無敗の皐月賞馬の日本ダービー挑戦を考える
【2020/4/19 中山11R 皐月賞(G1) 1着 1番 コントレイル】
今回はかつてコントレイルと同じように無敗で皐月賞を制し、日本ダービーに挑戦した馬たちを振り返ってみたい。その上で、コントレイルの春のクラシック2冠達成の可能性について考えてみることにする。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
グレード制導入(1984年)以降の無敗の皐月賞馬
■表1 【グレード制導入(1984年)以降の無敗の皐月賞馬】
グレード制が導入された1984年にいきなりシンボリルドルフがデビューから6連勝で春のクラシック2冠を達成した。同馬を皮切りにミホシンザン(85年)、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、アグネスタキオン(01年)、ディープインパクト(05年)、サートゥルナーリア(19年)、そしてコントレイル(20年)と、8頭の馬が無敗で皐月賞を制した。1984〜2020年までの37年間で8頭誕生しているので、単純に割ると約4.6年に1回の割合で無敗の皐月賞馬が出現していることになる。ただ、実際には2年続けて(84・85年、91・92年、19・20年)出現するケースが目立っている。
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あらためて無敗で皐月賞を制した馬たちを見ると、競馬史に残る名馬ばかりだ。日本ダービーも優勝したのはシンボリルドルフ、トウカイテイオー、ミホノブルボン、ディープインパクトの4頭。ありきたりで簡単な言葉だが、とにかく強かった。ただ、その他の馬も相当な実力があった。ミホシンザンとアグネスタキオンは故障に泣いたが、前者は後に菊花賞や天皇賞(春)を制したし、後者はデビュー2戦目のラジオたんぱ杯3歳Sで、後のダービー馬・ジャングルポケットを2着に下してレコードで優勝していた。もし無事であればダービーも勝っていて不思議はなかった。
つまり、無敗で皐月賞を勝てるような馬は、間違いなく圧倒的な力を持っていると言える。皐月賞から400m距離が延びても心配はいらない。無事に日本ダービーに出走できれば、勝利できる確率は高いと考えるのが普通だ。それだけに昨年のサートゥルナーリアの結果(4着)は意外なものになった。果たしてコントレイルにはどのような結果が待っているだろうか。
皐月賞と日本ダービー(2冠)を制した馬(1984年以降)
■表2 【皐月賞と日本ダービー(2冠)を制した馬(1984年以降)】
父親に注目すると、シンボリルドルフとトウカイテイオーは親子で達成したことになる。コントレイルの父はディープインパクトなので、今年も親子による春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)制覇という記録がかかっている。これまでディープインパクト産駒は皐月賞も日本ダービーも勝っているが、両方を勝った馬はまだ出ていない。なお、ブライアンズタイム(ナリタブライアン、サニーブライアン)とサンデーサイレンス(ネオユニヴァース、ディープインパクト)は春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)馬を2頭も出している。
2冠(皐月賞・ダービー)馬の日本ダービーでの単勝オッズ、2・3着馬(1984年以降)
■表3 【2冠(皐月賞・ダービー)馬の日本ダービーでの単勝オッズ、2・3着馬(1984年以降)】
サニーブライアンが勝利した97年のレースも印象深い。他の馬が1番人気で優勝しているなか、同馬は単勝13.6倍の6番人気だった。この年だけ異質に見えることだろう。だが、その前の皐月賞ではもっと軽視されていて、11番人気だった。皐月賞はノーマークでの逃げ切り勝ちという結果となり、素直に実力を評価しづらい面があった。日本ダービーでは人気は上がったものの、依然として半信半疑という見方をするファンが多かった。しかし、東京芝2400mのダービーでも再び逃げ切りを果たし、堂々と2冠を達成。低評価を覆す走りを続けて、本当の実力を証明してみせた。異例ではあったが、今後見られるかわからないような貴重なケースだったように思う。
最後にダービーでの2着馬を調べると、意外な人気薄の活躍も目立つ。84年2着のスズマッハは21頭立ての20番人気だった。92年のレースからフルゲートは18頭となり現在に至るが、同年は16番人気のライスシャワーが2着に入った。また、11年は10番人気のウインバリアシオンが2着に好走した。それ以外の年は2〜5番人気の馬が2着に入っている。つまり、6〜9番人気は1頭も2着に入っていない。その分、3着が多いという傾向が出ている。仮に今年はコントレイルが優勝すると予想する場合、2着には2〜5番人気もしくは10番人気以下の馬がくると想定してみるのも面白い。
文:小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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