牡牝の複勝率の差が大きい種牡馬、騎手、厩舎をチェック

JRA-VAN
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【2012/3/25 中京11R 高松宮記念(G1) 1着 10番 カレンチャン】

牝馬の活躍が目立つ「フィリーサイアー」という言葉があるように、昔から牡牝で成績に差がある種牡馬がいることはよく知られている。同様にジョッキーでも「牝馬の誰々」といったフレーズを耳にするし、ある厩舎の調教法が牡馬に合う、牝馬には合わないといったことも考えられそうだ。そこで今回は、牡馬(セン馬も含む)と牝馬で複勝率の差がある種牡馬、騎手、厩舎についてのデータを見てみたい。集計期間は2017年1月5日から2020年4月26日。なお、集計対象は平地戦のみで、期間内に500走以上した種牡馬、騎手、厩舎に限っている。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

牝馬より牡馬の複勝率が高い種牡馬

■表1 【牝馬より牡馬の複勝率が高い種牡馬】

表1は、牝馬より牡馬の複勝率が高い種牡馬を10位まで示したもの。なお、集計期間全体の数字を最初に記しておくと、牡馬は複勝率22.8%、牝馬は同19.4%となっている。つまり、牡馬のほうが3.4%高いのが標準的な数字であることを踏まえておきたい。

表1の特徴として挙げられるのが、ダートを得意とする種牡馬が多く入っていること。フリオーソ、トランセンド、エスポワールシチー、カネヒキリ、ベルシャザールは現役時代もダートで活躍していたし、輸入種牡馬のシニスターミニスターも完全にダート向き。一般にパワーを要するダートは牡馬有利とされるので、表1の顔ぶれもそれを反映しているのだろう。そのなかで異彩を放っているのがステイゴールドで、これまでに産駒が挙げた平地重賞92勝のうち、ダートは1頭が2勝しただけ。サンデーサイレンスの直仔ではネオユニヴァースも表1にランクインしているが、こちらはダート重賞を勝った産駒も複数出しており、やはりステイゴールドは例外的な存在と言えるだろう。

牡馬より牝馬の複勝率が高い種牡馬

■表2 【牡馬より牝馬の複勝率が高い種牡馬】

表2は、牡馬より牝馬の複勝率が高い種牡馬を8位まで示したもの。8位までとしたのは、牝馬の複勝率が牡馬より高い種牡馬は8頭しかいなかったためである。

1位のアドマイヤマックス、2位のリーチザクラウンはローカル短距離で牝馬の好走が多いことで共通する。続くサウスヴィグラスはまったくのダート向きだけに、牝馬の好走率が高いというのは意外な印象を受ける。4位のメイショウサムソンは平地重賞勝ち馬4頭中3頭が牝馬、5位のクロフネもカレンチャン、スリープレスナイト、ホエールキャプチャなど牝馬の活躍が目立つ有名なフィリーサイアーだけに、これはイメージ通りと言える。

牝馬より牡馬の複勝率が高い騎手

■表3 【牝馬より牡馬の複勝率が高い騎手】

表3は、牝馬より牡馬の複勝率が高い騎手を10位まで示したもの。亀田温心騎手、菅原明良騎手、加藤祥太騎手と若手ジョッキーが1〜3位を占めたのが特徴的で、8位の木幡初也騎手が25歳、10位の川又賢治騎手も22歳と若い。これは仮説だが、若手ジョッキーは先行策をとることが多い。そして、前に行って粘り込むような競馬は牡馬のほうが向いている。牡馬を得意とする若手が多いのは、そうした影響があるのかもしれない。

牡馬より牝馬の複勝率が高い騎手

■表4 【牡馬より牝馬の複勝率が高い騎手】

表4は、牡馬より牝馬の複勝率が高い騎手を10位まで示したもの。複勝率が20%以上の騎手に着目すると、2位の岩田望来騎手、3位の三浦皇成騎手、5位の戸崎圭太騎手、7位の大野拓弥騎手の名前が挙げられる。このうち三浦騎手、戸崎騎手、大野騎手はすでに豊富なキャリアを積んでいるのに対し、岩田望来騎手は今年でデビュー2年目。近い未来の牝馬名人候補としてチェックしておいてもいいかもしれない。

牝馬より牡馬の複勝率が高い厩舎

■表5 【牝馬より牡馬の複勝率が高い厩舎】

実は、種牡馬や騎手以上に、厩舎では牡牝の差が大きい傾向が見られる。表5は、牝馬より牡馬の複勝率が高い厩舎を10位まで示したもので、1位の池江泰寿厩舎は20%近くも牡馬の複勝率が高いことがわかる。三冠馬オルフェーヴルを筆頭に、これまでに9頭のG1馬を送り出している名門だが、そのうち牝馬はミッキークイーン1頭のみ。注目度の高い厩舎でもあり、この実績によって次に預託されるのも牡馬というサイクルが出来上がっているのかもしれない。同じことは、G1常連の中内田充正厩舎、友道康夫厩舎、堀宣行厩舎にも言えそうだ。また、表5の10厩舎を東西の所属で分けると関西8、関東2と、関西に偏っていることも特徴的だ。

牡馬より牝馬の複勝率が高い厩舎

■表6 【牡馬より牝馬の複勝率が高い厩舎】

表6は、牡馬より牝馬の複勝率が高い厩舎を10位まで示したもの。重賞4勝のルージュバックで知られる1位の大竹正博厩舎は牝馬のほうが9.2%も複勝率が高く、これは群を抜いた数字となっている。そのほか、高野友和厩舎はショウナンパンドラ、西園正都厩舎はジュールポレール、大久保龍志厩舎はスマートレイアー、藤沢和雄厩舎はグランアレグリアなど多数と、やはり牝馬の活躍馬を送り出した厩舎が数多くランクインしている。また、表6の10厩舎は関東所属が7、関西所属が3という内訳で、表5の10厩舎とは逆の傾向になっていることも興味深い。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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