2冠を目指す中田翔。セイバーメトリクスに表れない「すごさ」とは?
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約10年間にわたって、ファイターズの主砲として活躍を続けてきた中田選手
そんな中田選手が2019年までに残してきた年度別の成績は、下記の表の通りとなっている。
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その一方で、打率に関しては高くても.260台にとどまることが多く、キャリアで唯一打率.300超えを果たした2013年は、故障の影響で残念ながら規定打席未到達。出塁率の面でも近年はやや苦戦するシーズンが多く、出塁率と長打率を足して求める「OPS」という指標においても、直近4シーズンは.600台から.700台という、平均レベル、あるいはそれ以下という値にとどまっており、主砲としてはやや物足りない数字となっている。
しかし、中田選手の特長はチャンスでの勝負強い打撃や、1点が欲しい場面で確実に犠飛を打ち上げるといった、チームにとって貴重な得点をもたらすことのできる打撃にもある。セイバーメトリクスの分野において、打点は周囲の環境や運の要素が強い、といった理由で評価の対象外とされるが、中田選手の長所は、そういった各種指標の範疇外の部分にあるとも言えそうだ。
今回は、中田選手がこれまでに残してきた特徴的な数字や各種のデータについて紹介。セイバーメトリクス的な観点からは図れない中田選手の貢献度について、あらためて考えていきたい。(考察に用いた成績は2020年10月18日の試合終了時点)
打点を積み上げるペースは、現役選手の中ではトップクラスの速さ
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また、上記の通り、中田選手は10月18日時点で通算928打点と、通算1000打点まで残り72まで迫っている。これまでに通算1000打点を記録した選手は46名であり、通算2000安打(52名)よりも希少な記録と言える。いよいよ大台まで残り2桁と迫った中田選手にとっても、4番打者としての一つの勲章といえそうだ。早ければ来季にも達成の可能性がある大記録に向けて、これまで同様のハイペースで打点を積み上げていってほしいところだ。
歴代2位となる、シーズン13犠飛を放った技術は伊達ではない
ここでは、現役選手の通算犠飛のランキング上位5傑および、それに付随した数字についても見ていきたい。
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“絶好球”を逃さず打ち込んでいるが、それ以外にも……
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外角高めを.152とかなり苦手としているものの、それ以外のストライクゾーンに関しては明確な穴と言える箇所はない。総じて、今季の中田選手は多くのコースに対応できていると言ってよさそうだ。
今季の中田選手には、強打者への定石が通用しない?
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その一方で、スライダー、カーブといった外側に逃げていく変化球への対応に苦慮していることもうかがえる。コース別の打率では、アウトコース高めを除けば外側のボールを極端に苦手とはしていないだけに、これらの球種に対する数字が改善されてくれば、さらに成績が向上する可能性も秘めているだろう。
難しいボールであっても、きっちり外野まで運んでみせるプロの技
ボール球を打って記録した3本の犠飛の内訳を見ていくと、リック・バンデンハーク投手が投じた低めのボールゾーンに落ちるカーブ、同じく低めのボールとなる美馬学投手の決め球・フォーク、今井達也投手が高めのボールゾーンに投じた154km/hの速球といった、通常であれば当てるのが難しい球ばかりであった。そういった球であってもきっちりと外野まで運んでしまう中田選手の技術には、ただただ驚かされるばかりだ。
また、今季の犠飛の中にはカーブを打って記録したものが2本あり、苦手の球種であっても犠飛のシチュエーションでは捉えることができている。
4番打者として、そしてチームの精神的支柱として
中田選手は2018年オフ、このシーズンに取得したFA権を行使せず、ファイターズに残留することを選択。若手の多い現在のチームにとっても、長年にわたって主砲としてチームを引っ張ってきた中田選手の存在は、精神的支柱としても大きなものとなっている。こうしたリーダーとしての貢献度というものも、当然ながらデータでは計ることのできないものだ。
新陳代謝の活発なチームにあって、約10年間にわたってレギュラーを貼り続けている中田選手。その継続性の高さと“勝負強さ”という無形の価値は、これからもファイターズに多くの得点と、かけがえのない白星をもたらし続けてくれることだろう。
文・望月遼太
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