【TOKYOism】FC東京 新井賢一オフィシャルカメラマン『In the moment』

FC東京
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In the moment/新井賢一オフィシャルカメラマン

クラブのオフィシャルカメラマンを務める新井賢一。FC東京との出会いは20年余年も前にさかのぼる。

99年にフリーランスのスポーツフォトグラファーとして活動をスタートさせ、Jリーグを中心に撮影。当時J2を戦うFC東京の試合にも足を運んでいた。

「撮りたいと思ったものは、自ら撮りに行く」――たとえ“仕事”になる見込みはなくとも直感と心の赴くままに。それは現在も新井カメラマンの信条でもあるという。

すべてはあの日、あの新潟から始まった

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99年11月21日 J2最終節・新潟陸上競技場

新井カメラマンは自ら志願して、遠くアウェイの地に赴いた。

「J2を戦うFC東京を撮っているうちに、なんとなく『可能性があるチーム』だなと感じていました。アットホームで勢いがあって、シーズン途中で失速もしたけれど、自分の中ではJ1に昇格するかもしれないという予感があり、ぜひとも撮っておきたいと」

とはいえ、当時のJ2リーグは一般的にはさほど注目されていたわけではなかった。最終節を迎える時点でFC東京の自力昇格は消滅していたこともあり、「カメラマンも少なかった」と振り返る。

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ところがチームは劇的な形でJ1昇格を果たし、新井カメラマンの写真は希少なものとなる。

「撮った写真をサッカー雑誌やクラブの発行物に使ってもらって。こうして自分の写真が紙面に載って人に伝わっていくんだなと初めて実感でき、うれしかったですね。だからあの試合を撮っていなければ、たぶん現在の自分はないはずです」

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そこからJ1に戦いの舞台を移したチームを追いかけるようになり、2002年にはクラブから依頼を受け、オフィシャルとしての仕事を手掛け始める。

「最初は2人体制で、自分はホームのデイゲームだけでいいと言われて。試合後に100枚納品してくれれば、あとは好きなように撮っていいよとも。だから自分の好きな角度だったり、撮りたい選手だったりをメインに自由に撮らせてもらっていました。“キテル(来ている)”選手を撮るのはホントに楽しくて。何かを起こしてくれる期待感があって、実際に何かが起こるから。それがカメラマンとしてのおもしろさ、醍醐味でもあったと思います」

その象徴的な選手がアマラオだ。

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「だから2003年、彼のラストゲーム(11月19日アウェイ柏戦)の時は泣きました。2点先行されたのに、後半からアマラオが途中出場してきて自ら2ゴールを挙げて逆転勝利をした試合です。もともとすごく寒くて雨も降っていてそれだけでファインダーは曇るし、涙は出てくるし(笑)。……ダメなんです、カメラマンとしてはダメですね(苦笑)」

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翌年、クラブとして初タイトルを掴んだJリーグカップ(当時ナビスコカップ)の時もあふれる感情を抑えられなかった。

「PK戦でGKの土肥さんが止めて、加地くんが決めた時にはもうウワーッと……。でもこの時はすぐ『撮らなきゃ!』って切り替えて(笑)。あの国立の一番上に登って表彰式を撮ったんです。上から見る景色はすごく新鮮でした」

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Every season, every where

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オフィシャルとしての仕事を重ね、時を経て現在は1人でホーム、アウェイに関わらず、全試合を撮影している。

「確かに撮り方は変わりました。以前は好きな選手、撮りたい選手だけ撮っていればよかったけれど、今ではクラブから求められるものもあり、様々な角度から、いろいろなものを抑えなければいけない。試合に限らず、選手の会場入りからスタジアムの外や裏側を撮ることもあって。デジタル化が進んで、スピードも求められるようになりました」


新井カメラマンは「それでも全然好きにやらせてもらっています」と笑顔を見せながらも、時にプレッシャーを感じることもあるようだ。

「建英の東京での初ゴールが期待された時に、自分もちょっと体調がおかしくなりました。なかなか決めることができない時期もあって、そのうちにどんどんカメラマンも多くなっていって、その時は吐き気もあったり(苦笑)。初めての経験でした」

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かつて数シーズンにわたってマッチデープログラムでは、オフィシャルカメラマンが選ぶこの1枚=『The Moment』というコーナーも担当していた。

「“その1枚”にこだわると、選ぶ視線も変わってくる。自分が学ぶことも多くありました」

そこには時に読者からダイレクトで反応が返ってくる喜びもあるという。

「スタンドで、サポーターの方やボランティアのおじさんからも『今回の写真良かったよ!』と言ってもらえたりして(笑)。単純にうれしかったですね」

自身がワクワクする瞬間はいつなのかとたずねると――。

「機材を積んで、家を出てスタジアムに向かう時がいちばんワクワクします。試合に負けると帰り道はつらい。特にアウェイの帰りはキツイですね(苦笑)」

ファン・サポーターとしての視線も持ち合わせながら、彼もともに熱く戦うカメラマンだ。

ファインダー越しに見続けるクラブの進化

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一千試合以上の時間をチームと共に過ごし、ファインダー越しにクラブの変遷と進化も目の当たりにしてきた。

「記憶に残ることはたくさんありますが、最初はアットホーム感があった深川から、小平グランドに移り、味スタができ、どんどん大きくなっていったという印象です」


転機として忘れられないのは、J2降格からの流れだとも。

「2010年、最終節の京都戦で、サポーターが会場入りの選手バスを待っていて、ものすごく声援を送っていたんです。東京のサポーターってたまにブーイングはするけれど、試合後にバスを囲んだり、ゲームの何時間も前から真剣モードになることは、それまではあまりなくて。だから本当に闘っているんだと感じました。でも反対に選手はガチガチで、試合をとおして何もできなかったように思います。あの異様な雰囲気は忘れることができません」

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しかし2011シーズンのJ2は、自身も不安だったところから、実際に戦ってみると紆余曲折がありながら、優勝をして1年でJ1復帰を果たせた。
「結果論だけれど」と前置きしながらも「いろいろな土地に行けることもあって楽しかったですよ」と率直な感想を述べる。

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それはとりもなおさず、その後に予想もつかない展開が待ち受けていたからでもある。

「その年の天皇杯優勝から、AFCチャンピオンズリーグ出場の流れはすごかったですよね。クラブワールドカップも目標としてでき、一気に世界が近くなったというか。たった2年ほどでこれほどの変化があって。本気でJ1でタイトルをめざすクラブに変わっていった気がします。99年、新潟市陸上競技場に行ったときは、まさかこんなチーム、クラブになるとはまったく思っていませんでした」

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Live in the moment

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新井カメラマン自身が魅了されるのは、スタジアムの臨場感であり、喜怒哀楽だ。

「アマラオやルーカスの試合中の厳しい表情から、ゴールや試合後の笑顔。梶山陽平のプレーもスーパーだと思いました。試合によって波があったけれど(苦笑)。だから東京以外でのプレーも見たくて、ギリシャまで撮りに行きました。ナオさんの引退セレモニーでは、こちらまでウルウルきたり。先日引退した吉本一謙もいろいろな意味で喜怒哀楽がありましたよね。つらい時もあったけれど、それはそれで思い入れができる。引退セレモニーを撮りに清水に行ったのですが、敵として戦っても、こうやってまた仲間として写真を撮ることができて。やっぱり、サッカーってすごいなと改めて感じたところでもあります」

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日々、その思い入れは増すばかりだという。

「今のチームでは、ゴールの時に東選手が“こいよ!”という感じでみんなを集めていたり、喜びの輪に駆け寄るのに、諒也がいつも早かったり(笑)」

そういう喜怒哀楽を切り取りたいという想いは強い。

動画が全盛の時代。それでも「たった1枚で、情景や雰囲気を伝えられるのは写真でしかないと思うんです」。

だからこそ、今の状況は寂しいとも。

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「2020シーズンのリーグ最終戦で、本当に久しぶりにナオさんがスタンドに出てファンの人たちと触れ合うのを撮影して、やっぱりこういうのはいいなと」

コロナ禍での厳戒態勢の収束を願いながら、これからも「選手の息遣い、スタンドの歓声が聞こえてくるような写真を撮っていきたい」と、自身に言い聞かせるように締めくくった。

ルヴァンカップ優勝で、新井カメラマンの1枚を目にした方も多いことだろう。
さてさて、あなたのお気に入りの1枚はどれですか?

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著者プロフィール

FC東京は、「東京都」全域をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に所属するプロサッカークラブ。

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