開幕二軍からの逆襲。ロッテ藤原恭大 2年目の飛躍が始まった

千葉ロッテマリーンズ
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【存在感が増すばかりの藤原恭大外野手】

 プロ野球が6月19日に開幕した日、背番号「2」は二軍にいた。マリーンズが福岡でホークスと激闘を繰り広げている時、はるか遠い浦和球場で藤原恭太外野手は汗を流していた。年の初めに「勝負の年」と位置づけ、開幕一軍をハッキリと目標に掲げていた若者はしかし夢破れ、開幕戦がナイトゲームで行われている時には、まだ室内練習場でバットを握っていた。

 「すぐに切り替えました。ダメなものはダメなので。その代わり、二軍で打ち続ける。そう決めたんです」

 負けん気の強い男は気持ちを切り替え、前を向いていた。華やかな舞台とはかけ離れた二軍という世界。黙々とティー打撃を繰り返す。それが藤原の試合後の日課となっていた。

 「試合での目標は毎試合、安打、四球でもいいので出塁をすること。一年間の中で調子が悪くてヒットが打てない時もあるのでそういう時に四球を選べるようにしたい。そういう細かい打撃を見につけることで打率は上がる。とにかく、もったいない打席を減らしたいと思います」

 当時の藤原はそう言って、一軍レベルに到達するために確実性を課題とする日々を過ごしていた。本人が言う「もったいない打席」の一例として7月3日のイースタンリーグ・ジャイアンツ戦(浦和)を挙げる。初回に中前打で出塁し先制に貢献。2点をリードして迎えた二回の第2打席目だ。一死一、三塁と追加点の絶好機でマウンドにはジャイアンツ今村信貴投手。カウント3ボール、2ストライクから三邪飛に倒れてしまう。

 「外角を待っていたらインコースにスライダーがきて振ってしまった。最低でも犠牲フライを打たないといけない場面。それに少しボール球だったと思う。本当にもったいないです」

 一つ一つの悔しい打席を思い返し、反省を繰り返した。失敗と向き合いながら若者は成長を続ける。試合後に室内練習場で行うティー打撃。フォームを見直し、一日のもったいなかった事を振り返る貴重な時間となっていた。

 ドラゴンズ根尾昂内野手、ファイターズ吉田輝星投手。同じ世代の選手たちも開幕二軍スタートが目立った。その中でジャイアンツの戸郷翔征投手が開幕から一軍入りを果たすと連勝スタートを切り話題となっていた時期。ふと、あるニュース記事が目に入った。侍ジャパン高校代表だった藤原が宮崎選抜として出場をした戸郷に手も足も出なかったという内容のものだった。その試合では安打を記録していただけに負けん気に火がついた。「悔しいですよね。早く一軍の舞台でまた対戦をしたいです」。その時は二軍で渡り合える舞台にいなかったが、来年の交流戦を見据え、堂々と相まみえたい考えを口にした。

 「自分の中で引き出しが増えている。色々と研究をしてフォームも変えて、やっていく手ごたえを感じている。打球も強くなっている自信がある。野手の正面をついてしまって結果的にアウトになっているけど、納得できる打球が打てている」

 プロ1年目、開幕一軍のスタメン出場でプロ初ヒットを放った若者は足元からしっかりと見つめ直し、前を向いた。それは目指すべき未来がハッキリと見えていたから。だから焦りも不安もなかった。そして心の準備があったからこそ一軍への緊急招集後、早速結果を出して見せた。そんな姿に井口資仁監督は言う。「彼に期待しているものは凄く高い。1年間試合に出続けると、普通にいくつかのタイトルを獲れる選手」。普段、クールな指揮官がここまで絶賛するのはなかなか珍しい。期待をしている証。プロ1号、2号と連続で先頭打者本塁打。華のある一発でファンを魅了した。なによりも大舞台がよく似合っていた。舞台を演じる千両役者のようなオーラーが漂っていた。スターになる人間は自分が輝ける時と舞台がよくわかっている。藤原は自分の現在地がしっかり見えている。今、その時が訪れているのだ。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
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