足で魅せるロッテ和田。元々はフルスイングが売りの愛称は「和ギータ」

千葉ロッテマリーンズ
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【果敢に盗塁を敢行する和田康士朗】

 8月16日。和田康士朗外野手は1番センターでプロ初のスタメンを勝ち取ると3安打3盗塁。衝撃的なデビューを飾った。今でこそ足が売りの選手だが当初はフルスイングが売りだった。誰もが目を見張る強烈な一発を放ったのは2018年の春季キャンプの事。育成ドラフト1位で入団したばかりの春季キャンプ中の2月6日、シート打撃で本塁打を放った。台湾代表にも名を連ねるなどの実績を持つ同僚のチェン・グァンユウ投手からのアピール弾。若者が見せた鮮やかなフルスイングはインパクト抜群だった。

 「外野フライかと思って全力で走ったら、入りました。自分のスイングは出来たと思います。自信になりました」

 伊東勤監督が退任し新体制となり一、二軍の枠が撤廃されて迎えた春季キャンプ。井口資仁監督を始め首脳陣、そして先輩選手たちの前で19歳の育成選手は躊躇なく持ち味の豪快な一振りを披露した。これには指揮官も「育成選手としてなんとかアピールしたいという気持ちが伝わってきた。支配下になりたいと必死。あれだけ振れるのは素晴らしい。まだまだ体は細いから、体を作っていけば十分、一軍でやれる可能性のある素材じゃないかな」と称賛を惜しまなかった。

 フルスイングはホークス柳田悠岐外野手をイメージしたものだ。独立リーグ・富山サンダーバーズ時代に打撃動画をYouTubeで食い入るように見てはフォームとスイングを参考にした。「自分も悔いが残らないように」といつもどんな時も柳田ばりのフルスイングを繰り返した。豪快な振りを繰り返す姿に富山時代のチームメートでホークス在籍経験もあるエディソン・バリオス投手から柳田の愛称の「ギータ」と和田の名字をとって「和ギータ」と命名されたほど。そしてマリーンズのスカウト陣の眼に留まり、2017年10月に行われたドラフト会議の育成1位で指名された。

 かすかなチャンスをものにして支配下登録を目指すその眼はハングリーそのものだった。だからこそ多くの観客やマスコミの視線が集まるメイン球場で行われた実戦の場で結果を気にすることなく力一杯のフルスイングを見せ、結果を出して見せた。独立リーグ時代を思えばプロ野球の環境はすべてにおいて恵まれていた。練習をいくらでもしようと思えば出来る。練習を手伝ってくれるスタッフもいれば、ボールに不自由することもない。食事も一日3食提供される。独立リーグ時代は家賃9800円の市営住宅住まい。月給は手取りで10万円に届かなかった。わずか一年とはいえ、その環境の差に感謝し、悔いなきスイングを心がけていた。

 異色の経歴の持ち主でもある。中学校までは野球をしていたが、埼玉小川高校で野球を辞め、陸上部で走り幅跳びの選手としての日々を送っていた。6メートル45。それが和田の当時の走り幅跳びとしての記録。野球熱が再び湧いてきたのは高校一年の夏。埼玉県大会初日の初戦をボッとテレビで見ていると小中学校での野球のチームメートがベンチ入りしているのを知った。相手は名門・花咲徳栄高校。驚いたのと同時に沸々と野球への未練が湧きだした。高校一年の三学期に陸上部に退部届を出すと、地元のクラブチーム入りし、野球を再開。高校を卒業のタイミングで前年にクラブチームの先輩が独立リーグのチームにテストで合格をして入団をしていたことから「自分も腕試しに」とトライアウトを受験するとドラフト1位という破格の扱いで入団が決まった。3月からチームに合流しNPB入りを目指して一年間、ガムシャラにプレーをした結果として今がある。

 あの豪快なホームランを放った2018年2月。試合後に和田は「ちなみに昨年2月はまだ独立リーグのチーム入りする前で、自動車免許の合宿のため2週間、山梨にいました。このチャンスを逃したら免許をとれないと思ったので・・・。同じ合宿でも一年後はプロ野球のキャンプ。信じられないですよ」とキラキラと目を輝かせながら、笑った。まだ背番号は「122」だった。野球は大好きだが、向き合ってきた時間は他の選手たちと比べるとあまりにも短かった。1メートル84、72キロと体も出来上がっていなかった。ただエリートたちが知らない苦労は経験をしていた。躊躇なきフルスイングに底知れぬ可能性を感じたことを昨日の事のように覚えている。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
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