【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第9回:ンドカ・ボニフェイス選手「自分自身への挑戦と証明」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第9回目はンドカ・ボニフェイス選手です。


(取材・構成 佐藤拓也)

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

Q.スタンス面談を通して、自分の人生を振り返ってきましたが、いかがでしたか?
「ここまで具体的ではありませんでしたが、小さい頃から何を目的にサッカーをやっているのかということをずっと考えてきました。ただ、面談を通して、より深く考えるようになりましたし、自分が無意識で取り組んできた行動に対しての理由にも気づくことができました」

Q.無意識で取り組んできたことの理由が分かった?
「そうですね。ずっと自分の中で考えてきたことが言語化されたという感じですね」

【Mission】

Q.「Mission」では「サッカーを通して自分を表現し自分の価値を証明していく」とあります。どういう思いでこの言葉になったのでしょうか?
「自分の中では『サッカーが楽しい』とか『サッカーが好き』という感覚がないんです。サッカーは手段なんです。小さい頃からサッカーを通して、自分の価値を証明する思いでやってきました。子どもの時、コーチから『サッカー好きでやってるんでしょ?』と問いかけられることがありましたが、『何か違うな』と思っていたんです。その違和感の理由が今回のスタンス面談を通して具体的に分かったんです。サッカーをすることで、自分自身を存在している意味を証明するという感覚でずっとやってきました」

Q.「自分を表現する」という点において、今年のンドカ選手を見ていると、リーダーシップがあり、人間性があふれているように感じます。
「試合に出た際にはそういうスタンスを出したいと思っています。でも、『自分を表現する』というのはそういうものではありません。反骨心みたいなものです」

Q.何に対する反骨心でしょうか?
「小さい頃は馬鹿にされたことを見返してやろうという感覚でやっていました。先ほど『自分の価値を証明する』と言いましたが、以前は周りに対して証明する感覚だったのですが、今回のスタンス面談を通して、今は周りではなく、自分自身に証明したいんだと気づいたんです。周りの目は関係なく、自分自身に自分が納得する姿を見せることが大事なんじゃないかと思うようになりました」

Q.もう少し説明していただけますか?
「実際、自分を評価するのは周りの人なんです。でも、自分を一番見ているのは自分じゃないですか。周りを気にすることより、自分の行動に納得すればいいんです」

Q.以前は周りを気にしていた?
「それはありました。幼い時は周りの目を気にするのが得意でした。今もその時の癖がついているので、気にすることはありますが、大事なのはそこではないということは分かっています」

【Vision】

Q.「Vision」について、「自分が選んだ分野で周囲を認めさせることで自信をつけていくこと」とあります。
「周囲だけでなく、自分自身を認めさせたい。自分を表現できるものであれば、サッカーでなくてもよかったんです。他の分野でもよかった。でも、気づいたらサッカーをやっていて、サッカーが自分の価値を証明するうえで一番可能性が高かった。だから、サッカーを選んだんだと思います」

Q.「認めさせる」ために必要だと思うことは?
「そこを最近よく考えるんですよ。そのことに関して、今まで少しぼんやりしていたのかもしれないですね。自分の中で認めさせる感覚って、目の前の1試合がすべてでした。プロになりたいから、こういう取り組みをしようみたいなことはやってきませんでした。もちろん、高校選手権に出場することやプロになることを目標にはしてきましたが、自分の中でもっと大切にしてきたのは『目の前の試合』や『目の前の相手』でした。そこで勝って、自分の価値を証明しようとしてきたんです。その感覚が強かったんです」

Q.今は変わってきた?
「今まではその感覚でやってきたから、ここまで来ることができたんだと思います。でも、最近はもっと冷静に、頭を使ってサッカーをするようになりました。相手と駆け引きしながらサッカーをするようになりました」

Q.目の前の試合だけでなく、上のカテゴリーでプレーしたり、代表に入ることで「認めさせる」こともできると思います。そういうビジョンはないのでしょうか?
「自分の中ではより高いレベルでプレーしたいとは思っています。現状に満足はまったくしていませんし、サッカーをしていて満足したことは一度もないです。上に行きたい意欲はいつでも持っていました」

Q.今年、コンスタントに試合に出場して結果を残してきました。今まで以上に自信をつかんだのでは?
「今年は失点が多く、その責任は間違いなくセンターバックにあると思っています。前の選手がどんなにミスをしても、最後のところで食い止めるのがセンターバックの仕事。なので、試合には継続して出場してはいますが、自分の今年のパフォーマンスに関しては納得できていません。でも、試合に出続けて、相手のFWとの駆け引きで勝つ自信を得ることができていますし、自分の武器である得点力も出せている。その点に関して自信を手にすることはできました」

【Value】

Q.「Value」について聞かせてください。一つ目は「自分で自分をコントロールする。評価は他人ではなく、自分」ということですが、本当に今年はメンタルコントロールができるようになっていますね。昨年と比べて、警告数が激減しました。
「自分をコントロールすることは最近になってうまくなったと思っています。今まで熱くなって我を忘れるようなことが結構ありました。でも、今は熱くなったように見えるかもしれないですけど、わざとそう見せている時もありますし、相手との駆け引きの部分もあります。自分に気合いを入れるためにやっていることもあります。前までは本能的に熱くなってしまっていましたが、今はコントロールできるようになりました」

Q.次は「自分自身への許容範囲を持つ。100点を追求し過ぎない」ということですが。
「結構、自分は周りから適当で大雑把のように周りから見られるし、自分でもそう思っていました。むしろ、真逆で100%を求める性格なんだと気づいたんです。100%を求めすぎて、ダメな時に気持ちが切れてしまうことがあったんです。人生において100%にできることなんてないじゃないですか。なので、ある程度割り切って、肩の力を抜いて取り組むようにしたんです。そうしたら、すごくいいメンタルを維持できるようになりました。100%ではなく、90%ぐらいを求めながら取り組むのが自分に合っているということに、この面談を通して気づきました」

Q.今までは理想を求めすぎていた?
「そうですね。試合中に1つミスが出るだけで集中を切らしてしまうことがありました。でも、今はミスをしても『仕方ない』と切り替えることができるようになりました。なので、完璧を求める性格だったのですが、完璧を求めない時の方がうまくいくことに気づきました」

Q.「自ら課題を設定し、一つずつ課題をクリアしていく」とあります。
「シンプルに、そのままですね。完璧を求めすぎず、小さな成功体験を積み重ねていくことによって、満足感を得て成長していくことを意識しています。集中力を切らさないようにするためにも、そのやり方が自分には合っているんだと思います」

Q.自分を知り、自分をコントロールすることができるようになったということですね。
「そうだと思います」

【スローガン】

Q.スローガンは「自分自身への挑戦と証明」。今までお話いただいた通りの言葉ですね。
「自分が考えた言葉ではなく、面談していただいた方が考えた言葉なんですが、自分の中ではすごくしっくりきました。頭の中で考えていることを言葉にするのが自分はあまりうまくないのですが、このスローガンに関しては、自分の考えていることをすごく表現してくれていると感じています」

Q.残り試合も「自分自身への挑戦と証明」の戦いですね。
「今季のプレーを見て『活躍している』と言ってくれる人もいますが、僕は本心でそう思うことはできていません。なので、残り試合で自分自身が納得できるプレーにできる限り近づけたいですね」

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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