Rise Together, Rise Again〜もう一度、アガろう。共に、アガろう〜 #0遥天翼

茨城ロボッツ
チーム・協会

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

取材・文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

一向に止む気配を見せない新型コロナ禍。Bリーグに所属する多くのクラブでも難しい状況が続いている。茨城ロボッツも選手・スタッフに新型コロナウイルスの陽性判定者が出たことで、チームは一時的に活動を止めることとなった。その中で、選手やコーチたちは何を見つめ、残る戦いに備えようとしているのか。今回は、コート上で熱き姿を見せ続けてきた、#0遥天翼に話を聞いた。

「まず、見えないものが相手」

インタビューの最初、コロナ禍に見舞われたこと、またそれを経てチームが活動を止めたことについて、率直な感想を遥に尋ねると、「仕方のないこと」とした上で、こうした答えが返ってきた。

―やはり、ウイルスは侮れないものですか

「そもそも、目に見えないものを相手にした話ですし、選手として、行動を徹底していてもかかってしまう病気だったので、ここまで来ると、かからないことを祈りながら生活するしかないという感じでしたね。」

―チームは行動制限の期間中、毎日ミーティングを行っていたと聞いています。どんな話題が出ていたのか、教えていただけますか

「ミーティングは3人から4人と少人数で行うのですが、実はチームメイト同士で話していた部分としてはたわいのない話が多かったんです。『昨日何してたの?』とか『今日は何をするの?』といったぐらいです。バスケができる状況から遠ざかっていたので、『再開後にどう戦おう』というオンモードの話よりは、『試合、どうなっちゃうんだろうね』というような話の方が多かったですね。一方ではワークアウトもやっていましたし、コーチ陣と再開後に戦うであろう仙台さんや越谷さん、群馬さんのビデオを見ながら、戦術的なポイントを共有したり、フォーメーションについての打ち合わせもしました。本当に、離れていてもできることを工夫してやっていただけたと感じています。」

―戦術ミーティングでは選手同士での話し合いも活発でしたか

「NBAのサンアントニオ・スパーズの試合のビデオを見る時もあったんですけど、『スパーズはここが強いよね』とか、『どうやったらこうしたプレーに近づけるか』とか、結構熱の入った議論になりました。選手たちも、今できることを必死にやっていると思います。」

―体を休める時間に充てた選手もいたはずです。遥選手にとってはどうでしたか

「ポジティブに考えれば、いいリフレッシュにはなったかなと思います。ケガをしそうだった選手、ケガが治りかけていた選手にとっても、いい時間だったんじゃないかとは思っています。とはいえ、体力面や筋力面では、この2週間でできることは限られていたので、ちょっと不安ではあります。体育館で対人トレーニングをやるのと、家で1人でワークアウトするのとでは、強度に関して天と地ほどの差があります。心肺機能や筋力がどこまで維持できているのかは、実際にやってみないと分かりません。」

取材の中では、「1児のパパ」としての顔が覗く瞬間もあった。

「実は、バスケの日々が無くなったら無くなったで、子育てに奮闘していたんです。だからSNSとかも全然見られなかったんですよね。行動制限の中では、当然子どもを外に連れて行くこともできないので、お風呂をプールに見立てて遊ばせてみたり、家の中で一緒に遊んだりもしましたけど、そろそろネタ切れですね(笑)。ただ、練習が無い分、子育てに全力を注げるのは刺激になりました。」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

「去年とは状況が違う」

昨シーズン、当時B3リーグの東京サンレーヴスに所属していた遥。チームがコロナ禍で満足に活動をできない中でオフシーズンに突入し、そこからロボッツへの移籍を決断している。そうした経験を経て感じることがあったかと尋ねると、彼は「状況が違って比較はできない」と、冷静に答える。

―去年のような経験をして、感じ方が変わった部分はありましたか

「あの当時とは状況が違いますし、例えば災害みたいなこととも状況が違います。今回に関していえば、(4月1日の取材時点で)あと3日ほど頑張れば元の生活に戻れますし、行動制限の期間が終わればすぐ試合があるという事実もあるので、何が何でも再開初戦に向けてコンディションを戻さなければならないという、プロとしての使命感や責任感がありますね。チームが活動を止めるのは2週間だけの話なので、いかに気持ちを切らずに過ごすかを考えています。毎日のようにZoomを使ってみんなで話して、『乗り越えていきましょう』という話をしていました。(ゼネラルマネジャーの)上原さんからは、『普段のバスケットへの姿勢よりもより徹底して、自分のできることをやる覚悟じゃないとダメだよ』という話もされたので、選手個人個人でも、そこはやっていると思います。」

―再開からフルブーストで駆けていくようなチームになると、期待してもよろしいでしょうか

「そうですね。僕自身も期待しています。離れている中で一人一人が自分たちを律しているのかという点は、その選手次第なので、いざ集まったときに少しでもいいコンディションであることを祈って、やっていきたいと思います。」

―シーズン再開後については、タフな相手との戦いばかりが待ち受けると予想されています。新たな戦いへの意気込みをお願いします

「正直、一番はケガをしたくないというのがあります。2週間行動制限を受けたあとだと、不安はありますよね。まずはケガをせず、ただ気持ちはしっかりと準備をしていけたらなと考えています。」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

「できることをやる。それは変わらない」

取材の最後に、チーム再始動後の抱負を尋ねた。遥はチーム活動が再開するから、ということではなく、これまでシーズンを過ごしてきた中で見えた課題を遂行できるかが鍵だと話す。

―シーズン再開後、遥選手としてはどのような役割を果たしていきたいですか

「今までも、これからもそうですが、僕のできることをただやるだけだと思っています。今までも、僕なりに全身全霊をこのチームに捧げてきたと感じています。今後も、それを引き続きやるだけだと思っています。他の選手たちも理解している課題はあるはずで、例えばリバウンドを取りきるか、いかにチームが劣勢に立たされても踏ん張るか、コミュニケーションを取るかといった具合に、課題は明確なんです。その課題をしっかり、チームでこなしていけば、また状態を上げられると思うんです。こうしてチーム活動は一時的に止まってしまいましたが、止まる前から取り組んでいたことを、またチームが再始動したときに遂行できればいいんじゃないかと思います。」

―チームが活動できない間、ファンの皆さんの温かい励ましもありました。再開に向けて、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

「行動制限をしていた期間中、リーグ戦の再開について期待する声があったのは目にしていました。『そうだよね』とか、『早く試合を見せたいな』という想いが出てきていたのも事実です。だからこそ、またリーグ戦へと戻ったら、また見に来てほしいとも思いますし、会場に来られた方は、ぜひ選手の名前や写真が入ったタオルを掲げてほしいなとも思います。僕らとしても、皆さんの前でプレーすることを楽しみにしたいと思います。」

これまで、今シーズンのロボッツを見てきた人たちは、遥が幾度となくチームにエナジーを注ぎ込む様を見てきただろう。シーズン再開とともに、あのエナジーに満ちあふれ、体を張ってプレーする姿が戻ってくるはずだ。
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著者プロフィール

水戸市・つくば市を中心とする茨城県全域をホームタウンとするプロバスケチーム 2013年7月 「つくばロボッツ」としてクラブ創設 2014年11月法人設立 2016年 拠点をつくば市から水戸市に移し、「茨城ロボッツ」としてB2リーグに参入 事業面では、今年1月には、Bリーグ初のクラブによる「スポーツまちづくり会社」である「株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメント」を設立 官民連携で開設した「まちなか・スポーツ・にぎわい広場(M-SPO)」の運営等を行い、地域にある様々な魅力と資源をつなぎ合わせる「地方創生」をコンセプトにした活動にも注力している。

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