【Jリーグ開幕直前】清水 ロティーナ監督 独占インタビュー

清水エスパルス
チーム・協会

【@S-PULSE】

日本であまり馴染みのないゾーンディフェンスで、これまで東京V、C大阪を上位に引き上げてきたロティーナ監督。エスパルスでの指導直後は、選手たちから「頭が疲れる」という話を耳にすることもあった。そう聞くと、一見とても難しそうなことに取り組んでいるように見える。ただ、インタビューを通して分かるのは、ロティーナ監督の話はとても分かりやすく、明快であるということだ。そのため、全く新しいことに取り組んでいるにも関わらず、選手たちはわずか1ヶ月ほどでコンセプトを理解し、今では表情にも自信が生まれているように見える。監督の求めるサッカーについて、そして開幕に向けての意気込みを聞いた。


――いよいよ開幕も間近になりました。チームの仕上がり具合は、どのように感じられていますか?

プレーシーズンは良い積み上げができていると思います。大きな怪我もなく、ここまで来ることができました。小さな心配としては、まだウィリアム(マテウス)が来日できていないとか、去年から怪我を抱えているヘナト(アウグスト)、エウシーニョも少し合流が遅れたということです。ただ、全体的にはトレーニングマッチなどを積み上げながら、良い状態を維持できているのではないかと思います。

――エスパルスからオファーが来た時は、率直にどのような気持ちでしたか?

セレッソで次のシーズンの更新がないと決まった時に、実はスペインで休もうと考えていました。実際にエスパルスから話を頂いてからも、決断するまでに2、3週間はかかりました。それでも、私のことをよく知ってくれている大熊(清GM)さんから話を頂いたということもありましたし、エスパルスは歴史があるクラブということで非常に興味が湧きました。また、クラブに明確な目標もありましたので、それに対して共感するところもありましたので、決断することに至りました。

――監督を受ける際の条件として、自分のなかで決めていることはありますか?

日本で仕事を始めてからも、いくつか外国のチームからもオファーをもらったことがあるのですが、自分が移籍を考える際に重要視していることは、まずはクラブのプロジェクトが明確なものであって、真剣にそこに向かおうとしているチームなのかどうか。それと、生活面のこともあります。私は家族もいますので、家族が安心して生活していけるのかということも考えながら決めています。実際に日本で生活を始めてみると、日本以上にここまで条件が整っているところは、なかなかないと思います。

――エスパルスのプロジェクトに共感できたのはどのような部分ですか?

明確に見えてきたのは、ここ数年下位に沈んでいた苦しい時期があったにも関わらず、クラブはしっかりと前を向いて、しっかりと補強して強くなっていこうという姿勢がはっきり見えたことです。

――チームは2年連続最多失点ということで、守備の再建というのが求められていると思いますが、まずどこを改善しようと思っていますか?

やはり失点を減らさなければいけないということは論理的に大事なことです。失点が多いというのは重要な問題であって、そこは課題としてしっかりと目を向けて仕事をしていかなければいけないと思います。失点が多ければ、それだけ順位が下がっていく可能性が高いということは事実です。そして、失点を少なくするために大事なのは、「気をつければ防ぐことができる失点」を防がなければいけないということです。戦術的なミスから生まれた失点、それと集中力の欠如から生まれた失点。この2つは無くさなければいけません。逆に相手のスーパーゴールだったり、トライした上で生まれる個人のミス、ディフェンダーやゴールキーパーの個人的なミスは試合中に起こり得るものです。しかし、先ほどの2点は防げる失点です。

――そうしたなかで、選手の立ち位置やポジショニングが重要になるということですか?

守備においては非常に大事な要素だと思っています。サッカーにおいて、全く同じ場面というのは起こることはありませんが、似たような状況は数多くあります。それは繰り返し起こるので、この場面ではこれが大事、この場面ではこれが大事というのを体に染み込ませなければいけません。

――日本では、ゾーンで守るという感覚はあまり馴染みのない考え方かもしれません。

自分はゾーンで守るということを好みますが、日本では少ないやり方だと思っています。「これが絶対に合っている」、「これが一番良い」ということはサッカーではなかなか言いにくいですが、他のチームはミックスだったり、マンツーマンだったり、そういった守備のやり方をやっているチームもありますし、場面場面で違ったやり方をやっていると思います。

――その判断を植え付けるためのアプローチ、声掛けなどはありますか?

私が求めていきたいと思っていることは、必ずその瞬間、瞬間の答えは1つではないということです。必ず2つ、3つ、4つといくつも選択肢を持っているようにしていることが大事であって、その中で決断するのは選手です。その選択肢の中から良い判断をするというのを求めています。もちろんボールを持った時の方が選択肢は広がりますから、ボールを持った時の選択肢はたくさんあってほしい。もちろん、ボールを持っていない時の選択肢は、もう少し狭まりますから、やり方は決まってくることもあると思います。

――その意味では選手から「頭が疲れた」という話が聞こえてきますが、それは監督からすれば選手たちが考えてくれているということなのですか?

そうですね。私が理想としているのは、練習で考えて、考えて、繰り返し考えていくことで、いざゲームの大事な場面になった時に、考えなくても自然と体が動く状態。そこまで研ぎ澄まされていることが大事だと思います。それがアドバンテージにつながって、相手よりも何秒か、コンマ何秒かもしれませんが、相手より先に体が動くことで我々にとってアドバンテージになると考えています。

――エスパルスは、注目されているチームの1つだと思いますが、どういうことでサポーターを驚かせたいですか?

期待してくれている人たちに対して素晴らしいものを見せたいというのが、我々が常に思っている願いです。エスパルスに関わる全ての人が、素晴らしいものを提供したいという気持ちで毎日臨んでいるはずです。

――開幕戦に向けて、どのようなテーマ、どのような目標を掲げていますか?

まず短いビジョンの目標としては、目の前の試合に全てを尽くすこと。毎試合、毎試合、目の前の試合に全てを尽くすことです。そして、シーズンを通しての目標としては、我々の目指すサッカーを選手たちに楽しんで欲しい。そして、サポーターの皆さんも楽しんで欲しい。そして、それが自然と良い結果を生むと信じています。その3つを遂行することができれば、我々の目標は自ずと手に入ってくると思います。


ISM編集部
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著者プロフィール

チーム名の「S-PULSE」は、「サッカー・清水・静岡」の頭文字Sと、サッカーを愛する県民、市民の胸の高鳴りとスピリットを表現するため、英語で「心臓の鼓動」を意味するPULSEを組み合わせて名付けられました。 1993年に「オリジナル10」の一つとしてJリーグ開幕を迎え、クラブの歴史がスタートしました。 こちらのサイトではチームや試合、イベントなど様々な情報をお届けいたします

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