ロッテ本拠地ZOZOマリンスタジアムの風は気まぐれ!複雑怪奇な風を分析する

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【ZOZOマリンスタジアムの風速計。14メートルの強風が吹き荒れている。】

 センターポールがガタガタと折れそうになるぐらい揺れていた。最大風速17メートル。7月7日、七夕の夜。ZOZOマリンスタジアムで行われた埼玉西武ライオンズ戦は強風が吹き荒れる中、行われた。この日から始まった埼玉西武6連戦。振り返ると風が緩やかだったことは少なく常時、10メートル以上は吹き荒れる状態。ただここを本拠地とするマリーンズ選手たちにとって、もはや10メートルの風であれば普通の部類に定義される。
 
「慣れるしかないよね。自分も20代のころは苦しんだけど30代になると自信が持てるようになってきた。なんといってもスタートが大事になるけど、決めつけないことも大事。ここの風は本当に複雑で厳しい。他の野外球場はある程度、風は一定。ここは日によっても違うし時間によっても違う。条件によっても違う」
 
 大塚明外野守備走塁コーチはマリンの風をそのように表現した。複雑怪奇な風の動き。しかし現役時代の大塚コーチは風を計算し尽くしたように悠々とフライキャッチをする選手の代表格でもあった。それはこの風と球場の特徴を知り尽くしていたからの事でもある。

 「意外と知られていないのだけど、この球場はバックネット側の方が高くてセンターの方が低い。だから上の方は特に動きが変わって難しい」と大塚コーチは要因の一つとしてZOZOマリンスタジアムの構造上の特徴を指摘した。バックネット側の球場壁の高さが33・9メートルに対してバックスクリーン側は27・6メートル。この6・3メートルの高さの差が風の動きを難しくする。大事なのは上空に上がったフライがこの6・3メートルの差のある空間まで上がったのか、その下かを見極めること。これが捕球する上で大きなポイントとなる。下であれば他の打球と同じような動きをするが、この6・3メートルの特殊な空間に上がったり、それより上まで行くと逆の流れ方を始めるのだ。

 「だから最初に見極めないといけないのは打球がどこまで上がるか。天井近くまで上がるとこれまでの打球の動きと逆の動きをする可能性があると気をつけないといけない」(大塚コーチ)

 7日の試合でチームは風を計算し尽くし、味方につけながら勝利となった。しかし試合後、余韻に浸る事なく外野手は再びグラウンドに出るとこの風に慣れるべくフライキャッチの練習を入念に繰り返した。ノックをするコーチ陣も慣れたもの。高いフライを打ち上げ、難しい打球をあえて作り上げていた。

 11年目を迎えるベテランの荻野貴司外野手も風の難しさを口にする。「入団したころよりは分かるようにはなってきましたけど難しい事には変わりはない。試合中に風向きが変わることもあるし、センターからホームに吹いて、バックネットに当たって風が戻って伸びてくることもある。球場の構造の話で言うと天井の上か下かの境目に上がった打球が一番、見極めるのが難しいかもしれない。どっちとも判断がつかないですからね」

 7日の試合では六回にライオンズ山川穂高内野手の打った瞬間にスタンドインかという打球が真下に落ちるように戻されセンターの荻野が捕球する場面もあった。これについて荻野は「外野から内野に戻される強い風が吹いていました。強い打球でしたけど、もしかしたらと思っていた。だからあきらめずにギリギリまで追いかけていた。そしたらボールが真下に落ちてきた。もし、決め着けていたらとれていないかもしれない。でもマリンでは結構あること」と振り返る。決めつけないこと。これは誰もが口にするマリンのフライキャッチの大原則だ。ホームラン性の打球が戻されることもあれば、ボールがファウルゾーンからフェアゾーンに入ることもある。

 「2、3メートル範囲内にアバウトに照準を持ってきてつねに半身で正面には入らない。色々な事を想定していないとダメ。打球が流れてライトからセカンド。ライトからセンターもあるから、となりの守備範囲のボールと決めつけないことも必要。間にポトリもよくあるからね。お互いの確認、準備、声掛けも大事。打球でいうと詰まった打球が怖い。場所でいうと外野のアンツーカー辺りが難しいね」(大塚コーチ)

 ちなみに試合中継やテレビニュースなどでよく取り上げられる風速計はバックスクリーン最上部の上空27メートル地点に設置されており、風速の表示は30秒更新で更新前の1分間の平均風速(計測は1秒毎)が表示される。だから上空高い計測ポイントと実際のグラウンドレベルでは風の向きが違う事は非常に多い。

 これからも何度も吹き荒れるであろうマリンの強風。ぜひ外野手のスタート、備え、そして外野手同士の確認作業や風向きと実際の風の違いや天井より上の打球と下の打球でどのように動きが違うかなどにも注目をしてみていただくと面白いかもしれない。ZOZOマリンスタジアムの風を名物として楽しんで欲しい。そしてこの不規則な動きをするフライを死に物狂いでキャッチするプロの技術を堪能して欲しい。マリンの風は気まぐれだ。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
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