【東京選手権レポート】2020年トラックシーズン、いよいよ開幕!
【フォート・キシモト】
東京では、本来であればオリンピック開幕当日となるはずで、延期されたことにより「開幕までちょうど1年」となった7月23日から、第83回東京選手権が、4日間の会期で駒沢公園陸上競技場において行われました。実施にあたって、主催した東京陸上競技協会は、日本陸連が策定した「陸上競技活動再開のガイダンス」に沿った準備や運営様式を導入。感染防止のために万全の措置をとったなかでの開催となりました。
期間中は、梅雨前線が停滞した影響で、悪天候が続くあいにくの気象条件でしたが、小学生から中学・高校生も含めて幅広い年代の選手がエントリー。また、一般種目には、オリンピックや世界選手権の日本代表選手、日本記録保持者などのトップアスリートも多数出場し、それぞれに「2020年シーズン初戦」に挑みました。
有力選手が顔を揃えたことで「まるで日本選手権のよう」と、注目を集めたのは男子800m。1日目に予選が、2日目に準決勝・決勝が行われるタイムテーブルとなりました。このレースには、ダイヤモンドアスリートのクレイアーロン竜波選手(相洋AC・神奈川)が出場。今年、すでに2月(22日)に合宿先のシドニー(オーストラリア)でレースに出場して1分48秒13をマークしているクレイ選手にとっては、5カ月ぶりの実戦です。決勝では、スタートしてすぐに先頭に立ち、400mを55秒(場内アナウンスの情報による)で通過。ホームストレートに入る直前で動きを切り替えてスパートすると、後続を突き放し、1分50秒54の大会新記録でフィニッシュしました。
相洋高3年の昨年、日本選手権で自身の高校記録・U18日本記録も塗り替える1分46秒59のU20日本新記録を樹立して初優勝を果たしたほか、世界リレーでは男女混合2×2×400mリレーで3位の成績を残しているクレイ選手は、今年の秋からアメリカ・テキサスA&M大学への進学が決まっています。8月に出発するため、今回が渡米前最後の国内レース。「タイムより順位を狙っていた」ため、展開はレースの流れによって対応しようと考えていたそうで、「誰も出なかったので」前半から先頭に立つ形となりました。「(1周を)53秒で入れれば…と思っていたけれど、2周目(の最後)でラストスパートをかけることができたので、そこは良かったと思う」と振り返り、「課題を見つけることができたし、(勝って)気持ちよく終わることができたので良かった」と笑顔を見せました。
【フォート・キシモト】
レースへの出場は昨年9月(1日)の富士北麓ワールドトライアル以来。ここ2年、特に昨年は日本選手権決勝で最下位に終わるなど「すごく悔しいシーズン」だったというケンブリッジ選手ですが、冬場のトレーニングで意識してきた正しく、バランスよく力が使えているかという点が「走りに表れてきたように思う」とコメント。「もう一段上の走りができそうな感じ」という好感触も得られたようで、「まだまだこれからだが、最初のレースとしては合格点」と振り返りました。
【フォート・キシモト】
池畠選手は1994年生まれ。埼玉・聖望学園高から東海大へ進み、卒業後の2017年度からは、埼玉・飯能市内の中学校で非常勤講師を務める傍ら、駿河台大陸上部の跳躍コーチとして学生選手の指導に当たっています。高校3年時の新潟インターハイ(2012年)では優勝者と同記録で2位。その悔しさが大きなモチベーションとなって、「1位を取るまでは(競技を)続けようと思って」、競技を続けてきましたが、近年では全国レベルの大会で“ベストエイト進出の常連”といえる成績を残しており、自己記録の更新こそなかったものの、着実に地力を上げてきていました。ファウルでは16m50台の跳躍も経験していることもあり、池畠選手自身にとっては、驚きよりは「ようやく(出せた)という感じ」の結果だったそうですが、昨年の日本リスト2位に相当する記録をマークしたことによって、一躍、注目株として名乗りを上げる形となりました。
池畠選手が目標に掲げているのは、陸上競技のオリンピック種目で最も長く破られていない17m15の日本記録(山下訓史、1986年)更新。これが実現すれば、待望の“日本一”とともに、東京オリンピック代表の座も、大きくたぐり寄せることになります。
【フォート・キシモト】
このほか、男子では、2012年・2016年オリンピック日本代表で、日本記録保持者(8308点)である右代啓祐選手(国士舘クラブ・東京)が十種競技と砲丸投の2種目に出場しました。1・2日目に行われた十種競技では9種目を終えた段階で7035点を獲得して首位に立っていましたが、最終種目の1500mを途中棄権して3位で競技を終了。中1日おいて出場した砲丸投は13m96で8位に食い込みました。十種競技で右代啓祐選手の上位に来たのは、奥田啓祐選手(第一学院高教・東京)と右代啓欣選手(NAKAIAC・東京)。優勝した奥田選手は7487点、2位の右代啓欣選手は7432点と、気象条件が恵まれないなか、ともに自己新記録をマークしています。
男子やり投には、日本歴代2位となる86m83の自己記録を持ち、2016年オリンピック、2015・2017・2019年世界選手権出場の実績を誇る新井涼平選手(スズキ浜松AC)が出場しましたが、強い雨と風のなかでの競技となった影響もあり、記録は1回目にマークした73m99にとどまりました。
上位5選手が大会記録を更新した男子1500mは、今春、東海大を卒業して、横浜DeNA(東京)の所属となった館澤亨次選手が3分42秒67で優勝。このレースでは、高校3年の石塚陽士選手(早稲田実高・東京)が高校歴代3位となる3分44秒62をマークして4位に食い込む健闘を見せています。
【フォート・キシモト】
このほか女子では、400mHは、昨年の日本選手権覇者で、今春から社会人となった伊藤明子選手(セレスポ・東京)が59秒32で優勝。砲丸投では大野史佳選手(埼玉大・埼玉)が2回目に15m88をプットして制し、日本歴代10位、学生歴代6位だった自己記録を5cm更新しました。また、七種競技では、高校記録、U18日本記録、U20日本記録、学生記録を保持するヘンプヒル恵選手(アトレ・東京)が5646点で優勝。日本歴代2位である自己記録5907点(2017年)には及びませんでしたが、左膝を手術した2017年秋以降、膝の痛みや足首の捻挫などで思うように活躍できなかったここ2年の苦境を脱して、着実に復活に向かっている様子を印象づけました。今季は、9月に開催される日本選手権混成で、日本記録(5962点、中田有紀、2004年)の更新を目指しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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