当に僅かな差で勝敗が決まる戦いです。
公式予選ではコンマ1秒差でポールポジションを逃し、 ドライバーはもちろん、チーム全員が悔しい思いをしました。
「そのコンマ1秒の悔しさを、ドライバー、エンジニア、メカニック、スタッフ...... チームみんながそれぞれの努力で詰めることができれば勝てる......」
「コンマ1秒を縮める戦いをしよう」
と決勝前、チームのみんなと誓い合いました。今回は、みんながその役割を果たし、ワンチームで掴み取れた勝利だと思います。

我々は新しいチームです。今までモータースポーツに携わっていなかった人も参加しています。 まわりからは“素人集団”と揶揄されたこともありました。
ドライバーの大嶋と山下はもちろん、メンバー全員、そんな声に負けず、本当に良くやってくれました。 そんな新興チームと一緒に戦おうと言ってくださったスポンサーの皆さまにも深く感謝申しあげたいと思います。おかげさまで初戦を勝利でスタートすることができました。 しかし、まだまだこれからです。より厳しい戦いが待っています。 やるべきことはたくさんあります。 チームのみんな、これからもワンチームで戦っていきましょう!
ワンチーム! ジャンボ!

そして、今日は、もうひとつ嬉しかったことがありました。 ひさびさにファンの皆さまが観ている前でレースができたことです。 今までのように間近でコミュニケーションは取れずともファンの笑顔を見て走るドライバーたちは、やはり嬉しそうでした。 ファンの皆さまの笑顔がモータースポーツを支えていると実感した週末です。

TGR TEAM ENEOS ROOKIE はファンの皆さまにもっと笑顔になっていただけるようなレースを続けてまいります。
ファンの皆さま、笑顔のご声援ありがとうございました。 引き続き、応援よろしくお願いいたします。

【ROOKIE Racing】

ドライバー/監督コメント

■大嶋 和也
本当に良かったです。レース序盤にトップに立って、楽な状態で山下選手にバトンタッチしたいと思いましたが、GR Supra 同士でそう簡単には抜けない状況でした。ピットイン時は「ここから先はもう任せた!」という気分でした(笑)。 ピットで前に出てからは山下選手がもう少し良いペースで走れるとは思いましたが、予想以上に辛そうだったので、前半スティントと何か変化したのかなど 見つけなければなりませんし、ギリギリで勝つことはできたものの、#36 GR Supra の方が速さがありましたし、しっかりミーティングして、富士でまた勝てるように準備していきたいと思います。正直昨年は予選でいつも辛くて、自信をなくしかけていたところでした。予選も、そして決勝も良い流れできていますし、最高のスタートが切れたので、今年は本当に楽しみですね。

■山下 健太
正直、レース終盤はずっとペースがキツかったですね。でも大嶋選手とチーム の皆さんが僕をトップで送り出してくれたので、『これは勝たなければならないな』と後半スティントに臨みました。レースの前半を見る限りペースは良いだろうと思っていたのですが、あまりペースが良くなく、ずっと #36 GR Supra の坪井選手に攻められるかたちになりました。そんななかでも最後までトップを守ることができて本当に良かったです。今回の第1戦では GR Supra 勢が上位を独占しましたが、他のコースではライバルも強いはずです。ただ次戦の富士は GR Supra が速いはずなので、しっかり次のレースでも優勝して、ライバルに対してマージンを稼いでおくことがチャンピオン争いを考えても重要だと思っています。

■高木 虎之介
公式テストではここまでの雰囲気はありませんでしたが、クルマもすごく順調 に仕上がってくれました。エンジニアにも感謝していますし、大嶋選手が昨年1年頑張ってくれて、ここまでで最高の仕上がりになったと思います。またメカニックたちも新人ばかりでしたが、混乱のなかでも素晴らしい仕事をしてくれたと思います。後半の山下選手もなんとかしのいでくれたことで、勝つべきレースをちゃんと勝ちとることができましたし、次戦の第2戦富士も長いレースですから、またチーム全員がしっかり団結し、好結果を残せるように頑張っていきたいと思っています。TGR TEAM ENEOS ROOKIE としての初優勝は本当に嬉しいですが、ドライバーふたりがもっと喜んでいると思うし、ホッとしたのではないでしょうか。
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著者プロフィール

SUPER GTは日本が世界に誇る自動車レースシリーズです。年間8戦行われるレースには、国産自動車メーカーをはじめ海外メーカーのマシンも数多く参戦し、国内外のサーキットを舞台にドライバーが熱い戦いを繰り広げます。公式サイトでは、SUPER GTに関する様々な情報をご紹介いたします!

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