【新日本プロレス】野中大三の「『KOPW2020』はまさにクリエイトモード」!!

チーム・協会

【野中大三さん】

大好評! 株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム!

■第21回『KOPW2020』はまさにクリエイトモード

【野中大三さん】

『KOPW2020』はまさにクリエイトモード

みなさん、こんにちは。
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。

いきなりネガティブな話題ですが、今年の8月は『G1 CLIMAX』がありません。
夏と言えば『G1』、という人生を送ってきた自分にとってはとんでもない事態です。
しかし、『G1』がないことを忘れるくらい今年の新日本プロレスは話題豊富です!

CHAOS同門対決からのYOSHI-HASHI選手初戴冠というハッピーエンドで幕を閉じたNEVER無差別級6人タッグ王座決定トーナメント。
毎週放送という新しい試みで開催される『NEW JAPAN CUP 2020 in the USA』。
そしてなにより、オカダ・カズチカ選手提案の新タイトル『KOPW2020』!
今回はこの『KOPW2020』についてゲーム的プロレス論を展開してみようと思います。

■『KOPW2020』には2つの注目ポイントあり

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

まずは、『KOPW2020』の大会システムをおさらいしましょう。

・参加選手は8選手。
・1回戦は対戦する選手がそれぞれルールを持ちより、ファン投票にて採用ルールを決定する。
・決勝戦は1回戦を勝ち抜いた4選手が4WAY戦で争う。
・優勝者は『KOPW2020』タイトルホルダーとなり、2020年内に防衛戦を行う。
・年内最終防衛戦の勝者が『KOPW2020』トロフィーを授与される。


なんとも斬新なルールです。
1回戦はシングル戦なのに決勝戦は4WAY戦なのです。
そしてなにより、1回戦のルールは選手提案型という異例のシステムです。
すでに参加8選手は決定し、これから先はルールの提案フェーズとなるようです。(※このコラムはルール最終発表前に執筆)

このタイトルのポイントは2つだと僕はとらえています。
ひとつは「ルールの想像力」です。これは一番目立つところなので読者の方も同じ感覚だと思います。
もうひとつ忘れてはならないポイントがあります。

それは「ファン参加型」という点です。
これまで試合順をファン投票に委ねることはあっても、試合形式をファンに委ねることは僕の記憶にありません。しかも選手が提案するルールの二者択一ですから選手の支持にも直接つながります。
ルールの想像力とファン参加型。このふたつが『KOPW2020』の重要なポイントなのです。

■クリエイティブ系はゲーム界のヒットジャンル

この2要素を備えたジャンルがここ数年、ゲーム業界では実は大ヒットジャンルになっています。
それは「クリエイト系」と言われるゲームたちです。
このジャンルの代表格はなんといっても『Minecraft』です。ジャンルを正確に分類すると、「サンドボックス」と言われるタイプのゲームですが、このゲームの最大の魅力はブロック型の様々なアイテムを組み合わせてゲームの世界で好きなものを作ることができる「クリエイティブモード」にあります。

僕は『Minecraft』でには何百時間も楽しんだうえ、後続のクリエイティブ系ゲームもたくさん遊びました。
世界中のユーザーがここ数年はクリエイティブ系ゲームに夢中になっているのです。

クリエイティブ系ゲームは簡単に言ってしまうと「何かを作るゲーム」です。
このカテゴリーはかなり古くから存在していて、ファミコンの「デザエモン」や、今も続編が出ている「RPGツクール」などがそれにあたります。
古くからあったジャンルなのに2010年代に入って大ヒットした理由、それは背景に動画投稿サービスとSNSの普及があったからだと僕は考えています。

自分で作ったゲームを友達に見せる程度だった交流の機会が動画投稿サービスとSNSで世界中の不特定多数の対象者向けに発信できるようになったのです。
動画投稿サービスに公開された作品がSNSで拡散され、それを見て世界中のユーザーが真似をしたり、インスパイアされた作品を投稿する、という現象が起こったのです。

ゲームは古くからユーザー間のコミュニケーションと相性のいい娯楽なのですが、2000年代に入って攻略サイト、実況動画と言ったさらに楽しいユーザーコミュニケーションが生れました。
その中でひと際目立ったのが、このクリエイティブ系ゲームたちなのです。
このジャンルが盛り上がった要素もまた、「想像力」と「ファン参加型」だったのです。

■『KOPW2020』はまさにプロレスのクリエイティブモード

【新日本プロレスリング株式会社】

話題を『KOPW2020』に戻しましょう。
選手がルールを提案し、ファンがそれを選択する。提出されるルールは二つなのに、どちらか一つしか採用されないという容赦のないシステムです。
ファンの心理は一様ではないので、投票理由はひとつでありません。ルールがおもしろそうだから、特定の選手に勝ってほしいから、などいろいろです。
このファン心理をうまく使うことも要求されると思うとなかなか奥の深いタイトルですよね。

あえて選択されにくいルールを提案したり、対戦相手の提案にかぶせるルールを提案するなど試合前の駆け引きも見ごたえ十分です。
選手によるルール提案と、それをファンが選定するという異例のシステム、まさに『KOPW』はプロレス界のクリエイティブ系タイトルだ、と言えるのではないでしょうか?

この辺で長い観戦歴にものを言わせて、知っているルールをあげてみます。
観戦歴の浅いファンの方々からは「なんじゃそれ?」と思われるものをあるかと思います。
たくさんあるのでタイプ別に羅列してみますね。

●決着限定型
2カウント限定、フォール限定、ギブアップ限定、KO限定、場外なし。など。
(デスペラード選手提案のフィニッシュ限定マッチもここに含まれますね。)

●形式変更型
複数本勝負、ラウンド制、グローブマッチ、打撃禁止、ロープブレイクなし、エニウェアフォール。など。

●参加者変更型
ハンディキャップマッチ、ランバージャックマッチ。など。
(オカダ選手と裕二郎選手はこのタイプで駆け引きをしています。)

●デスマッチ系
チェーンデスマッチ、ノーロープ、凶器持ち込み可、反則裁定なし、テキサス・デスマッチ、TLCマッチ、ラダーマッチ、金網デスマッチ。など。

●敗者ペナルティ型
髪切り戦、マスク剥ぎ、技封印マッチ、ユニット追放。など。

といった感じで長いプロレス史の中で生まれたルールはたくさんあります。
『KOPW2020』参加選手は過去に存在したルールを持ち出したり、アレンジしたりしてルール提案をすることでしょう。そしてそれを選ぶのはファン。そう、我々なのです。

1回戦が行われるのは8月26日(水)の後楽園ホール大会です。
はたしてどんなクリエイティブなルールが実現するのか、そしてファンの選択がどんな結果を導くのか。
プロレス界のクリエイティブ系タイトルの動向に注目せずにいられません!

【新日本プロレスリング株式会社/山本正二】

■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに36年。
記憶に残る、変則ルールマッチは武藤敬司選手と天山広吉選手による「敗者ムーンサルトプレス封印マッチ」。
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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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