金字塔に達した森唯斗と益田直也。パーソル CS パで相対する両守護神の“すごさ”とは?

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ほぼ互角の成績を残している両守護神

 11月14日から始まる「2020 パーソル クライマックスシリーズ パ」で相対する、レギュラーシーズン1位の福岡ソフトバンクと、2位の千葉ロッテ。その両チームの守護神を務めているのが、森唯斗投手と益田直也投手の両右腕だ。両軍はともに僅差の試合で勝ち切る勝負強さを発揮して好成績を残した。シーズン中にセーブ王を争った彼らが、そういったチームの基本方針にも大きく貢献を果たしたことは疑いの余地がない。

 森投手と益田投手はともにクローザーを務めているだけではなく、それ以外の点でも少なからず共通点が見られる。今シーズンの8月7日に益田選手が通算100ホールド&100セーブを達成すると、10月11日には森投手も同じく通算100ホールド&100セーブに到達。史上6名しか達成していない希少な記録が同じシーズンに達成されている点からも、何やら数奇な縁を感じるところだ。

 両投手の今季成績は、森投手が防御率2.28で32セーブ、益田投手が防御率2.25で31セーブと、成績もほぼ互角。その一方で、150km/hを超える速球を軸に打者を押し込んでいくという共通点こそあれ、カットボールとスプリットを決め球として用いる森投手と、シンカーを決め球に持つ益田投手では、投球スタイルという面においては少なからず差異も見られる。

 今回は、パ・リーグを代表するクローザーである両投手の投球スタイルや特徴について、各種の指標を交えながら紹介。加えて、両投手が球種別で記録している被打率にも触れ、森投手と益田投手がこれまで中継ぎ・抑えの双方で成功を収めてきた理由に迫る。

プロ入り以来7年連続で50試合登板を続けている森唯斗投手

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 森投手はプロ1年目から58試合に登板し、安定感のある投球でセットアッパーに定着。強力なブルペン陣の一角として、チームの日本一にも大きく貢献した。2年目以降も中継ぎの貴重なピースとしてフル回転を続け、プロ入りから3年続けて50試合以上に登板。防御率も3シーズン連続で2点台と、登板数と内容の両面で安定した活躍を見せ続けた。

 プロ4年目の2017年は自身初となる登板数60試合超えを果たし、キャリア最多の33ホールドを記録したが、防御率は4点台に迫る数字となり、例年と比べて安定感を欠くシーズンに。だが、翌シーズンにはデニス・サファテ投手の負傷離脱に伴ってシーズン序盤にクローザーに配置転換されると、見事な投球を披露してその役割を全う。抑え転向1年目ながら37セーブを記録し、自身初となる『最多セーブ』のタイトルにも輝いた。

 その後もクローザーとしての躍動は続き、翌2019年、そして今シーズンと2年続けて2点台前半の防御率を記録し、3年連続30セーブも達成。プロ入り以来、7年連続50試合登板という記録も継続中であり、そのうち6度は防御率2点台と安定した投球を続けている。大きな故障による離脱を経験したこともない頑強さも大きな長所であり、その優れた安定感と継続性は、層の厚いホークス投手陣の中でも随一といえるだろう。

被打率にも表れる投球の軸である3球種の質の高さ

 投球の軸としている球種には、150km/hを上回る速球と、独特の軌道を描くカットボールの2つが挙げられる。この速球系の2球種に加え、緩急をつけるナックルカーブ、カットボールとは逆方向に変化するツーシームも備える。豪快なフォームから繰り出される快速球と、多彩な球種を操る器用さを併せ持っていることが、ルーキーイヤーから安定した成績を残し続けている理由の一つだろう。

 それに加えて、中継ぎから抑えに転向して以降、鋭く落ちるスプリットが加わったことも大きい。従来の速球とカットボールと同様に一定以上の球速を計測し、そこから異なる変化をすることもあって、より空振りを狙いやすい球種となる。スプリットの割合が増加したことで、打者にとってはさらに的が絞りづらくなった面はあるはずだ。

 こういった投球の幅の広さに加え、コントロールの良さも持ち合わせているところが、とりわけ優れた点でもある。キャリア通算の与四球率が2.10と安定した制球力を維持し続けており、これまで年間20四球以上を記録したことは一度もない。制球難から自滅するケースが少ないということも、長年にわたる好投に寄与しているだろう。

 続けて、森投手の今季の球種別の被打率についても見ていこう。

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 スプリットとカットボールの被打率がそれぞれ1割台と、決め球として用いることも多い2球種が効果を発揮している。それに次いで被打率が低いのは速球であり、投球の中心となっている球は総じて安定していると言えそうだ。ツーシームは被打率.444と打ち込まれているが、各球種を的確に使い分けながら相手打線の反撃を封じていることが感じ取れる結果だ。

新人王に輝いたルーキーイヤーからフル回転を続けている益田直也投手

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 益田投手はルーキーイヤーの2012年から中継ぎとして大車輪の活躍を披露し、同年の『新人王』の座にも輝いた。早くもブルペンの主軸の座を確立すると、抑えに転向した翌年もフル回転の活躍を継続。自身初タイトルとなる『最多セーブ』も獲得し、24歳の若さで投手陣の中心的存在となっていた。

 しかし、プロ入り後の2年間で140試合と、実に期間中に行われた全試合の半分という驚異的なペースで登板を重ねたこともあってか、そこからの2シーズンはやや安定感を欠く結果に。それでも2016年には防御率1点台と再び投球内容を向上させ、シーズン途中からはクローザーにも回った。入団から5シーズン連続で50試合以上に登板しており、まさに大車輪の働きを続けていたと言っていいだろう。

 ただ、2017年はキャリアワーストの防御率5点台と大きく調子を崩し、自身初めて登板数が50試合を割り込む苦しい1年に。ここまではシーズンごとに調子の波が見られる傾向があったが、続く2018年にプロ1年目以来となる70試合登板を果たして以降は、3シーズン続けて安定感を維持。毎年登板を重ねながら故障での離脱は皆無という体の強さも大きな武器であり、千葉ロッテのブルペンにとって非常に重要な存在であり続けている。

決め球はシンカーだが最も被打率が低かったのは……

 益田投手は150km/hを超える速球と鋭く落ちるシンカーを軸に、力で押すピッチングを展開することが多い。だが、決してパワーピッチ一辺倒というわけではなく、打者の芯を外すためのカットボールや、シンカーよりも球速がやや遅く、逆方向に曲がるスライダーといった球種も併せ持っている。

 決め球のシンカーの切れはその日の調子に左右される面があるが、シンカーに不安のある試合では速球でファウルを打たせてカウントを稼ぎ、機を見て緩いスライダーを交えつつ抑えていくという、引き出しの多さも長所の一つ。悪いなりにリードを守り切ることができる修正力の高さは、クローザーという役割に適合したものでもあるだろう。

 また、益田投手の投球スタイルに触れるうえでは、走者を出してからの粘り強さについても語り落とせない。必ずしも3者凡退に抑えることはできずとも、出した走者をホームに生還させることなく、リードを保ったまま凌ぎきるケースが多い。先述した状態が悪くとも抑えられる修正力の高さに、ピンチにも動じない落ち着きが合わさり、終わってみればきっちりと抑えているという安定感が生まれている。

 森投手と同様に、益田投手の今季の球種別被打率についても見ていきたい。

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 決め球のシンカーも低い被打率を記録しているが、それ以上に効果を発揮しているのがスライダーだ。シンカーとスライダーがさほど変わらない球速で真逆の変化をすることもあり、この2球種をうまく使い分けて打者を封じていることがうかがえる。カットボールの被打率が.333とやや打ち込まれているのは気がかりだが、速球も含めた4つの球種を効果的に用いながら、的確に打者を打ち取っているといえよう。

ともに優秀な数字を記録しているが少なくない違いも

 最後に、両投手がキャリアを通じて記録してきた通算成績を基に、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標を紹介する。1イニングごとに走者を何人出したかを示す「WHIP」、投手自身がコントロールできる分野における能力を示す「DIPS」、奪三振を与四球で割って求める「K/BB」、出塁させた走者を生還させなかった割合を示す「LOB%」、9イニングを投げた際の四球数を示す「与四球率」、奪三振数を示す「奪三振率」、被本塁打数を示す「被本塁打率」の数字は、それぞれ下記の通り。

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 どちらの投手もWHIPは平均以上とされる1.25以内であり、与四球率も3点台未満、奪三振率も8以上と、揃って及第点以上の数字を記録。両者ともに指標の面でも高い力量を示していると言えるが、WHIP、DIPS、与四球率、奪三振率といった各種の数字においては、いずれも森投手のほうが優れた数字を記録していた。

 中でも大きく差がついているのはK/BBで、益田投手と森投手の間には1.33という開きがある。WHIPの違いを見てもわかる通り、益田投手は森投手に比べて、走者を出しても粘り強い投球で後続を抑えてリードを守り切るスタイルとなっている。そういった投球傾向の違いが、K/BBの差にもつながっているか。

 その一方で被本塁打率に関しては、益田投手の方が優れていた。走者を出しても大量失点にはつながりにくく、最終的にはリードを守り抜く粘り強い投球スタイルは、被本塁打率が優れているという長所によって成り立っている面も大きい。

守護神の投球はポストシーズンでもチームの命運を握る重要なものに

 ルーキーイヤーから中継ぎとして出色の活躍を見せ、現在はチームの守護神として安定した投球を続けている両右腕。そのキャリアの変遷や投球スタイルに少なからず違いはあるものの、ともにチームの勝利に数限りなく貢献してきた。リーグトップクラスのリリーフ投手であるということに疑いの余地はないだろう。

 これから迎えるポストシーズンにおいても、僅差の試合終盤を託されるリリーフ投手の安定度は、シリーズ全体の流れを分ける要素になりうる。その点、両チームの守護神がこれまでもプレッシャーのかかる場面における登板を幾度となく重ねてきたことは、今季到達した100ホールド&100セーブの金字塔にも示されている。周囲の厚い信頼を背にマウンドに上がる両右腕の投球に、今後も注目してみる価値は大いにあるだろう。

文・望月遼太
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