獅子の屋台骨・栗山巧。ライオンズを愛し、ファンに愛される男の復活の理由とは?
【撮影:丹羽海凪】
10月下旬からは4番に座りキャリア最多の12本塁打を記録
栗山選手は2020年シーズン終了時点で通算1926安打を記録しているが、この数字はライオンズの選手としては球団史上最多の数字となっている。今季も101安打と、2年連続、通算11度目の3桁安打を記録した栗山選手にとって、来季はライオンズの長い歴史でも初めてとなる、生え抜きとしての通算2000本安打達成の期待がかかるシーズンとなりそうだ。
同い年で同期入団の中村選手と共に、チームの精神的支柱として昨季までのリーグ連覇にも貢献してきた栗山選手だが、2017年から2019年にかけては3年連続で打率.250台に終わっており、過去の実績を考えればやや苦しい時期を過ごしていた。しかし、今季は9月1日の時点で打率.303をキープするなど安定したバッティングを続け、最終盤にやや調子を落としたものの、打率は4年ぶりに.270を超え、本塁打数はキャリア最多タイの数字を記録した。
最多安打とゴールデングラブ賞にそれぞれ1度ずつ輝き、ベストナインを3度受賞した実績を誇る栗山選手にとって、打線全体が不振に陥る中でチームをけん引する活躍を見せた今季は、復活の足がかりをつかんだシーズンと言えそうだ。頼れるベテランが過去数年に比べて成績を向上させた理由は、いったいどのような点にあったのだろうか。
今回は、栗山選手が19年にわたるプロ生活で残してきた成績をあらためて振り返るとともに、栗山選手が今季記録した各種の数字を、セイバーメトリクスで用いられる指標を交えながら分析。それに加えて、コース別、球種別の打率についても確認していくことで、栗山選手の成績向上の理由について迫っていきたい。
故障欠場の少ない頑強な身体と、安定して高い数字を維持する出塁率
【(C)PLM】
その後も長年にわたって不動のレギュラーとして活躍を続け、2008年、2010年、2011年と4年間で3度ベストナインを受賞。一軍デビュー当初は課題だった守備面も年々向上を見せ、センターとして広い守備範囲を発揮した2010年にはゴールデングラブ賞を初受賞。走攻守の三拍子が揃ったリーグ屈指の外野手として、安定した成績を残し続けた。
また、2008年から2016年までの9年間において、死球で骨折し長期離脱を強いられた2012年を除く全ての年で135試合以上に出場。とりわけ、5シーズンのうち4度全試合出場を達成した、2010年からの5年間の稼働率は素晴らしいの一言。故障離脱の少ない身体の強さも、長年にわたる安定した活躍ぶりと、1900本を超える安打数の積み上げに寄与しているといえるだろう。
そして、卓越した選球眼も大きな持ち味の一つ。一軍に定着した2005年以降の16年間で、出塁率が.350に届かなかったのはわずかに3度のみ。通算921四球は現役選手の中では鳥谷敬選手、福留孝介選手に次ぐ3番目の多さであり、史上15人しか達成していない希少な記録である、通算1000四球という金字塔に到達する可能性も見えてきている。
冷静にボールを見て四球を選ぶことが多く、それでいて三振数は少ない
ただ、2017年と2019年はOPS.680台に終わっており、これまでのキャリアの中でもとりわけ苦しんだシーズンといえた。それでも、今季は2013年以来7年ぶりにOPSを.780台まで戻しており、指標の面でも復活の兆しを見せている。
OPSと同様の傾向は、三振率にも表れている。最多安打を獲得した2008年には612打席に立って三振率.0996という素晴らしい数字を記録しており、2005年以降はキャリアを通じて三振率が.200を超えたことはなかった。しかし、2018年からは2年連続で三振率.215と、栗山選手にしてみればやや高い数字となっていた。今季はその三振率も.100台に戻しており、打席内容が向上していることがうかがえる結果となった。
近年はやや数字を落としていたOPSや三振率に対して、数字を維持している指標も
ただ、2017年と2019年はOPS.680台に終わっており、これまでのキャリアの中でもとりわけ苦しんだシーズンといえた。それでも、今季は2013年以来7年ぶりにOPSを.780台まで戻しており、指標の面でも復活の兆しを見せている。
OPSと同様の傾向は、三振率にも表れている。最多安打を獲得した2008年には612打席に立って三振率.0996という素晴らしい数字を記録しており、2005年以降はキャリアを通じて三振率が.200を超えたことはなかった。しかし、2018年からは2年連続で三振率.215と、栗山選手にしてみればやや高い数字となっていた。今季はその三振率も.100台に戻しており、打席内容が向上していることがうかがえる結果となった。
近年はやや数字を落としていたOPSや三振率に対して、数字を維持している指標も
2017年以降は各種指標の面でも苦戦の跡がうかがえるシーズンが続いていたが、四球とIsoDに関しては、2017年を除いてそれぞれ一定以上の数字を維持していたことがわかる。選球眼という面においては、年齢を重ねてからも一定以上の能力を保ち続けていると言えそうだ。
栗山選手に対して真ん中から高めの球は厳禁?
【(C)PLM】
ストライクゾーンの中であれば、外角低めを除く8つのコースで.250以上の数字を記録。特に、真ん中より高めの球に対しては6コース全てに対して打率.320以上を残している点は特筆ものだ。それでいて、低めに対しても極端に弱いというわけではなく、ストライクゾーンの中で打ち取ることは難しい。優れた選球眼を持つ栗山選手に対して安易にボール球を投じるわけにもいかず、対戦相手は難しい組み立てを強いられることになる。
また、ど真ん中に対して.391とかなりの高打率を記録しており、絶好球をミスショットすることなく確実にヒットにしていたことがわかる。また、外角低めこそ苦手としているものの、外角の高めに対してはコース別で最も優れた打率を記録。投手としては低めを丹念に突くことが求められるが、コントロールミスで球が少しでも高くなれば痛打を浴びる可能性が高いことも、今季の栗山選手が活躍を見せた要因の一つと言えそうだ。
【(C)PLM】
球種別の打率はやや極端な結果となった
シンカー・ツーシーム、カットボールといった球に対して高い打率を記録しており、カットボールと似た変化をするスライダーに対しても好相性。速い球を用いた左右の揺さぶりにきっちりと対応しているところも、長年プロの舞台で生き抜いてきたベテランならではだろうか。
その一方で、シュートに対しては打率.111と極端に苦手にしており、カーブやチェンジアップといった緩い球への対応にもやや苦慮している。その一方で、今季苦手としていた低めのコースに投じられるケースが多い、フォークに対してはある程度の数字を残している点は興味深い。総じて、今季の栗山選手は球種による得手不得手がはっきりしていた面があるようだ。
持ち味の選球眼を維持したうえで、さまざまな要素によって打撃内容も良化していた
それに加えて、コース別の打率に表れている通り、今季の栗山選手は真ん中から高めの球をミスショットする確率が少なくなっていた。三振率の低下や本塁打数の増加といった、今季の栗山選手が過去数年に比べて良化したポイントについても、得意なコースの多さがダイレクトに好影響をもたらした可能性は高いだろう。
プロ20年目の来季は球団史上初の金字塔達成にも期待がかかる
長きにわたってライオンズに多大な貢献を続けてきた栗山選手は、今季の活躍であらためてその存在価値の大きさを示したといえる。節目のプロ20年目を迎える来季は、いよいよ通算2000本安打の金字塔に挑む1年になりそうだ。獅子の屋台骨を支える大ベテランの活躍からは、あらゆる意味で目が離せないことだろう。
文・望月遼太
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