ハワイのサーフィン大会で男女公平が条例化、女性サーフィンの進歩続く

チーム・協会

【WSL / Tony Heff】

シャークアタックやWSLスタッフの新型コロナ感染など波瀾万丈だった2021年CT開幕戦も、終えてみればジョンジョンが悲願のパイプマスターとなるなどいくつものドラマが生まれた。
そしてもうひとつ、新たな歴史の1ページに刻まれたのがパイプラインで史上初の女子CT開催だ。この裏には女性サーファーや活動家による長年の戦いがあり、2020年はホノルル議会で新たな条例が通過するなどウィメンズサーフィンが大きく進歩した1年でもあった。

ビッグウェーブに挑戦するエミリー・エリックソン 【WSL / Kelly Cestari】

サーフィンにおける男女公平をハワイで条例化

ノースショアのサーフィン大会に女性枠を設けるように勧める「決議20-12」に続き、いわゆるスポーツ公平法案の「Bill 10」が昨年12月上旬にホノルル市議会で全会一致で可決。12月23日にホノルル市長が承認した。

「Bill 10」はホノルル管轄の公園(ノースショアではエフカイ、ハレイワ、サンセットなどのビーチパークを含む)において許可申請が必要な活動を行うにあたり、ジェンダーの公平性を義務化する条例だ。利用目的を問わず公園施設がジェンダーにおいて差別なく利用できるようにするもので、スポーツ大会や50人以上が参加するピクニックなどが対象に含まれる。

今年1月に行われるCT第2戦「Sunset Open」が早速この条例に従って初めて男女合同開催になる予定だ。

法案施行前の実施となったCT初戦は、当初は男子はパイプライン、女子はマウイ島・ホノルアベイと別々に開幕。シャークアタックで中断された女子大会は男子会場での共催となったが、施行間近のBill 10の存在が史上初のパイプラインでの女子CT開催を後押ししたのは間違いないだろう。

長い闘いの成果

歴史的に男性優先で女性の活躍する場が非常に限られていたサーフィンの世界。ハワイだけとってみても、男子プロサーファーはノースショアのプロ大会で好成績を出せばCTにクオリファイできるのに、ハワイ全土でWSLの女子大会が一つもない年もある。大会の賞金も2017年時点では男子CTの優勝賞金10万ドルに対して女子は6万。年間を通して、男子のトップ選手が同じような結果を出した女子選手よりも数十万ドル多く稼げる状況だった。

このあまりにも不平等な現実を是正しようと結成されたのがCEWS(Committee for Equity in Women’s Surfing=女性サーフィン公平委員会)。女性活動家サブリナ・ブレナンやビッグウェーブサーファーのケアラ・ケネリーによって立ち上げられたCEWSは呼びかけと圧力を続けて、WSLの男女賞金同額やホノルル市議会で通った「決議20-12」と「Bill 10」に大きく貢献した。

トリプルクラウンも10年ぶりに女子枠

今期の「Vans Triple Crown of Surfing」は初となるデジタル形式で行い、10年ぶりに女子も参加できるようになっている。エントリーは男女問わず先着125人。男女いずれも各会場(ハレイワ、サンセット、パイプ)優勝に5千ドル、トリプルクラウンの総合優勝に5万ドルの賞金が与えられる。世界トップの選手だけでなく、無名や若手の選手が大きな舞台で名を残すチャンスだ。

ビッグウェーブでもウィメンを応援

ハワイ諸島で3か月間のシーズンを通して行う映像コンテスト「Red Bull Magnitude」は初の試みとなる。2020年12月1日から2021年2月28日までの間ハワイアンスケールで15フィート以上を最低ラインとして、マウイのジョーズやオアフのワイメア、そしてノースショアの他のアウターリーフでカメラクルーを送り込み、女性によるビッグウェーブの挑戦を記録し、シーズンを通して一番パフォーマンスが良かった一人に2万5千ドルの賞金を贈る。

新しいフォーマットは女子ビッグウェーバーにスポットライトを当て、アンダーグラウンドのチャージャーにもチャンスを与える。参加する24名のサーファーにはハワイ在住の日本出身サーファー、シェパード・キモミさんとサクマ・モモさんが出場している。

女性だけでなくLGBTQ+も

ジェンダーの話をするときに忘れてはならないのはセクシュアルマイノリティーLGBTQ+。パイプの史上初女子チャンピオンとなったオーストラリアのタイラー・ライトはオープンなバイセクシュアルで、今年からセクシュアルマイノリティーのシンボルであるProgress Prideの旗をあしらったWSLのゼッケンで出場している。

昔から男性優位なサーフィンの世界は先進的で反社会的な一面をもちながら、同性愛や他の人種に対する偏見が根強い。そんな中タイラーも様々な葛藤を乗り越えてきた。

「自分の国だけでなく、LGBTQ+コミュニティーを代表できることは誇りであり、本当の自分を認める大事なステップだと思う。(プログレスプライドの旗は)今まで戦ってきた先人たちへの敬意を払うためでもある。私をインスパイアしてくれてありがとう」とコメントしたタイラー。ここに来るまでにいろいろの人の想いと苦しみがあったことを忘れてはならない。

公平への道のりはまだ続く

2021年のCTシーズンは男女共に11の大会が予定されていて、女子にとっては過去最多になる。一方CS(チャレンジャー・シリーズ)では男子の9戦に対して女子は6戦、QSも確定していない大会が多いが、男子の方がポイントと賞金を稼ぐチャンスが多いのは間違いない。2020年は女性サーファーにとって進歩があったものの、今後もサーフィン界の男女公平に向けた戦いが続く。

執筆:ケン・ロウズ
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