「ノーサイドのその先に」クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム

チーム・協会

【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

死力を尽くした2018年12月1日

スタンドがオレンジ色だった。
まるでホームのような雰囲気だった。
野球やサッカーではよくあるような光景かもしれない。
けれど、それがラグビーで、しかも自分のチームで実現される感動はひとしおだった。

2018年12月1日の秩父宮ラグビー場でのサントリーサンゴリアス戦、キックオフ直前に観客席に着くと、バックスタンド右側半分以上がオレンジ色に染まっていた。
期待と興奮が入り混じったピリピリとした空気が肌を刺した。

2018年12月1日 クボタスピアーズvsサントリーサンゴリアス戦 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

見ている側で、この感動だ。
フィールドで戦う選手にとっては、それがどれだけ背中を押したか計り知れない。

実際、スピアーズの戦う姿は勇敢だった。
前半をビハインドで終えたスピアーズは、後半にかけて徐々に盛り返すと、試合終盤に2点差まで詰め寄った。
その後のリスタートからのラスト1プレーを、自陣から22フェイズに渡る攻撃を見せ、最後まで逆転を信じ、ゴールラインを目指した。
しかし、スコアボードは動くことがなく、ノーサイドの笛が鳴らされた。

2018年12月1日ノーサイド直後のスピアーズの選手たち 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

死力を尽くした。
その言葉がこれほど当てはまる姿はなかった。
普段からボディーランゲージを意識の細部まで刷り込まれた選手たちが、空を見上げ地面に倒れこんだ。

しかしその後、すぐに立ち上がると、いつものように相手チームに挨拶をして、レフリーに感謝を伝え、ファンに手を振り、ロッカーに帰った。
だがその表情はいつもとは違かった。

「悔しい」「残念」では足りない落胆した表情を浮かべる選手たち。
その選手たちに対して当時就任3年目のフランヘッドコーチは、ロッカールームで選手にこう語りかけた。

「私が就任1年目、今日と同じ秩父宮ラグビー場で東芝と試合をしたことを覚えています。今日と同じように勝利に向かって戦いました。けれども、あと少しの所で負けた。その試合後の、選手の表情は笑顔でした。『東芝だから負けてもしょうがない』そう思っていたのかもしれません。
だが、それは昔のクボタです。今のみんなの表情を見てほしい。
今日はもう少しで仕留めるところでした。仕留めることこそが私たちがやりたいことです。負けてハッピーでいることなんてありえない。なぜならこのジャージを着てやりたいことは勝つことだから。
Proud Billboard(誇りの広告塔)になることだから。
今日はいいステップでした。特に後半のみんなのパフォーマンスはProud Billboardでした。私たちにはまだまだ達成したいゴールがあります。だからもう顔を上げましょう。」

フラン・ルディケヘッドコーチ 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

あれから2年と4か月。
このフランヘッドコーチの言葉で前を向いたチームは、最後のトップリーグを戦っている。
そして迎えた第6節はサントリーサンゴリアスとの対戦だ。
クボタスピアーズは開幕から5連勝、対する相手も5連勝。全勝対決で秩父宮。

敗戦もあった。コロナ禍もあった。退団した仲間も入団した仲間もいた。
けれど、私たちクボタスピアーズが前を向いて戦い続けるのは「達成したいゴール」があるからだ。

あの12月1日の秩父宮の試合が、本当の意味で「いいステップ」と言えるため、チームは戦い続ける。
「死力を尽くす」ではまだ足りない。
「いい試合」で終わるなんてありえない。
スピアーズにとって本当に欲しいのは、勝利という確かな結果だ

チームで戦い勝利する「一個飛ばしのグリーンのビブス」

今季クボタスピアーズは熟練されたベテランと若手のバランスが絶妙だ。
スターティングメンバーで言えば

4番 デーヴィッド・ブルブリング
6番 トゥパ フィナウ
7番 ピーター“ラピース”ラブスカフニ
8番バツベイ シオネ
9番井上大介
10番 バーナード・フォーリー
12番 立川理道
14番 ゲラード・ファンデンヒーファー
といった30代の選手が、経験豊かなプレーで試合展開を読み、ゲームをコントロールしてくれるだろう。また、注目の試合であることや、相手が攻撃力に優れたサントリーサンゴリアスであることを考えると、80分間なにが起こるかわからない。そんな中、こうした世界で修羅場をくぐってきた選手たちがいることは心強い。

デーヴィッド選手は第2節以来の出場。持ち前のハードワークに期待 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

ただこの試合に勝つためには勢いとエナジーが不可欠だ。そこで期待したいのは
3番 山本剣士
11番 山崎洋之
15番 金秀隆
といったルーキーたち。この数試合で安定感もさらに増し、自らの長所をより活かせるようになった。
試合にでることで実践から学び、試合ごとに成長するこうした選手たちの活躍は見逃せない。

キックの使い方が巧みな相手に対して、フルバック金選手はどのようなパフォーマンスを見せるか 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

またゲーム展開や当日の天気を予想しても、消耗の激しい試合になることは避けられない。
そうした点を考えるとリザーブの投入は、非常に重要で、今回もインパクトと安定感が揃った布陣となっている。

リザーブのどの選手に焦点を当てても、その魅力とチームに与える影響は語り尽くせないが、なかでも
16番杉本博昭
23番ライアン・クロッティ

の2人のチームマンを紹介したい。

杉本選手は、この試合出場すればトップリーグ50試合出場となる 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

ニュージーランド代表48キャップのクロッティ選手 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

この試合はチームの真価が試される。だからこそ、チームとして戦うことが重要だ。

相手に脅威を与えるどのプレーも、そのバックグラウンドにはチームの存在がある。
ここでのチームとは、フィールドで戦う23人だけではなく、船橋のグラウンドで共に練習に励んだチームメイトの存在のことだ。

ひとつひとつのプレーが、グラウンドで、ミーティングで、オフフィールドで、チームが切磋琢磨し、積み上げた結晶だ。

だからこそ、クボタスピアーズはチームで戦うことを重要視する。

今季クボタスピアーズの最大の売りは「チームワーク」だ。

チームフォトグラファーが、練習を撮影していて、こんなコメントをくれた。

「練習中の最後の円陣で、杉本選手やクロッティ選手がわざと試合に出場していない選手の間に入り、円陣を組んでいました。いつも当たり前にやっていることかもしれませんが、この一個飛ばしのグリーンのビブスがチームの強さの証ですね。」

練習中の円陣の様子(緑のビブスが「ボルツ」) 【クボタスピアーズ トップリーグ2021 第6節 試合前コラム】

通常チーム練習は、その週の試合に出場するメンバーと、出場しないメンバー(クボタスピアーズでは今季「ボルツ」と呼んでいるので、以下「ボルツ」と記載)に分かれて試合形式の練習を行う。

どうしても試合メンバーとボルツで固まってしまう円陣(ハドル)だが、チーム練習の最後にはあえて間に入り肩を組み合う。

チーム内でリザーブ選手は、難しい立ち位置だ。
モチベーションの持ち方やパフォーマンス面など、スターティングメンバーやボルツメンバーとは、また違った苦悩がある。
それにも関わらず、こうした小さいところからチームのために行動する。
今季のクボタスピアーズとは、この円陣が示す通り、チームが固く繋がっているチームだ。
その裏には、杉本選手やクロッティ選手のようなチームマンの存在がいる。


クボタスピアーズは、チーム全員でこの第6節を勝利する。
オレンジ色に染まった秩父宮、あの日越えられなかったゴールを目指して。
あの日のノーサイドの先に、この試合の勝利がある。

トップリーグ2021 第6節 クボタスピアーズvsサントリーサンゴリアス
4月3日(土)14時キックオフ



文:クボタスピアーズ広報 岩爪航
写真:チームカメラマン 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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