5球団体制となった台湾プロ野球が開幕 CPBL主導で「最強の代表」結成へ
【(C)中華職業棒球大連盟CPBL】
蔡英文・総統も観戦の開幕戦は中信兄弟が制し、林威助・新監督の初陣飾る
台湾では昨春、政府の「先手先手」の取り組みにより、新型コロナウイルスの感染拡大の抑え込みに成功、台湾プロ野球がプロ野球リーグとして世界に先駆け開幕、観客を入れて試合を開催したことについては、ご記憶の方もいるだろう。その後、CPBLによる防疫体制の徹底もあり、台湾シリーズは入場者数を収容人員の上限78%まで緩和して開催した。
しかし、昨年12月、台湾では約8カ月ぶりに市内感染が発生、今年1月には院内感染から市内感染が複数確認されたこともあり、台湾社会に緊張が走った。CPBL各球団も春季キャンプや練習試合の非公開を決めたが、その後、抑え込みに成功、台湾プロ野球も予定通り開幕を迎えた。
3月13日、台湾南部・台南市の台南球場で2021年シーズンの開幕戦、中信兄弟対統一セブンイレブンライオンズが行われた。恒例により昨年の台湾シリーズの対戦カードとなった開幕戦には、蔡英文・総統もかけつけた。蔡・総統は試合前、統一の林岳平・監督らにチャンピオンリングの贈呈を行い、バックネット裏で観戦を楽しんだ。久しぶりの台南球場での開幕戦ということもあり、この日、同球場には収容人員の上限78%いっぱいとなる7800人のファンがつめかけた。
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選手からウイニング・ボールを渡された林威助・監督は「嬉しい、興奮している。選手たちは覇気を持って戦ってくれた」と喜びを素直に表した。ただ、「まだ一試合目に過ぎない。明日からまた新たなスタートだ」と気を引き締めることも忘れなかった。
翌日、林・監督のもとには、台湾観光協会大阪事務所、甲子園歴史館、阪神ファンの有志などから、お祝いの花が届いたそうだ。
復活の味全は20歳右腕が圧巻の投球みせ2戦目で白星、田澤純一が試合締める
味全は22年ぶりとなる一軍公式戦の先発に、昨年のドラフト全体1位指名、MLBやKBOでのプレー経験のある左腕、王維中を立てた。味全は3回にロセル・ヘレーラの適時打で先制したものの、王維中は4回から制球を乱し、5回途中、同点に追いつかれた場面で降板、後続投手が勝ち越しを許し、味全は2対3で敗れ、王維中は負け投手となった。なお、王維中は16日、手首の張りを訴え二軍に降格、幸いにも軽症であったが、26日の本拠地開幕戦(天母)の登板は回避し、4月初旬に復帰することとなった。
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果たして味全は既存4球団にどこまで食らいついていけるのか。イニングイーターとなる投手が少なく、野手も経験の少ない若手主体であるなか、実質的に一軍「初年度」である今季から安定した成績を残すことは難しいだろうが、台風の目となることを期待したい。
なお、台湾プロ野球では昨季の後期シーズンから反発係数が抑えられたボールが使用されたが、今季はさらに反発係数の低いボールが使われている。飛びの違いを指摘する声は既に選手からも上がっており、ホームラン数の減少により、試合展開にも変化が見られそうだ。
五輪世界最終予選に向けプロアマトップ会談、プロ・アマがタッグ
台湾代表にとって、五輪出場権をかけた最後の戦いとなるのが、台湾、中国、オーストラリア、オランダ、アメリカ大陸予選2位及び3位チームの計6チームが残り1枠を争う世界最終予選(6月16日〜20日・台湾台中など)である。
CPBLの蔡其昌・コミッショナーはかねてから、世界最終予選、五輪本大会に向け、最強のナショナルチームを結成するという方針を示し、そのためには、CPBL(中華職業棒球大連盟)と、アマ球界を統括するCTBA(中華民國棒球協會)との団結が必要だと訴えてきた。
蔡・コミッショナーは3月3日、CTBAの辜仲諒・理事長を訪ね、世界最終予選について話し合いを行った。そして、2019年に台湾のスポーツを管轄する教育部體育署、CPBL、CTBAの三者で協議、合意した内容通り、ナショナルチームの選手選考及び合宿、大会への出場、大会運営などについて、CPBLが全面的に請け負うことが決定した。
CPBL蔡其昌コミッショナー(左)とCTBA辜仲諒理事長(右) 【(C)中華職業棒球大連盟CPBL】
蔡・コミッショナーは会見後、まずCTBA辜・理事長の全面的な協力に感謝、そして、その道のりは困難ではあるものの、最終予選の突破、そして野球競技初となる五輪での金メダル獲得という目標を達成したい、と述べた。
課題の先発投手陣戦力はアップ
これまで微妙な関係にあったプロアマ両組織が手を結び、CPBL主導により最強のナショナルチームが結成される方針で合意に至ったことは、台湾球界にとって追い風といえる。台湾の野球ファンは、もともと国際大会への関心が非常に高い。五輪本大会での金メダル獲得とまではいかなくても、激戦が予想される世界最終予選を突破し、五輪出場権獲得となれば、台湾での野球人気が盛り上がり、CPBLの観客動員数の増加といった波及効果も期待できそうだ。
文・駒田 英
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