豪華メンバーによる一戦 安田記念を分析する

JRA-VAN
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【2020/5/17 東京11R ヴィクトリアマイル 1着 12番 アーモンドアイ】

今週末は東京5週連続G1の掉尾を飾る安田記念が行なわれる。今年最大の注目馬はアーモンドアイ。3着に敗れた昨年の雪辱に挑むとともに、史上初となる8つ目のG1制覇もかかる。登録馬に計11頭ものG1馬が含まれるという豪華メンバーが揃った一戦を、過去10年のデータから展望してみたい。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

人気別成績

■表1 【人気別成績】

表1は人気別成績。1番人気はほぼ標準的な好走率で、単複の回収率は90%台とやや高め。そのほか上位人気では、3番人気は複勝率50.0%だが、2、4番人気は好走例が1例のみと、上位では偶数人気に不振傾向が見られる。以下、9番人気まで満遍なく好走しており、そのうち7〜9番人気が計5勝を挙げていることは特筆に値する。

前走着順別成績

■表2 【前走着順別成績】

表2は前走着順別成績。過去10年の勝ち馬10頭のうち9頭は前走1〜4着に入っており、1着を獲るためにはなるべく満たしておきたい条件だ。複勝率ベースだと6〜9着でも決定的な差はなく、前走でひとケタ着順に収まっていれば好走の可能性を残す。いっぽう前走10着以下から巻き返したのは26頭中1頭のみとなっている。

前走人気別成績

■表3 【前走人気別成績】

表3は前走人気別成績。なお、前走が海外だった馬は集計から除いている。興味深いのは、前項の前走着順別成績と数字の傾向が似ていること。集計対象の安田記念1着馬9頭のうち8頭は前走1〜4番人気で、好走例は前走9番人気までに限られ、前走10番人気以下だった15頭はすべて着外に終わっている。表2のデータと合わせて、前走の着順・人気のどちらか(もしくは両方)がふたケタだった馬は苦戦傾向とまとめてもいいだろう。

年齢別成績

■表4 【年齢別成績】

表4は年齢別成績。大きな特徴と言えるのが、いずれも最多の4勝、1〜3着10回を記録したのが6歳ということだ。4歳や5歳と比べて好走率でも引けをとらず、回収率も高い。また、7歳も勝ち馬こそ出していないが、2、3着計3回を記録。8歳以上の好走例はないものの、高齢馬を侮ってはいけないG1となっている。

4歳の好走馬一覧

■表5 【4歳の好走馬一覧】

年齢についてもうすこし掘り下げてみたい。表5は4歳の好走馬を、注目すべき実績とともに一覧にしたもの。4歳の好走パターンはふたつあり、前走(もしくは前々走)まで連続好走を果たしていた上昇馬か、同条件のNHKマイルCの勝ち馬であること。そして、注目すべきは、この7頭のうち勝ち切った15年のモーリス、18年のモズアスコット、19年のインディチャンプの3頭は、いずれも2、3歳限定のG1出走歴がなかったことだ。4歳馬に関しては、こうした遅れてきた大物タイプのほうが勝ち切れるレースとなっている。

5歳の好走馬一覧

■表6 【5歳の好走馬一覧】

表6は5歳の好走馬を、その実績とともに一覧にしたもの。4歳馬について連続好走中の馬が好成績と述べたが、表6の通り、それは5歳馬についても変わらない。ただし、1着を収めたのは海外G1を含んで連勝中だったロードカナロアとジャスタウェイの2頭だけで、7連勝中だったモーリスでも2着までと、5歳馬が勝つのはなかなかハードルが高い。また、5歳の好走馬9頭中7頭は、同年に勝利を挙げていたことも指摘しておきたい。このなかには、12年に15番人気3着のコスモセンサー、13年に12番人気3着のダノンシャークといった人気薄の激走例も含まれている。

6、7歳の好走馬一覧

■表7 【6、7歳の好走馬一覧】

表7は6、7歳の好走馬を、その実績とともに一覧にしたもの。まず、該当する延べ13頭のうち5頭は、すでに安田記念1〜3着の実績を持っていた。これに準ずる存在と言えそうなのが、いずれも前年4着だった16年3着のフィエロ、17年1着のサトノアラジン。この2頭はいずれもディープインパクト産駒でもある。あるいは、15年3着のクラレントは安田記念の実績はないが、NHKマイルC3着で東京芝1600mG1の実績は持っていた。

残る5頭の好走パターンは、ここでも前走まで連続好走していたのが3頭。あとは、東京以外の芝1600mG1で好走した実績を持っていたのが2頭となっている。

【結論】

登録馬17頭のうち、前走の着順・人気のどちらかがふたケタだったのはロードクエストしかおらず、この点からもハイレベルなメンバーであることが伺える。もっとも、前走まで2戦以上連続好走を果たしているのはダノンプレミアム(3戦連続3着以内)、グランアレグリア(2戦連続連対)、ダノンキングリー(2戦連続3着以内)の3頭だけで、これは意外な感もある。

グランアレグリアダノンキングリーは4歳馬。この場合、2、3歳限定のG1に出走せず、3歳夏以降に上昇した馬のほうが勝ち切れるのだが、前者は桜花賞馬、後者もダービー2着馬でともに該当しない。好走は可能とみるが、データ的には2、3着までということになる。

一方、ダノンプレミアムは5歳。5歳の場合も連続好走中の馬が結果を出しているのは4歳と同様で、多くは5歳になってから1勝以上していた。その点、ダノンプレミアムは今年1戦して3着1回という結果は気になるところ。もちろん、その1戦が海外G1だった点は考慮すべきだろうし、好走率の高い芝2000m重賞1着実績を持つ点はプラスに考えたいが、データ的にドンピシャというわけではない。

ならば、今年は過去の安田記念(もしくは東京芝1600mG1)実績を重視すべきか。となると、昨年1着のインディチャンプと3着のアーモンドアイ。両馬ともに前走は1番人気1着で、前走着順・人気の好走条件も満たす。特にアーモンドアイは芝2000m重賞1着実績を持つことはプラスで、前走のヴィクトリアマイルを圧勝してマイル戦への不安を払拭した。8つめのG1タイトル奪取は十分に可能だろう。

ほかに東京芝1600mG1で実績を持つ馬では、NHKマイルC1着のケイアイノーテックとアドマイヤマーズ、ヴィクトリアマイル1着のノームコアの名前も挙げておきたい。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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著者プロフィール

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