G1馬のデビュー戦での馬体重は?

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【2019/6/2 東京5R 2歳新馬 1着 7番 サリオス 馬体重534キロ】

6月に入り、今年も2歳新馬戦がスタートした。昨年の新馬戦開幕週には、後に朝日杯FSを制するなどの活躍をみせるサリオスが東京芝1600m戦でデビュー勝ち。このときの馬体重は先日の日本ダービー2着時(528キロ)より6キロ重い534キロで、これがそのまま、現3歳世代の新馬戦(芝コース)最高体重優勝記録となった。そこで今回は、2歳〜3歳春(日本ダービーまで)にG1を制した馬の新馬戦での馬体重について調べてみたい。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、集計対象は2010〜19年の2歳世代とした。

2歳〜3歳春G1優勝馬の新馬戦馬体重(500キロ以上)

■表1 【2歳〜3歳春G1優勝馬の新馬戦馬体重(500キロ以上)】

まず表1は2歳〜3歳春のG1優勝馬のうち、新馬戦の馬体重が500キロ以上だった馬を調べたものである。集計対象のG1馬は60頭(G1計73勝)で、500キロ以上だったのは昨年のサリオスなど8頭。そのうちなんと5頭は、朝日杯FSの優勝馬だった。逆に言えば、過去10年の朝日杯FS優勝馬のうち半数は、500キロ以上で新馬デビューを迎えていたことになる。
残る3頭は、皐月賞馬2頭と日本ダービー馬1頭。ただ、過去10年の皐月賞と日本ダービーで、デビュー戦の馬体重が500キロ以上だった馬は計【3.9.7.55】と2〜3着止まりが多い。大型馬に後のG1制覇を期待するなら、皐月賞や日本ダービーよりも、まずは朝日杯FSと言えそうだ。
また、この8頭はすべて新馬戦で勝利を飾っていた。大型馬であっても、レースを使われつつ良化して2戦目以降に勝ち上がるのではなく、初戦からしっかり勝ち切るくらいの馬でなければ、3歳春までにG1を制するのは難しいようだ。

2歳〜3歳春G1優勝馬の新馬戦馬体重(450キロ未満)

■表2 【2歳〜3歳春G1優勝馬の新馬戦馬体重(450キロ未満)】

表2は表1とは逆に、450キロ未満という軽い馬体重でデビューし、後に2歳〜3歳春のG1を制した馬である。まず、7頭中3頭がデビュー戦で敗戦を喫していたことが、表1との違い。そしてもうひとつ、表1の8頭はすべて牡馬だったが、こちらは7頭中6頭が牝馬だ。
その牝馬6頭のG1勝ちの内訳は、阪神JFとオークスが3勝ずつ。ミッキークイーンを除く5頭は桜花賞にも出走していたが、勝利には手が届いていない。過去10年の桜花賞出走馬のうち、デビュー戦の馬体重が450キロ未満だった馬は【0.5.6.60】。2016年にハナ差2着だったシンハライトなど勝ち馬と同タイムだった馬も3頭を数えるが、なぜか桜花賞だけは勝てていないという結果だ。

新馬戦から10キロ以上の馬体増で2歳〜3歳春G1を制した馬

■表3 【新馬戦から10キロ以上の馬体増で2歳〜3歳春G1を制した馬】

続いては、新馬デビュー時とG1優勝時の馬体重の「差」に注目してみた。表3は、その差がプラス10キロ以上あった9頭(メジャーエンブレムは2勝)である。プラス18キロでトップに並ぶグランアレグリアとダノンファンタジーは、18年6月3日に同じ東京芝1600m新馬戦でいきなり対戦していた。この2頭も含め9頭中7頭は新馬戦が始まったばかりの6月デビュー、残る2頭も8月と、いずれも早い段階で新馬デビューを果たしていた。また、G1優勝時に500キロの大台に乗っていたのはサートゥルナーリア1頭のみ。そのサートゥルナーリアにしても2つめのG1・皐月賞は496キロ(新馬戦比プラス8キロ)で優勝しており、500キロ前後でデビューした馬が、さらに10キロ以上の馬体増を記録して2歳〜3歳春のG1を勝つのは難しいようだ。

新馬戦から10キロ以上の馬体減で2歳〜3歳春G1を制した馬

■表4 【新馬戦から10キロ以上の馬体減で2歳〜3歳春G1を制した馬】

最後に表4は、新馬戦から10キロ以上の馬体減で2歳〜3歳春のG1を勝った8頭(ジェンティルドンナは2勝)。こちらは表3とはまったく違い、8頭中6頭が2歳11月以降のデビューで、残る2頭も10月と8月。表3に多かった6月デビュー馬は1頭もいない。また、8頭中7頭は新馬戦に462キロ以上で出走していた。表3とは逆の形で、中〜小型馬がデビューから10キロ以上馬体を減らしているようでは、この時期のG1はなかなか勝てないということになる

以上、2歳〜3歳春のG1優勝馬について、優勝時の馬体重と新馬戦での馬体重の関係を調べてみた。新馬戦からG1優勝までの間隔が開けば開くほど「成長分」が馬体重に現れやすくなることは想像できたが(表3)、6月デビュー馬がここまで多かったことは驚きだ。対照的に、デビューから10キロ以上のマイナス体重でG1を制しているのは、秋後半以降に初出走を迎えた馬が中心になる(表4)。デビューからの馬体重増減幅とデビュー時期の関係がG1レース前に取り上げられることはほとんどないだけに、年末に2歳G1を迎えた際にはぜひ思い出したいデータだ。

文:浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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