【フットサル日本代表/WEB取材】齋藤功一と橋本優也、引退した盟友の意志を背負う男・八木聖人。「『あいつらはすごかったんだぞ』と言えるのは僕とマサしかいない」

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【高橋学】

3月25日から4月9日まで、千葉県・高円宮記念JFA夢フィールドで長期トレーニングキャンプに臨む日本代表。今秋に予定されるワールドカップは、その出場権を争うはずのAFCフットサル選手権の中止が決まり、W杯本大会の出場自体が不透明ではあるが、ブルーノ・ジャパンは、過去最高成績(ベスト8以上)を目指して活動を続けている。

2020年に開催されるはずだったW杯が延期したことでチャンスを手にしているのが八木聖人だ。彼は「当落線上にいることは理解している」と語りながらも、虎視眈々とその舞台を狙う。2018シーズンに齋藤功一、2020シーズンに橋本優也という、名古屋サテライト時代から切磋琢磨してきた2人が“早すぎる”引退を決断。そのことは逆に、八木が第一線で戦い続ける理由にもなったという。彼は今、何を想いながら、ピッチに立つのか。7日、14日目の午前練習を終えた八木聖人がオンライン取材に応じた。

自分は、“パスありき”の仕掛ける選手

──長期合宿も終盤ですが、ここまで取り組んできてどうですか?

個人的にも、ここまで長い期間の代表キャンプは初めて経験するので、どうなるかわからなかったのですが、名古屋でも事前に準備してから入れたので、そこまで苦労することなく取り組めました。

──どのようなことを意識して入ったのでしょうか?

キャンプの開始前はチームもオフで、ボールを蹴る機会がなかったので、心肺機能や体のコンディションを整えることを意識してオフを過ごしたのでスムーズにキャンプに入れました。やはり、ボールを使うトレーニングも大事ですが、そこは練習で少しずつつかんでいく感じかなと。個人的には、大きなケガも経験しましたし、無理をしてまたケガをすることだけは避けたかったので、練習のスタートのところから、徐々に入ることを意識していました。

──ブルーノ監督からは、どのようなことを求められていますか?


ディフェンス面は前からのプレスです。攻守の切り替えは長所でもあるので意識していますし、ある程度、安定してできています。むしろオフェンス面のほうが課題です。得点に絡むところで違いを見せていかないといけません。

──ワールドカップが近づいていますが、その舞台をどのように捉えていますか?

W杯は僕の夢ですし、通常通り(2020年に)開催されていたときよりも、今のほうがチャンスが増えたと思います。立場上、自分は選ばれるかどうかという当落線上にいることは理解しているので、大会期間までに爪痕を残して、悔いが残らないように過ごせたらと思います。

──今回の合宿でアピールできている感触はありますか?

先ほどお話ししたディフェンスについては、ブルーノ監督が求める戦術には強度の高いプレスが前提にあります。ブルーノ監督からも言われていますが、そこは安定してできていると思います。だからこそ、攻撃面で違いを見せないといけないですし、もう少しやらないといけないところです。

──名古屋とは求められることが違う難しさもありますか?

名古屋のほうが、やることは明確かもしれません。もちろんディフェンスもしますが、もう少し攻撃面、仕掛けることにフォーカスできています。代表には、決められた戦術があり、強度の高いディフェンスがあり、その上で攻撃の違いを見せないといけないので、考えることも多い。なかなか自分の特徴を出すのに苦労する場面はあります。

──八木選手は攻撃的な選手ですし、攻撃面への課題のほうが強いというのは意外にも感じます。自ら仕掛けるところなど、どこを改善することでもっと違いを出していけると思いますか?

たしかに僕は仕掛けるタイプですが、“パスありき”の仕掛ける選手でもあります。言語化が難しいですが、ガンガン仕掛けるというより、いろんな選択肢があるなかで仕掛けるタイプです。パスもできるという場面で、それをフェイントにして仕掛けて、相手を抜いていくようなプレーですね。ただ、代表は強度が高く、パスを受けた時点で、相手ディフェンスの位置もすごく近い。どちらかといえば、自分一人で抜いていくタイプではないので、そこを自ら突破したり、はがしたりすることがもっとできたら、より“仕掛けられる”と思っています。

──そこはまだ時間を要すところですか?

日によって、良い時も悪い時もあるというか、当然、良い形でボールをもらえると仕掛けることも簡単ですが、強度が高いトレーニングのなかで毎回のように良い形を出せていないので、それをいつでもできたらと思っています。

──代表には八木選手よりも年下の選手が増えていますが、コミュニケーションも取っていますか?

自分より上の年齢には名古屋の選手が多いので、彼らをはさんで、あまり話していなかった選手との仲が深まっていますし、そこは先輩にも助けてもらいながらコミュニケーションできました。後輩とも少しずつ話をする機会が増えているので、先輩がやってきたことを僕もやれるように、見習いながら取り組んでいけたらと思います。

盟友・橋本優也の引退には「納得していない」

──昨シーズンは、以前の齋藤功一さんに続いて、橋本優也選手も引退されました。名古屋サテライト時代から一緒に戦ってきた仲間が離れてしまいますが、何か感じていることはありますか?

今でも、納得していません。今からでも復帰したらいいと思っています。やはり、寂しいですね。マサ(平田・ネト・アントニオ・マサノリ)はいますが、功一と優也とマサとは、一緒に代表でやりたいと思っていましたし、名古屋でも、一緒に1stセットで出ようと話していた仲間です。それは実現できませんでしたが、同じ境遇を味わい、進んできた道も似ていて、苦しいときの思いもよくわかっているので、引退の決断には納得できないですが、優也の思いは、なんとなく想像できます。マサと僕がその気持ちを背負っていかないといけないですし、「あいつらはすごかったんだぞ」と言えるのは僕とマサしかいません。頑張りたいと思います。

──事前に相談を受けていたんですか?引退を聞いて何と伝えたのでしょうか。

相談はありませんでしたね。引退のリリースが出る前に話しましたが、もう決断していました。契約更改の時期も重なっていたので、悩んで、決めたことだと思います。「引退する」と言われて僕は少しパニックになり、何を話したのかはあまり覚えていません。後からジワジワと、「納得いかない」という感情がわいてきました。おそらく引退を聞いたときは、「優也が決めたことだからしょうがない」と、伝えたのかなと思います。
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