俊足好守から強肩豪打へ。レオネス・マーティンが見せた来日後の“変化”とは?
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来日直後から、千葉ロッテの主砲として活躍しているマーティン選手
来日以降のマーティン選手は、低打率ながら出塁率やOPSといった数字に優れる、典型的な一発長打の魅力を持った長距離砲として活躍を見せている。しかし、メジャーリーグで活躍していた若手時代のマーティン選手は、現在とは大きく異なるタイプの選手だったことをご存じだろうか。
今回は、来日以降のマーティン選手が見せている選手としての特徴に加え、MLB時代のマーティン選手の活躍ぶりを、各種の成績と共に紹介。それに加えて、セイバーメトリクス的な指標によって端的に示された、マーティン選手の“変化”について、より深く迫っていきたい。
長打力不足に悩まされるチームにあって、ホームランを期待できる貴重な存在に
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その活躍ぶりは続く2020年も変わらず、シーズン終盤に故障で戦列を離れたにもかかわらず、リーグ4位の25本塁打を記録。前年にチーム最多の32本塁打を放ったブランドン・レアード選手が故障で39試合の出場にとどまったこともあり、チームは年間を通して長打力不足に苦しめられた。そんな中で、マーティン選手は数少ない一発長打を期待できる打者として奮闘。対戦相手にとっても、その存在は不気味に映ったことだろう。
打率こそ2年続けて.230台と高いとはいえない数字にとどまっているが、優れた選球眼を持ち合わせているのもマーティン選手の特徴のひとつ。2020年にはリーグ最多の17死球を記録するなど厳しい攻めに遭いながらも、冷静に四球を選んで後続の打者につなぐケースは多い。OPSも2年連続で.800台と主力打者として十分な数字を残しており、その貢献度は打率以上に高いものがあるといえよう。
MLBでも若くして台頭し、持ち前の俊足を武器にレンジャーズの主力へ
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2012年は24試合で打率.174とメジャーの壁に苦しんだが、MLB3年目の2013年には出場機会が急増。打率.260とまずまずの数字を残しただけでなく、リーグ5位の36盗塁を奪い、持ち前の機動力を存分に発揮した。続く2014年にもその活躍は続き、2年連続で30を超える盗塁を記録し、2年続けて盗塁数はリーグ5位に。打率.274と打撃面でも前年以上の成長を見せ、レンジャーズの主力の一人として躍動を見せていた。
マリナーズでも移籍1年目はレギュラーとして活躍したが……
翌年も主力としての活躍が期待されたが、34試合で打率.174と絶不調に陥り、シーズン途中にカブスに移籍。計2球団でプレーした2018年は不振を脱してまずまずの数字を残しただけでなく、84試合で11本塁打を放っており、この時期からパンチ力は増しつつあった。翌年には65試合で9本塁打とホームランのペースは更に増加したものの、打率は.200を切るなど再び不振にあえぎ、シーズン途中にNPBへの移籍を選択する流れとなった。
その脚力は、外野守備においても大いに活かされていた
実際に、MLBの分野における著名な記録サイトである「Baseball-Reference」が算出する「アルティメット・ゾーン・レーティング(UZR)」、同じくMLBの大手記録サイトの「Fangraphs」が算出する守備防御点(DRS)といった、守備面において重要視される2つの指標を見てみると、マーティン選手はどちらの指標でも2013年から3年連続で、優秀とされる基準である2桁の数字を記録し続けていた。
また、2020年のゴールドグラブ賞の選考に用いられた「SABR Defensive Index(SABR)」という指標においても、2013年にはア・リーグの中堅手全体の3位、2014年には同4位と、リーグ内でもトップクラスの数値を記録していた。これらの数字は、レンジャーズのレギュラーとして活躍していた時期の守備が、指標の面でも高く評価されていたことの証明といえよう。
NPB移籍後は、ストライクゾーンの管理力が飛躍的に向上
その選球眼について確認するために、セイバーメトリクスで用いられる指標を利用していきたい。1打席ごとの三振数の割合を表す「三振率」、同じく1打席ごとに選ぶ四球の数を示す「四球率」、出塁率と打率の差である「IsoD」、四球と三振の割合から選球眼の良さを求める「BB/K」といった指標を、それぞれ確認していこう。
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また、IsoDもMLB時代の通算が.057と低く、当時のマーティン選手は選球眼に明確な課題を残す選手であった。しかし、NPBではこちらも2年連続で.110以上の数字を記録し、ともに一流と考えられる.100のラインを突破している。とりわけ、2020年は.148と抜群の数字を残しており、来日以降の平均値はMLBでのキャリア通算の2倍近くに及んでいる。
とりわけ大きな変化を見せていたのがBB/Kで、MLB時代は通算の値が.300を割り込むなど、四球が少なく三振が多いという、打者としては好ましくない傾向にあった。しかし、来日1年目となった2019年には、MLB時代に一度も記録したことのなかった.400台の数字を記録。続く2020年には.700とさらなる改善を見せており、この1年でストライクゾーンの管理能力が劇的に向上していることは、各種の指標からも読み取ることができる。
脚力にはやや陰りがみられるが、MLBでも鳴らした強肩は現在も大きな武器に
脚力自体は若手時代に比べるとやや陰りがみられるものの、持ち前の強肩に衰えの兆しは見られない。まさにレーザービームと形容できる鮮やかな送球での刺殺だけでなく、打球判断の面でも、走者の進塁を防ぐ巧みなスライディングキャッチをたびたび披露しており、いわゆる目に見えないファインプレーといった類の動きも決して少なくはない。
また、ライト前ヒットを許した場面で、一塁でオーバーランした走者を確認したうえで刺殺を狙った送球を見せるケースもあった。こういったプレーは守備においてもチームに貢献しようという意欲の表れでもあり、守備位置こそ変わったものの、日本においてもかつての名手ぶりを感じさせる場面は多いと言えるだろう。
盗塁数もMLB時代に比べると減少しているが……
この試合の相手先発はドリュー・バーヘイゲン投手。150km/h台後半に達する豪速球を武器に活躍を見せている実力派の右腕だが、盗塁を許す機会はシーズンを通じて多く存在し、ややクイックを苦手とする一面もある投手だ。
この試合では1番打者として3安打3盗塁と大活躍を見せた若手の和田康士朗選手が話題を集めたが、3番に入ったマーティン選手も塁上でアグレッシブな姿勢を見せ、和田選手と同じく5回までに3盗塁を決める活躍を披露。相手投手のクイックを頭に入れて積極的にスタートを切る抜け目のなさと、世界最高峰の舞台で多くのスチールを決めてみせた勝負勘の片鱗を感じさせる試合となった。
状況に応じてプレースタイルを変化させる、まさに「助っ人」と呼べる存在
出塁して“還る打者”から、自らのバットで“還す打者”へ。過去の実績にあぐらをかくことなく、32歳にしてさらなる進化を続ける強肩豪打の助っ人は、来日3年目となる2021年にどんなプレーを見せてくれるか。千葉ロッテの試合を見る際には、これぞメジャーという豪快なホームランや、目を見張るようなバックホームに期待してみる価値は、大いにあることだろう。
文・望月遼太
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