【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第7回森直樹コーチ「今を生きる」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第7回目は森直樹コーチです。


(取材・構成 佐藤拓也)

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

Q.森コーチは昨年もMVVを策定したのですか?
「今年からですね」

Q.面談を通して、どのようなことを感じましたか?
「日ごろ頭の中で考えていることを言語化して出せたことによって、自分のやるべきことや自分の使命が明確になりました」

Q.面談はどのぐらい行いましたか?
「3回ぐらいですね。1回1時間から1時間半かけて行いました。自分の考えをどんどん掘り下げられるので、そのぐらい時間がかかりましたね」

【Mission】

Q.「Mission」は「クラブの軸、アイデンティティを作り伝え続け、日本サッカーを牽引するクラブモデルをつくること」とあります。
「2018年にアツマーレができました。廃校を利用したクラブハウスというのは画期的なこと。アツマーレができたことによって、いろんなことが変わっていきました。予算が少ない地方クラブでもこれだけのことができるということ、いろんなアイデアを出すことによってクラブは発展できるということを全国に発信できたらいいなと思い、こういうMissionを作りました」

Q.森コーチは03年に選手として加入し、それ以降18年間水戸に在籍しています。クラブの変化を体感してきたからこそ、アツマーレの価値の大きさを感じているのでは?
「一つの環境に身を置く時間が長くなればなるほど、新たな変化を受け入れられなくなる人がいると思うんですよ。だけど、クラブは発展していくために新しい人が来たり、新たな試みにチャレンジして、いろいろ変化してきました。そういう面で自分も柔軟に対応できていますし、『以前はこうだった』というような考えを捨てて、変化を受け入れながら、昔と今のいいところを組み合わせながらやっていくことが大事だと思うようになりました。過去のやり方と新しいやり方をうまくかみ合わせていくことに対して、長くクラブに在籍する僕らの存在価値を感じています」

Q.アツマーレという環境はクラブ念願の施設だと思います。それまでの活動が地域に認められて作られた施設です。だからこそ、クラブはこの環境を最大限に生かそうと様々な取り組みを行っていますね。
「アツマーレが完成して3年目。チームとしてもっともっと効果的に活用できるようにグレードアップしていかないといけない。今の使い方で満足はしていません。西村卓朗GMらとアイデアを出しながら今後のビジョンについて話し合っています。たとえば、市街地から離れているので、遠征から戻ってくると、家に帰るのが遅くなってしまう。ならば、宿泊できる施設を作ることも必要かもしれない。そういったようにまだまだいろんな使い方ができると思っています」

Q.「クラブの軸、アイデンティティをつくり」という点に関して、選手や監督・スタッフの入れ替わりが激しいチームの中で森さんの存在は大きな軸になっていると思います。「伝えていく」使命を感じているということですね。
「僕は柱谷哲二さん、西ヶ谷隆之さん、長谷部茂利さん、そして秋葉忠宏さんの下でコーチを務めてきました。それぞれの監督が作ったいいところを伝えていかなければならないですし、変えていくべきところは変えていかないといけない。今年はコロナ禍で自粛期間中に家にいることが多かったので、あらためて今までの水戸ホーリーホックのプレーモデルについての資料をパワーポイントで作ってみました」
Q.監督が替わっても変わらないものは何だと思いますか?
「今年も秋葉監督が『3原則』として掲げているのですが、『攻守の一体化』『走る』『ハードワークする』部分はずっと軸になっていくと思います。足先の技術だけではダメ。相手を圧倒するというか、テツさん(柱谷哲二)時代からそうですが、『やり切る、走り切る』姿勢はファン・サポーターの心をつかむ要素だと思っているので、そこは変えることなく、選手たちに求め続けていこうと思っています」

Q.逆にこれから大事になることは何だと思いますか?
「昨年は長谷部前監督のもと、失点の少ないチームを作ることができました。今年は逆に得点が多く、失点も多いチームとなりました。昨年のサッカーと今年のサッカーのバランスを取ることですね。今年の得点力を維持しながら、昨年のように失点を少なくする。それができているのが徳島。そういうサッカーを目指さないといけないと思っています」

Q.森コーチから監督に対して、過去の監督のやり方を伝えることはあるのですか?
「そこは難しさもあるのですが、フィードバックを担当しているので、フィードバックの部分で出すこともあります。昨年よかったのは、作ったフィードバックに対してコーチ陣でディスカッションすることができていたんです。でも、今年は過密日程のため、フィードバックよりも次の試合の分析の方が多くなってしまっている。なので、難しさも感じています。もう少しフィードバックに対してディスカッションする時間があれば、守備を構築できると思います。とはいえ、時間がなくても、そこはやらなければいけないのですが」

【Vision】

Q.「Vision」について聞かせてください。「クラブが全てのホームタウン住民の象徴となっている未来を創る」とありますが、どういう思いが込められているのでしょうか?
「おじいちゃん・おばあちゃんがスタジアムに孫を連れてくるような文化を作っていきたいんですよね。年代の垣根を超えて、3世代・4世代が同じユニフォームを着てクラブを応援してくれるようなクラブにしていきたい。そんな思いを込めた言葉です」

Q.森コーチが現役時代は空席だらけのスタジアムで試合をしていました。その頃から比べると、多くのサポーターがスタジアムに足を運ぶようになりました。クラブが地域に浸透してきた実感もあるのでは?
「ありますね。なので、もう一つ上に行くために頑張らないといけない。そのためにも新スタジアム建設構想には期待したいですね。新スタジアムが完成したら、さらに水戸ホーリーホックが盛り上がると思う。ケーズデンキスタジアム水戸も素晴らしいスタジアムだと思いますが、やはり専用スタジアムでサッカーをしたいし、見てもらいたい。そのスタジアムで世代を超えたサポーターに声援を送ってもらえるようなクラブになりたい」

Q.新スタジアム建設構想を聞いた時に心境は?
「本当かよ⁉と思いました(笑)。海外に行った際、水戸でもこういうスタジアムができればいいなと思っていたので、構想を聞いた時は『自分もちょっとでもいいから絡みたい』と思いましたね」

Q.その構想はクラブに関わる人たちの大きなモチベーションになっているのでは?
「間違いないです。スタジアムが完成する時には強いチームになっていないといけない。なので、中途半端なことはできないですね」

【Value】

Q.次は「Value」について聞かせてください。「相手の話を聞く」とは?
「コロナ禍で、なかなかコミュニケーションを取るのが難しいのですが、選手の話を聞くようにしていますし、現場だけでなく、事業部のスタッフと食事に行ったり、フロントの状況についても情報を入れるようにしています。クラブは現場だけで動いているわけではありません。フロントとの一体感も大事だと思っています」

Q.それは『部署の垣根を超えて関わるすべての人と何気ない会話をする』につながりますね。長く水戸にいる森コーチだからこそ、できることですね。
「そこは強みにしていきたいと思っています。“何気ない会話”が大事なんですよ。あまり突っ込んだ話ばかりでは、心を開いてくれないと思うので。なので、そういうコミュニケーションを心がけています」

Q.フロントも新しいスタッフが増えているからこそ、コミュニケーションがより大事になりますよね。
「そうなんですよね。スタッフが増えることはすごくいいこと。新しい風がたくさん入ってきています。現場も毎年選手がたくさん替わるので、いろんな人が水戸ホーリーホックに来て、いろんな人が羽ばたいてくれればいいと思っています」

Q.「地道にやり続ける」とは?
「それこそ、今までの水戸ホーリーホックじゃないですか。大きなスポンサーがついたり、スター選手が来て、クラブが劇的に変わるようなことはありませんでした。地道に活動をして、少しずつ成長して今の水戸がある。なので、この言葉を選びました」

Q.地道にやり続けたことによって、アツマーレという施設ができましたし、昨季はJ1昇格争いを繰り広げました。地道な努力が大きな成果を生むことをこのクラブで体感してきたからこそ、この言葉を大切にしているのでは?
「今まで地道にやってきたので、大幅に選手が入れ替わっても大丈夫だと思うことができています。誰が引き抜かれそうなのかも、大体分かるようになっていますし(笑)。選手が移籍してしまうのは残念ですけど、その代わり違約金が入ってきますので、そのお金でまた新たな選手を獲得すればいい。ちょっとずつ強化費を増やしていって、ちょっとずつ選手の質を高めていければいいという考えでチーム作りを行うことができています。今後はレンタル選手ばかりに頼るのではなく、水戸所属の選手を増やしていきたい。そこも地道に移行していければいいですね」

Q.水戸に来る選手も、「地道な努力」の必要性を理解している選手が多いですよね。
「自分たちが目を間違えなければ選手は成長するんです。そういう実績を積み上げることはできていると思います。また、西村GMが来てから、さらに選手育成に力を入れるようになり、他のチームからも“水戸の育成”を評価されるようになってきているので、選手を貸してくれることが増えました。その辺はアツマーレという環境も大きいと思います。地道にやってきたことが成果となって、選手獲得にも影響を及ぼすようになってきていると実感しています」

Q.長くコーチを務めてきて、水戸から羽ばたく選手の共通項も分かってきたのでは?
「そういう選手たちを見てきた経験は大きいですね。高い目標を持って来てくれた選手に対してクラブとして全面的にサポートしてきたからこそ、今まで多くの選手が羽ばたいていったと思うんです。その実績の積み重ねはクラブにとっての財産です」

Q.そういう選手たちを見てきた森コーチの存在はクラブにとっての大きなValueですよね。
「そうだと思っています」

【スローガン】

Q.スローガンは「今を生きる」とあります。
「先を見て取り組むことも大事ですけど、目の前のことにしっかり取り組んでいくことが一番大切だと思っています」

Q.「地道にやり続ける」とつながりますね。
「今を大切にしっかりやっていけば、自分のビジョンも達成できると思っています。先ばかり見て現在地を見誤らないようにしたい」

Q.その考えは水戸ホーリーホックで養われたものでしょうか?
「水戸で学ばせてもらいました。自分が在籍している間にクラブは大きく成長したと思っています。同時にクラブが自分を成長させてくれました。ここまで自分を育ててくれた水戸ホーリーホックにこれからしっかり恩を返さないといけないと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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