【サーフィン】国際サーフィンデーに新型コロナと海洋環境を考える
【K.Rhodes】
毎年6月第3土曜日の国際サーフィンデー(ISD)は、スポーツやライフスタイルとしてのサーフィン、および海洋資源の持続可能性について考える記念日。今年はISDに際してコロナ禍からの回復と自然環境について考えよう。
自然環境の小休憩
コロナによるロックダウン中に目撃情報が多く寄せられたイルカ。大海を自由に泳ぎ回る本来の姿。 【Photo: K.Rhodes】
タイや米国などではウミガメの繁殖が増えて、CNNの記事によると世界でも有数のウミガメの営巣地があるタイ、プーケット島で見つかったウミガメの巣はこの20年で最も多かった。政府の調査によると、ウミガメだけでなく、この海域に生息するイルカやジュゴンなどの海洋生物、さらにはヤドカリなど、海洋生物の餌になる生物も個体数が増えているという。
米フロリダ州でもウミガメが繁殖する傾向が見られたり、トルコ・イスタンブールで船舶の行き来が激減したボスポラス海峡にイルカの群れが目撃されたり、アラスカでザトウクジラの活動が増えたりと、世界の様々な海域からうれしい情報が届き、コロナ禍のまた別の側面に気づかせてくれた。
コロナ禍からどこへ向かうか「グリーンリカバリー」とは
残された自然を大切にしたい 【Photo: K.Rhodes】
世界がコロナ禍からの回復をめざすうえで、欧米を中心に日本でも広まりつつある、脱炭素・循環型経済など持続可能な方法で復興しようとする「グリーン・リカバリー」について紹介したい。
コロナ危機で停滞した社会を、気候変動を抑え、生態系を守りながら立て直そうというのが、グリーンリカバリーの基本的な考え方だ。具体的には、融資する際にCO2排出量の削減を条件として求めたり、環境に負担が少ない交通手段の整備を推奨したり、太陽光発電設備の助成金制度への投資を増やすなど、国の政策レベルから環境に配慮する。
国連事務総長もグリーンリカバリーを呼びかけており、国連環境計画とともに世界中の投資家グループが参加している「the Investor agenda」もコロナ危機からの持続可能な回復を求める声明を発表している。
また、日本企業も含めて155もの企業が、各国政府に対しCO2排出量を抑えながらコロナ禍からの経済再建を求める「ネットゼロ・リカバリー」声明に署名した。アメリカでは、大小300社以上の企業が経済回復と同時に気候変動解決に取り組む必要性を、「Build Back Better – より良く立て直す」として、訴えている。
手を取り合って海をまもろう 【Photo: Shunya Mizumoto】
経済界でも軌道修正
大量生産、大量消費、責任所在の不明化が生み出した現状 【Photo: K.Rhodes】
今年のスイスでの会合では、現在のShareholder Capitalism からStakeholder Capitalismへの移行を呼び掛けている。企業の利益が株主(Shareholder)にとどまらないよう、従業員や顧客、生産者や地域社会など関わる人(Stakeholder)全員に還元する仕組みを作る狙いだ。
かつて日本では事業拡大の基本は、売り手、買い手、社会の三方を満足させる「三方よし」という経営理念が主流だったが、新しく提案されているShareholder Capitalismはこの「三方よし」の考え方同様、売り手の利益だけでなく、買い手の満足や社会への貢献をも重視している。自然環境や地域社会に配慮した経済発展が主流になれば、地球への負荷を大きく減らすことができるだろう。
コロナ禍が示したもの「全てのものは海へ流れつく」
世界経済フォーラムからほど遠い南太平洋のトンガ王国。しかし、ここも先進国の影響から無縁ではない。 【Photo: K.Rhodes】
行き過ぎた経済活動や資本主義が結果的にコロナを招いたのだとすれば、いつもビーチクリーンで回収するペットボトルや、海を漂うマイクロプラスチックやオイル、白骨化するサンゴ、降雨のあと海に入れない南カリフォルニアの海は、地球の悲鳴であり人類への警告だったのかもしれない。
全てのものは最終的には海へ流れつく。工場の汚染水や、開発工事の流出液、鉱物や石油の採掘作業から、人々が毎日買ったり捨てたりするものまで、人間の活動は全て何らかの形で自然につながって影響している。
明るいサーフィンの未来のために 【Photo: Lucky】
ビーチクリーン、使い捨て容器の不買、ペーパーレス、エコバッグの持参、環境に負担が少ない商品を選ぶ。それを自分一人だけではなく、職場にも少しずつ広める。一人がやっても大した影響はないが、1億人がやればその影響は素晴らしい。できることから始め、身近なところから広めていく。一市民として、一地球人として、海を愛する一サーファーとして。
執筆:ケン・ロウズ
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