川崎ブレイブサンダースがSDGsを通して描くバスケットボールの未来

川崎ブレイブサンダース
チーム・協会

【©KAWASAKI BRAVE THUNDERS】

ここ数年、自治体や企業の活動を評価する指標として注目されているのがSDGs(持続可能な開発目標)です。2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までに17の目標を達成することを目指すもの。2030年のあるべき世界の形を示す内容が書かれているのがSDGsです。

そして川崎ブレイブサンダースは、新たなプロジェクト「&ONE KAWASAKI BRAVE THUNDERS SDGs CHALLENGE」を通して今シーズンからSDGsに積極的に取り組んでいきます。SDGs未来都市に選定されているホームタウン川崎市とも施策の一部について協定を結びました。そこで今回は、同プロジェクトのアドバイザー就任が決まった蟹江憲史氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授/ジャパンSDGsアクション推進協議会 会長)と、元沢伸夫(株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース代表取締役社長)による対談を通して、この取り組みへの思いを紹介します。
クラブを誇りと思ってもらうためにSDGsは必要なピース

元沢:今シーズンからSDGsの活動を本格的に行っていく背景として、まず川崎ブレイブサンダースは『MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL』という、バスケットボールを文化にしたい、ステータスを上げたいというミッションを掲げています。それを実現するためには、チームが強くなければいけない、ファンやスポンサーに応援してもらうことで財政基盤が整っていなければならない。ただ、そこに加え、なにかもう1つアクションが必要と考えていた中で、SDGsがすんなり自分の中ではまりました。社会課題について、自ら積極的に飛び込んで解決へ向けてチャレンジしていく。それをやってこそ、地元の方々に「川崎ブレイブサンダース は自分たちの誇りだよね」と思ってもらえる存在になれる。ただ、強いし、財政基盤が整っているだけでは、そういう存在にはなれない。今から最後のピースを埋めにいきたいと思ったことがきっかけです。

まだ、参入から3年目で事業基盤が盤石ではないので、まずはそっちを頑張りなさい、というお声もあるとは思っています。ただ、大変ありがたいことにスポンサー数増加を中心とした事業拡大はコロナ禍でもできており、だからこそしっかり腰を据えてSDGsについても本格的に活動していこうとなっています。そして、蟹江先生は日本のSDGsの第一人者と確信を持っており、今回ご協力をお願いいたしました。

【©KAWASAKI BRAVE THUNDERS】

蟹江:本格的にスポーツ団体でSDGsに取り組もうと、お声がけいただいたのは今回の川崎さんが初めてだったので本当に嬉しかったです。元沢さんとの最初のミーテーィングでもすごく本気に考えてくださっていることが伝わってきたので一緒にやれることを楽しみにしています。スポーツは人々に楽しさ、やる気、ワクワク感をもたらしてくれるもの。プロスポーツクラブがSDGsに取り組むことで、多くの人たちが「自分たちもやってみよう!」という気持ちになってくれる。特に選手たちは少年少女への影響力が大きく、「選手たちがやっているから」と真似をする機会を作ることができる。そういった訴求力を発揮してもらいたいです。

SDGsとは社会貢献でありつつ、それだけではありません。この取り組みをみんながやらないと地球の将来は危ういという段階に来ていて、コロナの問題もそういう面を表しています。みんながマスクをして、手洗いをすることが社会全体でのコロナ対策につながっていくように、SDGsもひとり1人が少しずつ何かをやることで、世界と人類のあり方を変えていけます。

【Maruka Ichimura】

元沢:ファンの皆さんには、まずは興味をもっていただきたいです。私自身も1年前はほとんど知らなかったです。SDGsは17の目標がありますが、その中で興味があるポイントを見つけてもらうのが最初のステップ。川崎ブレイブサンダースがやる取り組みを見て、面白そうと思ったものに参加していただきたい。それくらい気軽に考えてご一緒してもらいたいです。

蟹江:国連が決めたものなので皆さん、何となく構えがちになってしまいますが、その必要はないです。まずはやってみる、ことが大切。「よくわからないからやめてみよう」ではなく、とにかく動いてもらいたいです。まずはブレイブサンダース がお勧めする中で1つずつ、できることを取り組む。実際に行動することで、SDGsによって何をできるかを知っていただきたいです。そしてファンと非常に近いところにいて、影響力を持っているのがプロスポーツクラブです。クラブの活動を通して、ファンの方の行動が変わっていく成功事例を作っていきたいと思っています。

SDGsを成長にうまく活用した世界で最初のクラブに

元沢:スポンサー企業様とも、SDGsを通した活動をどんどん推し進めていきたいです。先日、グローバルパートナー契約を結んだミツトヨ さんとは、地域の人々にバスケットボールを通して英語や海外を身近に感じることができる企画を検討中で、これもSDGsの掲げる「質の高い教育をみんなに」に該当するものと考えています。

すでにSDGsで先端を走るスポンサー様には、実施されている取り組みを川崎ブレイブサンダース版に応用させていただく。例えば使わなくなった衣服を回収し、それをバスケットボールウェアで再利用する取組みなどができたらいいです。また、これからSDGsに取り組もうとしているスポンサー様とは、街中で子供達にバスケを教えるイベントをやる際に運営スタッフとして一緒に汗を流していただくなど、ともに推進していけたらと思います。

【©KAWASAKI BRAVE THUNDERS】

蟹江:SDGsとスポーツは、まだ未開拓な部分が多いです。今回の取り組みがうまく行けば、日本だけでなく、世界で最初にSDGsをうまく活用してチーム作りがよりうまくいった事例となれる。それは世界的にも大きく、打ち出していける成果です。ファンの皆さんは、そういったところにもつながっていくという気持ちで応援していただきたいです。

元沢:まず、短期的な目標の1つ目は、バスケを通じて健康と福祉でお役に立ちたい。僕らがやるスクール、大会、イベントなどを通じて、バスケを実際にプレイすることでスポーツに興味を持つ人数を増やしていく。2つ目の目標は、ホームゲームをアウトプットの場として提供していく。具体的には今、障がいのある方や引きこもりの方、シニア世代の方たちにホームゲーム運営の一部を手伝っていただいており、今シーズンからはコロナの状況にもよりますが、小学生、中学生、高校生にも就労体験をしてもらうことで、お客さんに喜んでもらう仕事はこういうことだと学んでもらえる機会を提供する。川崎ブレイブサンダース で一緒に「働きがい」を感じてもらえる人数を増やしていきたいです。

【©NPO法人ピープルデザイン研究所】

元沢:SDGs未来都市である川崎市の一員として、これからどんどん行動をしていきます。蟹江先生がおっしゃるとおり、失敗を恐れずにチャレンジして成功体験、失敗体験ともにオープンにして活動を皆さんと共有したいと思います。
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著者プロフィール

川崎ブレイブサンダースは、1950年のクラブ創設以降70年以上にわたり川崎市をホームタウンとして活動する「B.LEAGUE」所属のプロバスケットボールクラブです。前身の東芝バスケットボール部時代を含めてリーグ優勝4回、天皇杯では2021年・2022年の連覇を達成、クラブ史上と天皇杯でクラブ史上初・5回目の優勝となる連覇を達成しました。 2021‐22シーズンにキャプテンを務めた藤井祐眞選手は3年連続のリーグ個人賞3冠を受賞、2021-22シーズンには初めてレギュラーシーズン最優秀選手賞(MVP)を受賞。2021年11月に行われた2023年W杯予選では日本代表にも選出されました。 その他篠山竜青選手、2018年に帰化したニック・ファジーカス選手をはじめ日本代表経験のある選手も在籍しています。

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