日本代表選手による「本気の」練習試合 ~日本フェンシング協会、「Sunday Cup」を初開催

チーム・協会

【日本フェンシング協会】

公益社団法人日本フェンシング協会(以下、日本フェンシング協会)は、2020年12月6日(日)、日本代表選手による実戦形式の練習試合「Sunday Cup」を開催した。20日(日)には早くも第2回を開催。その模様をレポートする。

【アーカイブ映像はこちらから】
第1回:https://youtu.be/FxjyT15xUEc
第2回:https://youtu.be/QptfRnF9JaM

Sunday Cupとは~コロナ禍で生まれた新たな取り組み

新型コロナウイルスの影響により、フェンシングの国際大会が中断されたのは2020年3月のこと。それから半年、全日本選手権の舞台でようやく実戦の機会を得た選手たちから口々に挙げられたのは、久しぶりに試合が出来た喜び、そして想像以上に失われていた「試合勘」への課題だった。

さらにそれは選手だけではなかった。選手とともにオリンピックをめざす審判員たちもまた、そのスキルを磨く場を失い、危機感を募らせていた。

その様子を見た強化本部が動いた。「次にいつ試合が出来るのか、感染防止対策に努めながら来る日も来る日も必死に練習に明け暮れる選手達に、大会でしか味わえない、普段とは違う緊張感のある場は作れないだろうか。オリンピックから逆算して、どれだけ試せる機会を作り出すことができるか。私たちが練習している素晴らしい練習場には、国際大会の決勝戦を想定して設置された照明がある。これならば自分たちの手で、限りなく大会に近い環境を作ることが出来るのではないだろうかと考えました。」と青木雄介日本代表監督は語った。

こうして日本フェンシング協会とフェンシング日本代表選手による「Sunday Cup」が生まれた。

国際大会の決勝戦仕様に演出されたピストで、記念すべき第1試合は男子フルーレ永野雄大(中央大学)vs鈴村健太(法政大学)。永野が鈴村に競り勝った。 【日本フェンシング協会】

Sunday Cup、開幕。その模様はスタッフの手で全国のフェンシングファンへ。

第1回は強化本部により、男子フルーレ・男子エペの計4試合が設定された。

Sunday Cupはあくまで強化施策。しかし、せっかく選手たちが「本気の」練習試合を行うのであれば、その様子を全国のフェンシングファンに届けたい。オンラインながらも観客の目を感じることは、緊張感醸成の一助になるかもしれない。そう考えた協会スタッフの手で、試合の模様は協会YouTubeチャンネルでライブ配信された。感染対策でナショナルトレーニングセンターへの入館も関係者に限定されており、まさにスタッフの手作り配信。途中音声トラブルなどもありつつ、なんとか実現できたのは、コロナ禍で幾度となくオンラインの情報発信に取り組んできた経験の賜物かもしれない。

そして試合本番さながらのMCに加え、試合に出場しなかった佐藤希望(女子エペ)や西藤俊哉(男子フルーレ)を始め、選手たちも試合の実況解説や写真撮影という形で発信に協力した。選手・スタッフ一丸となって作り上げた配信の視聴数は、2回の配信とアーカイブを含めると12,500回を超えた。

第2・3試合は全日本予選の再戦に。男子エペでは見延和靖(ネクサス)と古俣聖(本間組)が対戦し、全日本予選と同じく古俣に軍配が上がった。 【日本フェンシング協会】

第3試合、男子フルーレでは飯村一輝(龍谷大平安高)がけがで欠場の松山恭助(JTB)に代わり出場も、敷根崇裕(ネクサス)が勝利をおさめ、全日本のリベンジを果たした。 【日本フェンシング協会】

第4試合の男子エペでは、怪我からの復帰初戦となる山田優(自衛隊体育学校)が登場。加納虹輝(JAL)と延長戦にもつれこむ接戦となるも、一本勝負を制し復帰戦を白星で飾った。 【日本フェンシング協会】

また、試合後には大会本番さながらのインタビューも実施。時間が許す場面では勝者のみならず敗者にもマイクを向け、コメントを求めた。これも選手が自らの言葉で発信するトレーニングの一環となったのではないだろうか。

2019年・2020年と2年連続全日本のファイナリスト、永野。コメントにはなかなか慣れないと言う選手も多いが、場数を踏んで少しずつ自分らしさを出せるようになっている。 【日本フェンシング協会】

腰の手術からの復帰戦を見事勝利で飾った山田。これからの活躍がますます楽しみになったファンも多いのでは。 【日本フェンシング協会】

2週間後には第2回が開催。新たな種目も加わり計6試合に拡大。

第1回の2週間後、12月20日(日)には早くも第2回Sunday Cupを開催。合宿から戻った男女サーブル各2試合と、前回に引き続き男子フルーレ2試合の計6試合が実施された。

第1試合は男子サーブル、2019年の全日本決勝の再戦。序盤は島村智博(警視庁)がリードを奪うも、ストリーツ海飛(鹿児島クラブ)が逆転勝利。 【日本フェンシング協会】

第2試合の女子サーブルは今年の全日本準決勝と同じカード。今回は江村美咲(中央大学)が福島史帆実(セプテーニホールディングス)にリベンジを果たした。 【日本フェンシング協会】

第3試合は男子フルーレ、序盤に大量リードを奪った鈴村健太(法政大学)が前回は解説者として出演した西藤俊哉(長野クラブ)を下した。 【日本フェンシング協会】

なお第2回もサーブルはリオデジャネイロ2016オリンピック代表の徳南堅太、フルーレは青木雄介日本代表監督や試合を終えた鈴村が解説に登場。ライブで選手の特徴や試合運びなどを説明した。

選手と審判員がコミュニケーションを取る場面も前回同様随所で見られ、試合形式ならではの緊張感あるやり取りが繰り広げられた。

第4試合は今年の全日本男子サーブル決勝の好カード。若手のホープ小久保真旺(星槎国際高川口)が吉田健人(警視庁)との接戦を制し、再び勝利。 【日本フェンシング協会】

第5試合の女子サーブルはベテラン同士の戦い。田村紀佳(旭興業)がアグレッシブなプレーで青木千佳(ネクサス)に勝利した。 【日本フェンシング協会】

最終第6試合は男子フルーレ、永野雄大(中央大学)vs敷根崇裕(ネクサス)。第1回Sunday Cupの勝者同士の戦いは永野に軍配が上がった。 【日本フェンシング協会】

Sunday Cupを終えて

こうして2020年、2回開催されたSunday Cup。参加した選手たちの感想で最も多かったのは「楽しもうと思ったが想定以上の緊張感だった」「いつもと同じ練習場のはずなのに本番さながらの雰囲気で驚いた」という声だった。強化本部手作りのこの舞台が、まさに狙い通りの効果を発揮したといえるかもしれない。また、先の見えない日々の中で地道なトレーニングを重ねてきた選手からは「練習してきたことの成果が少しでも見えたことが嬉しい」との感想もあり、Sunday Cupが自身の努力を証明する場になったことをうかがわせた。負けず嫌い集団らしい「次は自分が出場したい」「次はあの選手と戦いたい」といった前向きなコメントも選手からは挙がっている。

一方の青木監督も手応えを感じたようだ。
「限定的な環境下でも、練習で選手は色々な技術も体力もに身に着けています。それが錆びないよう、実際の試合のような臨場感の中で試す機会にしてもらいたいという思いで開催しましたが、選手の表情は明らかにいつもと違いました。実際に試合を行うことで味わえる追い上げる展開のメンタリティ、追われる展開のメンタリティ、あと1本を取りたいという気持ちの強さ、これらを体感できる貴重な機会になったのではないかと感じます。選手だけでなく、審判の方々もジャッジ技術の向上にこの試合を役立てて頂き、共にオリンピックの舞台で活躍できればと思っています。」

さらに第2回では第1回に比べ、選手の入り時間が早くなりより入念な準備をしていたり、自身の試合順序を気にしたりと、より試合に近い意識で選手が臨んでくれた、と青木監督は言う。「日頃の練習であれば諦めてしまうような試合展開でも、皆様に観ていただくことで、自分のポテンシャルをフルに発揮して接戦にまで持ち込めるという姿も見られました。」

このSunday Cupが、試合に飢えている選手の小さなモチベーションになってくれれば、立ち止まっていたところから大きな一歩を踏み出すきっかけになるのではないかと青木監督は語る。「このSunday Cupが成功だったかどうかは将来の試合の結果で証明されます。健康を第一にしつつ、我々に出来ることは剣を持ち、ベストを尽くすことだと思っています。応援してくださる方々と共に、素晴らしい結果を出すためにこれからも頑張っていきたいです。」

前例のないことの連続だった2020年。まだまだ先の見えないコロナ禍。それでも日本フェンシング協会とフェンシング日本代表選手たちは歩みを止めることなく、スポーツの力を信じ、できる努力を重ねていく。後に振り返った時、このSunday Cupはその「止めない歩み」の象徴となっていることだろう。

新生・強化本部を引っ張る青木日本代表監督。 【日本フェンシング協会】

次はどの選手がSunday Cupのピストに立つのか、そしてここからどんなヒーロー・ヒロインが生まれるのか。選手の活躍が楽しみだ。 【日本フェンシング協会】

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著者プロフィール

公益社団法人日本フェンシング協会

突け、心を!  従来のスポーツ界は、五輪で金メダルを獲得することが最上位概念でした。 しかし、私たちはこの勝利至上主義からの脱却を目指します。 「突け、心を。」のキャッチコピーの元、私たちが策定した新たなビジョンは「フェンシングの先を、感動の先を生む。」です。 フェンシングを取り巻くすべての人々に感動体験を提供し、フェンシングと関わることに誇りを持つ選手を輩出し続けていくことを約束します。

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