5球団体制となった台湾プロ野球が開幕 CPBL主導で「最強の代表」結成へ

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【(C)中華職業棒球大連盟CPBL】

蔡英文・総統も観戦の開幕戦は中信兄弟が制し、林威助・新監督の初陣飾る

 台湾プロ野球の2021年シーズンが開幕した。今季の台湾プロ野球は、味全ドラゴンズが22年ぶりに一軍に参入し5球団体制となったほか、林威助氏の中信兄弟一軍監督就任、田澤純一の味全入団など、多くの話題がある。開幕数試合から、これらの話題を中心に紹介しよう。

 台湾では昨春、政府の「先手先手」の取り組みにより、新型コロナウイルスの感染拡大の抑え込みに成功、台湾プロ野球がプロ野球リーグとして世界に先駆け開幕、観客を入れて試合を開催したことについては、ご記憶の方もいるだろう。その後、CPBLによる防疫体制の徹底もあり、台湾シリーズは入場者数を収容人員の上限78%まで緩和して開催した。

 しかし、昨年12月、台湾では約8カ月ぶりに市内感染が発生、今年1月には院内感染から市内感染が複数確認されたこともあり、台湾社会に緊張が走った。CPBL各球団も春季キャンプや練習試合の非公開を決めたが、その後、抑え込みに成功、台湾プロ野球も予定通り開幕を迎えた。

 3月13日、台湾南部・台南市の台南球場で2021年シーズンの開幕戦、中信兄弟対統一セブンイレブンライオンズが行われた。恒例により昨年の台湾シリーズの対戦カードとなった開幕戦には、蔡英文・総統もかけつけた。蔡・総統は試合前、統一の林岳平・監督らにチャンピオンリングの贈呈を行い、バックネット裏で観戦を楽しんだ。久しぶりの台南球場での開幕戦ということもあり、この日、同球場には収容人員の上限78%いっぱいとなる7800人のファンがつめかけた。

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 試合は、中信兄弟は昨年のシーズンMVP、ホセ・デポーラ、統一は20歳の豪腕、古林睿煬が先発、投手戦が期待されたが、両投手共にピリッとせず、デポーラは4回3失点、古林睿煬は2回3失点で早々と降板した。その後、6回表に張志豪の2ランで点差を広げた中信兄弟が、8回表にも、許基宏の満塁からの走者一掃二塁打などで4点を挙げ10対4で大勝、今季から一軍監督に就任した林威助・新監督の初陣を飾った。

 選手からウイニング・ボールを渡された林威助・監督は「嬉しい、興奮している。選手たちは覇気を持って戦ってくれた」と喜びを素直に表した。ただ、「まだ一試合目に過ぎない。明日からまた新たなスタートだ」と気を引き締めることも忘れなかった。

 翌日、林・監督のもとには、台湾観光協会大阪事務所、甲子園歴史館、阪神ファンの有志などから、お祝いの花が届いたそうだ。

復活の味全は20歳右腕が圧巻の投球みせ2戦目で白星、田澤純一が試合締める

 14日、台南球場では、統一と味全の試合が行われた。台湾プロ野球創設時の4球団の一つであった味全は、1999年、台湾シリーズ三連覇の直後に解散、2019年、20年ぶりにリーグに復帰し、昨年は二軍公式戦に参戦、レギュラーシーズン、チャンピオンシップをいずれも制した。

 味全は22年ぶりとなる一軍公式戦の先発に、昨年のドラフト全体1位指名、MLBやKBOでのプレー経験のある左腕、王維中を立てた。味全は3回にロセル・ヘレーラの適時打で先制したものの、王維中は4回から制球を乱し、5回途中、同点に追いつかれた場面で降板、後続投手が勝ち越しを許し、味全は2対3で敗れ、王維中は負け投手となった。なお、王維中は16日、手首の張りを訴え二軍に降格、幸いにも軽症であったが、26日の本拠地開幕戦(天母)の登板は回避し、4月初旬に復帰することとなった。

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 味全は17日、中部、台中市の台中インターコンチネンタル球場で中信兄弟と対戦した。二戦目の先発に起用されたのは20歳、MAX157キロ右腕の徐若熙だった。一軍初登板の徐若熙は最速154キロの直球とキレのいいチェンジアップを軸に、初回いきなり三者連続三振という立ち上がりをみせると、その後も中信兄弟打線から面白いように三振を奪った。まだ若く、また昨秋に怪我から復帰した状況も考慮し、3回2/3、62球で降板したが、11のアウト全てを三振で奪うという圧巻の投球をみせた。そして、7回表に2点を追加し4対0とリードを広げた味全は、8回裏、元埼玉西武の廖任磊が登板、無失点に抑えると、9回裏にはクローザーとして期待されている田澤純一が登板、田澤は二死からショートのエラー(記録は内野安打と悪送球)でランナーを二塁においたものの、続く三番の張志豪を中飛に打ち取り、記念すべきチーム一軍復帰後初勝利となる試合を締めた。味全にとっては、1999年10月20日以来、実に7819日ぶりの一軍公式戦勝利となった。

 果たして味全は既存4球団にどこまで食らいついていけるのか。イニングイーターとなる投手が少なく、野手も経験の少ない若手主体であるなか、実質的に一軍「初年度」である今季から安定した成績を残すことは難しいだろうが、台風の目となることを期待したい。
 
 なお、台湾プロ野球では昨季の後期シーズンから反発係数が抑えられたボールが使用されたが、今季はさらに反発係数の低いボールが使われている。飛びの違いを指摘する声は既に選手からも上がっており、ホームラン数の減少により、試合展開にも変化が見られそうだ。

五輪世界最終予選に向けプロアマトップ会談、プロ・アマがタッグ

 レギュラーシーズンと並行して、国際大会に向けた動きも始まっている。東京五輪予選を兼ねた2019年のプレミア12で、台湾代表は地元で行われたオープニングラウンドを突破、スーパーラウンドでもライバル韓国に勝利するなど健闘をみせたものの、全体の5位、アジア・オセアニアでは準優勝の韓国に次ぐ3位に終わり、五輪出場権獲得はならなかった。

 台湾代表にとって、五輪出場権をかけた最後の戦いとなるのが、台湾、中国、オーストラリア、オランダ、アメリカ大陸予選2位及び3位チームの計6チームが残り1枠を争う世界最終予選(6月16日〜20日・台湾台中など)である。

 CPBLの蔡其昌・コミッショナーはかねてから、世界最終予選、五輪本大会に向け、最強のナショナルチームを結成するという方針を示し、そのためには、CPBL(中華職業棒球大連盟)と、アマ球界を統括するCTBA(中華民國棒球協會)との団結が必要だと訴えてきた。

 蔡・コミッショナーは3月3日、CTBAの辜仲諒・理事長を訪ね、世界最終予選について話し合いを行った。そして、2019年に台湾のスポーツを管轄する教育部體育署、CPBL、CTBAの三者で協議、合意した内容通り、ナショナルチームの選手選考及び合宿、大会への出場、大会運営などについて、CPBLが全面的に請け負うことが決定した。

CPBL蔡其昌コミッショナー(左)とCTBA辜仲諒理事長(右) 【(C)中華職業棒球大連盟CPBL】

 なお、CPBLとCTBAは、今後、世界最終予選に向け定期的に会議を開催し、各項目の準備を行っていくという。また双方は、防疫優先という前提の元、中央感染症指揮センターの各防疫対策に呼応した上で、世界最終予選を全力で運営することについても確認した。

 蔡・コミッショナーは会見後、まずCTBA辜・理事長の全面的な協力に感謝、そして、その道のりは困難ではあるものの、最終予選の突破、そして野球競技初となる五輪での金メダル獲得という目標を達成したい、と述べた。

課題の先発投手陣戦力はアップ

 シーズン中の開催とあり、世界最終予選の台湾代表は、台湾プロ野球の選手が主体になると思われる。これに加え、昨年まで海外でプレーしていた江少慶や、元千葉ロッテの陳冠宇らが台湾プロ野球入りを表明、同予選への出場にも前向きな姿勢を示しているほか、味全と練習生扱いで契約している胡智為、元阪神の呂彦青ら現在FAの投手陣が加わる可能性もあり、課題とされてきた台湾代表の先発投手陣の戦力は、厚みを増しそうだ。

 これまで微妙な関係にあったプロアマ両組織が手を結び、CPBL主導により最強のナショナルチームが結成される方針で合意に至ったことは、台湾球界にとって追い風といえる。台湾の野球ファンは、もともと国際大会への関心が非常に高い。五輪本大会での金メダル獲得とまではいかなくても、激戦が予想される世界最終予選を突破し、五輪出場権獲得となれば、台湾での野球人気が盛り上がり、CPBLの観客動員数の増加といった波及効果も期待できそうだ。

文・駒田 英
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